生体計測機器の構成

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  未熟な左手が作った臨床工学技士国家試験の生体計測装置学に関するよりぬきノートです。
このノートの内容は、第2種MEの計測原理で詳しく説明しています。
よろしればそちらもあわせてご覧下さい。
誤りがございましたら、ご連絡下さい。




生体計測機器の構成

生体計測機器の構成


電極

導出法

双極導出生体中の2点間に電極を接続し、両電極間の電位差を検出する。
単極導出生体中の1点を基準電極(不関電極)に定め、これと他の任意の点に接続した電極との間の電位差を検出する

静止電位

  電極材料が生体表面に接触することで電極と生体との間に発生する接触電位。生体との接触によって生じるインピーダンスを接触抵抗(接触インピーダンス)と呼ぶ。接触電位の周波数成分は直流又は低周波であり、接触抵抗は、周波数に反比例する(コンデンサにより)。


分極電位

  生体表面に接触している電極に電流が流れると電極と生体との境界面に発生する電位をいい、これによって生じるインピーダンスを電極インピーダンスと呼ぶ。


体表面電極と皮膚の等価回路

体表面電極と皮膚の等価回路

≪皮膚インピーダンス≫

  コンデンサと抵抗の並列回路


≪電極インピーダンス≫

  電池あるいはコンデンサと抵抗の直列回路


≪皮膚−電極間の等価回路≫

  皮膚インピーダンスと電極インピーダンスの直列接続


電極に求められる性能

@長時間、生体に接触していても安定した状態で、良好な接触が保たれること。呼吸運動や体動によって基準線の変動(ドリフト)が発生する。
A電極と生体との接触抵抗が小さい。
→食塩を主成分とした電極ペーストを使用し、皮膚インピーダンスを低下させる
→皮膚が乾燥すると皮膚インピーダンスは高くなる。
B電極と生体との接触面に電流が流れる時に発生する分極電圧が小さい
→電極と生体との間の化学反応を可逆的に行う銀・塩化銀(不分極)電極を用い、電極インピーダンスを低下させる。

電極


変換器

変換器と作動原理

変換器作動原理変換器作動原理
ストレインゲージ力・変位→電気抵抗光導電素子(CdS)光→電気抵抗
差動トランス変位→相互インダクタンス光電池光→起電力
可動極板コンデンサ変位→電気容量光電管光→電流
圧電素子振動・力→起電力フォトトランジスタ
感圧ダイオード力→電流フォトダイオード
熱電対温度→起電力ホール素子磁場→起電力
サーミスタ温度→電気抵抗SQUID磁場→電流

変換器(トランスデューサ)



増幅器

増幅器の性能

≪増幅度≫

   増幅度
   増幅度

増幅器


≪入力インピーダンス≫

  接触インピーダンスが比較的大きいため、入力インピーダンスの大きい増幅器(FET)を用いる。

入力インピーダンス


≪S/N比≫

   S/N比

S/N比


≪周波数特性≫

周波数特性

帯域増幅度(0を基準点とする)から−3dB( に相当)に減少するまでの周波数範囲
低域遮断周波数(fl)帯域の中の低い方の周波数。CR回路の遮断周波数
高域遮断周波数(fh)帯域の中の高い方の周波数。RC回路の遮断周波数

周波数特性


≪ダイナミックレンジ≫

  小さな信号(最小信号レベル)から、大きな信号(最大信号レベル)まで、歪みなく雑音なく検出や測定できる範囲


差動増幅器

≪同相入力≫

  2つの電極に同一の雑音(同相雑音)が混入した時、出力は0となる。
商用交流による雑音は同相雑音のため、同相入力で軽減できる。


≪逆相入力≫

  一方の電圧を反転させ入力させることで生体信号(逆相信号)を増幅する。


≪弁別比(CMRR)≫

  差動増幅器は同相信号も出力する(2つの増幅器の増幅度や周波数特性が異なる)ため、逆相信号に比べて、同相信号がどれだけ抑えられたかの指標としてCMRRが用いられる。
   弁別比(CMRR)


≪差動増幅器の特徴≫

@同相信号(商用交流などの交流障害)を除去し、S/N比を大幅に改善
A2点間の電位差を増幅することができる。
B電源電圧の影響を受け難い
C直流増幅にむいている
D増幅器内部から発生する内部雑音は防ぐことができない。

差動増幅器



雑音

内部雑音

  増幅器内部から発生する雑音で、抵抗体、真空管及びトランジスタによる雑音

≪熱雑音(ジョンソン雑音)≫

  抵抗体など電流が流れる物質内で電子が熱的励起され、不規則な運動をすることで生じる


≪白色雑音≫

  どのような周波数においても雑音電力が一定となる。帯域幅に比例する。


≪フリッカー雑音≫

  トランジスタの低周波雑音や炭素抵抗体内の電流によって発生する雑音

他に、ショット雑音、バースト雑音、ハム雑音、ドリフト、オフセットなどがある。


外部雑音

≪商用交流≫

  静電誘導によって交流雑音が混入
対策 : シールド、差動増幅器、ハムフィルタ、ラインフィルタ


≪電磁誘導雑音≫

  電灯線からの磁束や増幅器内の電源トランスからの漏れ磁束を拾い発生 対策 : 交流磁界の発生源から遠ざける。磁交面積をできるだけ小さくする


≪漏れ電流≫

  電灯線から床やベッドに流れる微弱な電流が、身体を通して増幅器に入力される
対策 : 絶縁

他にマイクロフォニック雑音(電極の機械的振動)、パルス性雑音(ディジタル回路のスイッチング)



濾波器(フィルタ)

濾波器(フィルタ)の種類

≪高域濾波フィルタ(低域遮断フィルタ)≫

  呼吸などの上下運動や体動によって生じる低い周波数の雑音を遮断し、高い周波数信号を通す。


≪低域濾波フィルタ(高域遮断フィルタ)≫

  緊張に戦慄雑音などによって生じる高い周波数の雑音を遮断し、低い周波数信号を通す。


≪帯域濾波フィルタ≫

  高域濾波フィルタと低域濾波フィルタを組み合わせることで、ある範囲の周波数成分のみを通す


≪帯域除去フィルタ≫

  ある特定の周波数範囲のみを遮断する。商用交流雑音防止には50〜60Hzのハムフィルタ(帯域除去フィルタ)が用いられる。

濾波器(フィルター)



生体信号と計測機器

生体電気計測

心電図脳波筋電図眼振図
信号振幅1〜2 [mV]100〜50 [μV]1〜5(50) [mV]0.1〜0.5 [mV]
周波数範囲0.05〜100 [Hz]
(0.05〜200 [Hz])
0.5〜70 [Hz]
(0.5〜120 [Hz])
20〜5k [Hz]
(5〜10k [Hz])
0.05〜20 [Hz]
(0.05〜200 [Hz])
標準時定数3.2 [秒]0.3 [秒]0.03 [秒]3又は0.03 [秒]
低域遮断周波数0.05 [Hz]以下0.5 [Hz]5 [Hz]0.05又は5 [Hz]
高域遮断周波数200 [Hz]120 [Hz]10k [Hz]200 [Hz]
増幅度60 [dB]120 [dB]120 [dB]120 [dB]
CMRR60 [dB]60 [dB]60 [dB]60 [dB]
入力
インピーダンス
2 [MΩ]以上5 [MΩ]以上20 [MΩ]以上
使用記録計サーマルアレイ
熱ペン式
インクペン式オシログラフ熱ペン式
紙送り速度25 [mm/s]30 [mm/s]20 [mm/s]20 [mm/s]
標準感度1 [mV/cm]0.1 [mV/cm]1 [mV/cm]0.1 [mV/cm]

≪心電図の周波数特性≫

  10Hzにおける10mmの振れを100%とし、0.14〜50Hzまでは90%以上、75Hzでは70%以上振れなければならない


生体磁気計測

≪生体磁気計測の種類≫

@生体電位に基づいて発生する磁気を計測
例) 心磁図、脳磁図
A空気中、食物中の微粉末が体内(肺)に蓄積による磁性微粉末によって発生する磁気を計測
例) 肺磁図

≪検出器の検出感度≫

  ホール素子 : 10-10 [T]   SQUID : 10-14 [T]

心磁図肺磁図脳磁図
磁気5×10-11 [T]3×10-9 [T]2×10-13 [T]
検出器SQUID


小電力医用テレメータ

テレメータ

≪規定≫

  電波法によって特定小電力無線局と規定されている。


≪周波数帯域≫

  小電力テレメータとして利用できる周波数帯域は420〜450MHzまでのUHF(極超短波)帯に属する。6つの離れた周波数帯域(バンド)に分類される。


≪タイプ≫

  占有するチャンネル数(周波数帯域)によって、A、B、C、D、Eの5つのタイプに分けられる。

A型1チャンネル(12.5kHz:0.5MHz/40チャンネル)
B型2チャンネル(25kHz)
C型4チャンネル(50kHz)
D型8チャンネル(100kHz)
E型40チャンネル(500kHz)を占有する。

≪ゾーン≫

  混信防止のため、受信障害を起こしにくいチャンネルを同一グループに、起こしやすいチャンネルを別々のグループに振り分けている。このグループをゾーンと呼び、同一フロアでは同じゾーンのテレメータを使用する。


≪送信機型別分類≫

  A型〜E型まであり、その出力はA型〜D型までは1mW以下、E型は10mW以下と規定されている。


≪変調方式≫

  FM方式。信号の大きさによって周波数を変える変調方式


≪アンテナ≫

モニタ両側に伸ばした場合波長の1/2の長さが最も効率が良い
モニタ上部に伸ばした場合波長の1/4の長さが最も効率がよい

≪使用方法≫

送信機と受信機とでチャンネル番号を一致させる
同一チャンネル番号の送信機を2台以上使用しない
電磁波を発生させる(電気メス、PCなど)は近くで使用しないノイズの原因となる。







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