石川虚舟
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看者   Bewahrenden
 
マルティン・ハイデガー
『芸術作品の根源』
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石川虚舟  《勾玉の雌型》  
大理石、木製台座部分 (170×140×32mm)
photo 2015.  10.  23
 
    2015年10月、ヴェトナムのダナン郊外の山迫る入江へ。近年、リゾート地として開発され、ホイアンの建築様式を模して建設されたホテルに宿泊。その海岸で、表面の粗い、茶褐色の小石を採取。持ち帰り、一部を研磨。
 
「玉は丸い曲線を有っている。曲妙(まがたえ)と云われるのもそのためである。「まがたま」と云うのもまがった曲線を有っているからである。・・・丸い玉は自然のおのずからなる象徴である。」  九鬼周造『人間と実存』岩波文庫、p.284
 
 ⇒ ヴェトナム紀行
 ⇒  石川虚舟  《随、No.2》 2014
 
 
 
看者   Bewahrenden
創作されることなしに作品は存在し得ない、いわば作品が本質的に創作者を必要とするのと同様、創作されるもの自体は、看者なしには存在することができない。
・・・・・ 作品を看ること(Bewahrung)は、作品に生起する存在者の*「誠」(Offenheit)に身を置くことである。 看ることの切実感(Inständigkeit)は、ひとつの知である。 しかし、知は何かを単に知ることや表象することではない。 存在者を真に知る人は、存在者のまっただ中で彼が**意思する何かを知る。
石川虚舟訳/ マルティン・ハイデガー 『芸術作品の根源』 1935/36
 
So Wenig ein Werk sein kann, ohne geschaffen zu sein, so wesentlich es die Schaffenden braucht, so wenig kann das Geschffene selbst ohne die Bewahrenden seiend werden.
..... Bewahrung des Werkes heißt: Innestehen in der im Werk geschehenden Offenheit des Seienden. Die Inständigkeit der Bewahrung aber ist ein Wissen. Wissen besteht jedoch nicht im bloßen Kennen und Vorstellen von etwas. Wer wahrhaft das Seiende weiß, weiß, was er inmitten des Seienden will.
Martin Heidegger, Der Ursprung des Kunstwerkes,
Reclam, Universal-Bibliothek(2010), S.67-68.
 
【石川虚舟訳註】 *「誠」(Offenheit)は、「物を物としてあらしめている理」。
 cf. 三浦国雄訳注『朱子語類」抄』講談社学術文庫、p.284
**「意思する」(wollen)は、何かを「しようと思う」こと。
  「意思」(Wollen)。
 cf. 前掲書、p.269~271