野草と野菜
(卓効のある野草と健康野菜)


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29  なつめ(鎮静と強壮に)
 なつめはクロウメモドキ科の落葉小高木で原産は南ヨーロッパと中国大陸奥地だといわれますが、わが国では奈良朝時代から栽培されています。雨の少ない風土に適しているので、湿度の高いわが国では良質のものはできません。
 現在、関西地方を中心に栽培されているのは広東原産のおおなつめです。花が咲くのは夏に近い晩春で、夏になってから芽を吹くように見えるところから、夏芽=なつめになったといわれています。
 材質が固いので、中国では古くから車軸に使われたり、印材になったりしています。若葉はゆでで食べられます。果実は熟すとを黄褐色になって、味は甘ずっぱく、甘みの大部分は蔗糖(しょとう)です。他の果実に比べて水分が少ないのが特色ですが、乾燥して菓子、料理にも使われ、漢方薬では大棗(だいそう)と呼んで珍重されています。
〔効用〕
 なつめの果実は強壮に効果があるほか、利尿、鎮静、解毒、浄血などの作用でも知られています、漢方薬では葛根湯(かっこんとう)、桂枝湯(けいしとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などに処方されます。なつめの種は酸棗仁(さんそうにん)と呼んで、鎮静、収れん作用があり、不眠、神経の強壮、神経衰弱、寝汗などに効きます。
 大棗を1日3〜5グラム煎じて飲むと、イライラして寝つきが悪い、疲れやすい、赤ちゃんの夜泣き、ヒステリー、疼痛、過敏症、カゼの熱、セキ、のどの痛みに効果があります。
〈用い方〉
 しもやけ、あかぎれには果肉をすりつぶして塗るか、葉や果実の煎じ汁で温湿布します。大棗100グラムとホワイトリカー1リットルとハチミツ200グラムで作るなつめの薬用酒は食欲増進、滋養強壮によいと愛用する人が少なくありません。