野草と野菜
(卓効のある野草と健康野菜)


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28  南天(セキ止め、食中毒に)
 南天はメギ科の常緑低木で、高さは2〜3メートルに達し、秋から冬にかけては、直径1センチ足らずの球形の鮮紅色をした、美しい実をつけます。原産はわが国と中国といわれ、日本では中部以南の山林中に自生していますが、庭園や鉢に植えて観賞用にされたり、実のついたものを生け花に用いたりしています。
 観賞用のほかに、庭に植えるのは火災を避けるためだという言い伝えもあります。よく便所のそばに植えられているのは、魚に中毒したときは、すぐにその葉をかむことができるようにするためだという説もあります。
〔効用〕
 南天の実は干したものが薬用にされます。漢方薬店で南天実(なんてんじつ)というのがそれです。よく、赤南天より白南天の方が効くといわれますが、実際にはそれほどの効力の違いはないようです。
〈用い方〉
 干した南天の実10グラムを600ミリリットルの水で半量に煎じつめ、これを1日分として、食前3回に分けて飲むと、強壮、強精、陰萎、虚弱体質、百日ゼキ、ぜんそく、解熱、神経痛、酒の中毒などに効果があります。
 また、南天の実ひとつかみに黒豆70グラムを加えて、700ミリリットルの水で半量に煎じたものに、氷砂糖140グラムを加えて飲んでも同様の効果を期待できますから、飲みやすい方を選ぶことができます。
 やけど、腫れ物、虫刺されには、南天の生葉の汁を塗ります。魚の中毒になったときには、生の葉数枚をよく洗って、塩でもんで出た汁を飲むとよいと言われていますが、これは南天の葉に含まれた微量の青酸様成分と無関係ではなさそうです。