コラム

社員の化学日記 −第121話 「Bushi-Do JAPAN」−

サッカーの4年に1度の祭典FIFAワールドカップロシア大会が終わった。 今年はフランスが優勝し,前回優勝国のドイツが予選リーグで敗退,決勝トーナメントでもポルトガルやスペインなどのFIFAランク上位国が早々に敗退していく波瀾が多い大会だった。

そのワールドカップで話題になったのが,ロシアでの日本人サポーターの行動だった。 日本チームは決勝トーナメントに進出するも初戦敗退,勝者国サポーターが喜びにわくスタンドで,日本人サポーターは,敗戦を悔しむあまり泣きながら散乱したゴミを拾い集め,スタジアムを後にしたという。

また日本選手控室も使用後はゴミ一つなく,使用前以上に綺麗になっていた。

一部のメディアは「これがBushi-Do」と日本人の行動規範を讃えたとのこと。 (決勝トーナメント進出をかけたポーランド戦,終盤の戦い方については賛否両論あったようだが,これについては触れないでおく。)

「武士道」とは何か。 子供の頃,剣道を習っていたこともあり,時代劇好きの父親と一緒によく時代劇を見ていたが,改めて考えたこともなかった。

狭義では武士の行動規範(その本分たる武術鍛錬を含む)と言えるが,明治期以降は新渡戸稲造の著書「武士道」において広く日本人の行動規範にまで拡大され,「日本資本主義の父」と言われた渋沢栄一にいたっては経済活動における商業倫理にまで領域を拡大している。

解釈は他にも多種あるようだが,現は最もメジャーなのは新渡戸の解釈らしい。

日本人の思想はお隣の韓国と同様に儒教思想を基本とすることが多いと聞く。

新渡戸はその著書「武士道」において,明治期の武士道精神の説明に儒教思想の骨格と言える「五常」(仁,義,礼,智,信)のうち,仁,義,礼を中心に説明している。
      仁…人を思いやること。
      義…利欲にとらわれず,なすべきことをなすこと(義理)
      礼…仁を具体的な行動として表したもの。
      勇…勇気。正しきべきことをなすこと(義を見てせざるは勇なきなり)
      誠…誠意,誠実さ。何事にも正面から向かい合う心構え。

また,目上の者は「卑怯」「臆病」とされないためにこれらの心を持ち続け,目下の者が尊敬,忠義を尽くすことによって現代組織社会における指示命令系統が成り立つとしている。

中国の古代思想には現代思想に大きな影響を与えているものは少なくない。

自然哲学思想には「五行説」という考え方があり,木,火,土,金,水の5種類の元素が森羅万象の根本となっており,「互いに影響しあい, その生成盛衰によって天地万物が変化循環する」という考え方らしい。 ありとあらゆるものがこの五行に対応した5つの基本によって成り立っているとされ,先述の「五常」もこれに対比されることが多い。

話は戻るが,日本国内で地震などの大規模災害が発生すると,その復旧支援には多くのボランティアが参加する光景がニュースなどで報道されている。 東日本大震災の際も阪神淡路大震災の時に助けてくれた恩返しにと,近畿圏からも多くのボランティアが駆けつけたという。

一部の国では,火事場泥棒よろしく,窃盗等の犯罪が横行するのはあたり前らしい。 日本ではごく一部にそのような不逞な輩はいても極めて少数であり,支援物資の配給に際しても列をつくって並び,我先にと取り合うようなことは決してしない。

これぞ日本が世界に誇る「Bushi-Do」と言わずしてなんというのか。

この国もまだまだ捨てたものではない,改めてそう思った.

【道修町博士(ペンネーム)】

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