コラム

社員の化学日記 −第138話 「平成31年令和元年の科学技術重大ニュース」−

コラム作成が訳あって年末になりました,ちょうど毎日新聞に「今年の科学技術重大ニュース」と題して,2019年科学技術の分野で注目を集めたニュースを取り上げていたので紹介方々コラムの題材とします。 以下が主な項目で順に,

*中国の無人探査機が月の裏側に着陸
  *探査機「はやぶさ}が小惑星リュウグウに着陸
  *ブラックホールの影を撮影
  *民間単独開発のロケットの打ち上げと宇宙到達に成功
  *台湾を出発した手こぎの丸木舟が沖縄・与那国島に到達
  *福島第一原発の「燃料デブリ」の取り出しを2号機から着手(2021年)方針発表
  *スーパーコンピュータ「亰」の運用が終了
  *北海道で発掘された恐竜の化石が新種と認定
                    「カムイサウルス・ジャポニクス(日本の竜の神)」と命名
  *リチウムイオン電池の開発で吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞
  *米グーグルなどの研究チームが「量子超越性」の実証に成功
等が記載されていました。

最初にこの電池開発の話を聞いたときに大丈夫かな?と心配したのを覚えています。

それまでの主な充電式電池はニッカド電池といって,元素であるニッケルNiとカドミウムCdをつかったもので,Cdの毒性は気になるけれど危険性は感じられません。しかし新しい電池はリチウムLi,この元素はアルカリ金属といわれとても危険な元素で,水に触れると爆発的に反応して水酸化リチウムと水素を発生させます,2Li+2H2O→2LiOH+H2。

空気中に保存はできなく石油中に保存しないといけない元素,小学校や中学の理科実験で石油中のリチウムをナイフなどで小さく切って水の中に入れると激しく反応して水面を動き回ったのを見た方も多いと思います。こんな危ない元素,しかもそのイオン(反応性がより高い)を使った電池なので事故が起きて普及はしないと思っていたのですが,今では性能の有利さにより欠かせないものになっています。

余談ですが,車の水素エネルギー,ガソリンの代わりに水素を燃やして車を動かすわけですが,この水素も酸素があれば爆発するとても危険な物質です。最初にこの研究を聞いた時もその危険性から無理だと判断しましたが今では実用化されています。何事にも可能性を信じてあきらめない姿勢を持つことが大事だと改めて感じさせられました。

このように私たちの世の中を非常に便利にしたリチウムイオン電池ですが,新聞記事によると,今年最も世界を驚かせたことはブラックホールの撮影であると述べています。現代の状況では,ブラックホールがあってもなかっても生活するうえでは何の役にも立ちませんが,興味のある人にとってはとても奥深いことで,私の考えと一致したので今回取り上げます。

以前のコラムと重複しますが,ブラックホールは100年程前から「存在するんやで〜」と言われてきましたが,その天体は光が外に出ないため観測するには不可能。しかし周りのガスを撮影することでその画像を浮かび上がらせることができました。この逆転の発想のおかげで一般相対性理論の正しさが改めて証明されました。当観測チームの代表者は「100年越しの研究者たちの夢が確認された」と表現しています。この成功によって宇宙がどうやってできたのか,どのように進化したのかが耳に届くこと期待しつつ,一年後の今年末のニュースはどんなことが出てくるかを考えると,令和2年最後のニュースとして期待を重ねて想像できることは,年末に戻ってくるはやぶさ2。りゅうぐうから玉手箱を持って帰ると期待されています。この星(りゅうぐう)は太陽系が誕生した46億年前の状態で存在していると考えられ,持って帰ると期待されている風化していない岩石を分析することによって,生まれたての太陽系当時の状況,地球生命,海の誕生解明が少しでも明らかになること,加えて最初の述べたブラックホール撮影成功からの研究と合わせて諸問題が明らかになりこれらの事象から宇宙や地球,私たちの祖先の謎が少しずつ解明されることを待ち望んでいるこの頃です。

【今田美貴男】

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