マルセル・デュシャン
ローズ・セラヴィ、
なぜクシャミをしないの?

 
デュシャンと『老子』
 

有生於無
 
無の用
 
交互循環
 
為道日損
 
石川虚舟/作品集
 
ハイデガーと東洋思想
 
デュシャン・コード
 
随風館
H O M E
 
 
 

マルセル・デュシャン 《 ローズ・セラヴィ、なぜクシャミをしないの? 》 1921
 
此両者、同出而異名、
同謂之玄、玄之又玄、衆妙之門、
此の両つの者は、同じきより出でたるも而も名を異にす。
同じきものはこれを玄と謂う、玄のまた玄、衆妙の門なり。
『 老子 』 第一章
 
小さな鳥かごの中に、大理石の立方体とイカの甲、それに体温計。 ローズ・セラヴィ(別名マルセル・デュシャン)と呼ばれるイカの甲は、石灰質。 モダニスム風邪に感染した大理石の立方体(キュビスト)もまた、 同じ石灰質でありながら名を異にする。
大理石のもと(玄)の姿、その扁平さのお陰で、 ローズは鳥かご(モダニスムのパリ)を脱出し、 ニューヨークへ旅立つ。
 
 
 
モダニズムからの脱却
 
セザンヌの「萌芽的」な、いわゆる「ぎこちなさ」の絵のうちに、 彼以後に出現するブラックやピカソの栄光にみちた絵よりも 「もっと本質的、もっと深い」ものを見ることが必要ではあるまいか。
 ジャン・ボーフレ『ハイデガーとの対話』Ⅲ*
 Jean Beaufret, Dialogue avec Heidegger, Les éditions de minuit,
 3. Approche de Heideggaer, p.153
 渡邊二郎訳/マルティン・ハイデッガー
 『「ヒューマニズム」について』(ちくま学芸文庫)、p.175*,  p.208.
 
ハイデガーが注目するセザンヌの絵画は、ブラックやピカソの栄光的なキュビスムの「萌芽」とされる。 しかしその「萌芽」は、デュシャンにとって、セザンヌの芸術にはすでに先天的な渾淪状態に穴があき、 の補強が必要な状態を意味する。 「花嫁」がそうであるように。
 ⇒  《彼女の独身者達によって裸にされた花嫁、さえも》 (又は《大ガラス》)
 
イカの甲は、いまだ幾何学的なキュビスム「風邪」に感染していない様子。 デュシャンは「芸術作品の根源」、「玄のまた玄」を目指す。  虚舟
 
⇒ ローズ・セラヴィ
⇒ 石川虚舟 《 ニューヨークのRROSE 》 2006
⇒ 石川虚舟 《 薔薇は命 》 2010