コラム

社員の化学日記 −第127話 「無題」−

何を書こうと考えたが,浮かんでこない。

浮かんでこないのはいつものことだが,今回は特にそれどころではない。

体の節々が痛む。これだけ歳を重ねればそれも無理ないかもしれないが,それだけではなく,自分の歳もわきまえず肉体労働をしてしまったせいでもある。 ただし,年寄りに会社が重労働を強制したわけではなく,あくまでも自主的にである。す。

何があったかといえば,会社の倉庫を移転した。 実運搬作業は業者へお願いしたが,確実に運んで貰えるように事前の整理が必要になる。

軽い段ボール箱ばかりならいいが,薬品だけにそうもいかない。どんどん詰め込むうちに,つい重くなってしまう。

それらを整理するのに知らず知らずに力が入っていたのだろう。 作業が終わった直後は開放感からか,心地よい疲れを感じていたが,問題は数日後。体の節々に広がる痛み。 ふくらはぎから指の関節に至るまで。 頭を上げて夜空を見上げることもできない。

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田舎育ちでもあるし,当然,周囲には明るい光源も少なかったので,子供のころはよく星が見えた。 「星に願いを」とばかりに,流れ星を今か今かと待ちわびたものである。

今は肩,首の痛みをこらえて夜空を見上げたところで,町の光に邪魔されてわずかな星しか見えない,ただ単なる暗闇の空が見えるだけ。なんと味気ないことか。

そんなことを思っていたら,新聞である記事を見つけた。

宇宙航空研究開発機構(JAXA,そうあの「はやぶさ」を無事帰還させたJAXA)が小型ロケット「イプシロン」を成功させたとのこと。 このロケットには7基の人工衛星が搭載され,各プロジェクトのために宇宙へと旅立っていった。

そのうち目を引いたのは人工的に流れ星を作るための人口衛星。東京のベンチャー企業が産学共同プロジェクトとして行っているいらしい。

人工的に流れ星を作るとはなんとロマンチックな,思いきや,きちんとした学術的目的もあるとのこと。計算された入射角, 速度で人工的に流れ星を再現することで,
 1)自然界の隕石や流れ星のメカニズムを解明
 2)高層大気の挙動を観測することで,物理学の発展に寄与
 3)人工衛星等を大気圏に突入させて安全に廃棄する際の予測に用いるデータを収集
学術的なことはよくわからないが,子供のころでも滅多に見れなかった流れ星が見えるようになるのはうれしい話だ。

でも,「それまでには痛みを覚えずに夜空を見上げられますように・・・」というお願はどこへすればいいのだろうか。

【YS(ペンネーム)】

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