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本会会員によるコラム「英国風情録」開始のご案内

 本ページ、「英国風情録」は本会会員 村上昂音(東京外国語大学 博士課程(後期))が、英国に関する情報をさまざまな視点で捉えながら、毎月、定期的に、その所感を皆様にお届けするコーナーです。多くの皆様に楽しんでいただければと思います。また、イギリスに関するみなさまからの情報などもお待ちしておりますので、是非とも、お寄せください。お待ちしております。

旅の発見 (2016.7.28)


7月から8月にかけては夏休み。気分転換に旅行で出かける人も多くいるのでしょう。旅行は素晴らしい体験です、旅行でしか得られないものはたくさんあります。
イギリスの観光スポットと言えば、イギリスのエリザベス女王が住む壮麗な宮殿、バッキンガム宮殿の交代式はもちろん見所です。
栄華を築いた大英帝国時代に世界各国から集めた調度品、工芸品、美術品を一同に見ることができる大英博物館。
ロンドンの観光ハガキの定番でもある、ビックベン。そして、イギリスの名門オックスフォード大学や、ケンブリッジ大学が所在している町も多くの観光客で賑わいます。
今年の夏休みは、イギリスの名所めぐりも一つの選択肢ですね。
ストーンヘンジ(Stonehenge):ロンドンから西へ約140kmに位置し、紀元前3000年頃に造られたといわれる
(出典:http://find-travel.jp/article/21163 2016年7月26日アクセス)

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 マルセル・プルーストのある名言です:「本当の旅の発見は新しい風景をみることではなく、新しい目をもつことにある」。

忙しくて仮に遠くへ出かけられなくても、いつもの通勤、通学の道でも、旅人の気持ちで眺める。
すると、また新たな発見ができるのかもしれません。


幸せとは旅の仕方であって、行き先のことではない。
Happiness is a way of travel, not a destination.

心象風景 (2016.6.25)


 皆さん、絵画は好きですか?
 人間の喜怒哀楽を表現するのに、「言葉」という道具はもっとも単刀直入で便利です。しかし、時と場合によって、「言葉」では伝えきれないこともあります。ものすごく落ち込んでいるときの、「頑張れ〜」という言葉は煩わしさや、意味とは逆に無気力感さえ感じます。私にとって、音楽、絵画、芸術はまさしく、悲しみや怒り、喜びを表現してくれる心象風景です。心が乱れているときのヴァイオリンの弦は暴走し、喜びに溢れているときは、音色も軽やかです。また休日の美術館めぐりは何よりの癒しです。

 ロンドンには美術館がたくさんあります。しかも、ほとんどの場合、無料もしくは良心的な入館料で世界有数のコレクションを観賞することができ、これからの夏休みを満喫する場所としては最適です。
 一例をあげると、The National Gallery:ジョージ・スタッブス「ホイッスル・ジャケット」2000点以上に及ぶナショナル・ギャラリーのコレクション から選ぶ「この一点」は、ジョージ・スタッブスの「ホイッスル・ジャケット」。ほぼ独学で美術を学んだというスタッブスが、馬の身体を解剖しながら研究し尽くした末に描き上げたものです。

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 また、Dulwich Picture Galleryには、「光の魔術師」との異名を持つオランダ人画家レンブラント・ハルメンス・ファン・レインの名作「窓辺の少女」が収蔵されています。この作品の購入者が自宅に飾ったところ、通行人たちが本物の女の子が窓辺にいると何度も勘違いしたとの逸話が残っているようです。

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 芸術とは「他人と分ち合えるような美的な物体」であると言われます。描く人と観る人の心と心が触れ合う癒しのハーモニーをこの夏に体験しませんか?

Art washes away from the soul the dust of everyday life.
〜Pablo Picasso (パブロ・ピカソ) 

参考:
「ロンドンの美術館のこの一点」


足跡のスノーアート (2016.5.27)



 イギリス人アーティストのサイモン・ベック氏は、たった一人で10時間以上かけ、新雪を一歩一歩踏み固め、このような↓幾何学模様を描きました。

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   一人で広大な雪原を行ったり来たり、黙々と地道な作業に取り組むサイモンさん。作品から職人の魂を感じます。
 世の中、スポットライトを浴びて、派手な仕事を華々しくこなす人もいますが、褒められることもなく、いつ結果が見えるのか分からないまま、ただ黙々と仕事や作業を進める人も大勢います。5月は「5月病」とも言われるように、仕事に対する倦怠が表れやすい時期です。仕事を続けることができる原動力とは何か、サイモンさんの作品を見ながら考えてみました。  日本の成長を支えているのは、日本の技術的イノベーションだと私は思います。日本の製品が世界的に高評価を得られたのは、技術へのこだわり、まさに職人精神です。油まみれの作業服に汗や、努力、そして希望、誇りが凝縮されています。

  よく考えてみると、私たちのような研究に携わる仕事も、実は地味な作業の繰り返しです。ただ、どんな暗い闇の中でも、明けない夜はないのです。先が見えない旅でも、何度も回り道をしても、いつかはゴールにたどり着きます。 偉大なことは最初からできるのではなく、地味な努力の一歩一歩の積み重ねがあって初めてできるということを改めて認識しました。

Continuous effort ?
not strength or intelligence ? is the key to unlocking our potential.
力や知性ではなく、地道な努力こそが能力を解き放つ鍵である。
By:ウィンストン・チャーチル(英国の政治家、ノーベル文学賞受賞 / 1874〜1965)
【参考文献】
「イギリスのおじさんが『足跡』で描くスノーアートが美しい」2016年5月26日アクセス


人間一人ひとりが一巻の書物である (2016.4.25)



今年は文学好きな人にとって嬉しい年なのかもしれません。英国が生んだ数々の偉大な作家たちが歴史的な節目を迎える記念すべき年でもありますから。
まず、お馴染みのウィリアム・シェイクスピア、4月23日が没後400周年です。シェイクスピアは、卓越した人間の心理描写により、最も優れた英文学の作家と言われています。四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残しました。

また、4月21日は生誕200周年のシャーロット・ブロンテ。
1847年に発表された、ビクトリア朝時代のイギリスを代表する作品「ジェーン・エア」は、シンプルなストーリーの中に、当時のイギリスの様々な事象を織り込み、社会通念に反逆した同名の女性を描いた名作です。

7月28日は生誕150周年のベアトリクス・ポター。可愛いうさぎのキャラクター、ピーターラビットの生み親として、知られるイギリスの絵本作家。

最後に、9月13日は生誕100周年のロアルド・ダール。「奇妙な味」と評されるダールの短編小説は、ミステリ・マガジン2007年3月号で、作家・評論家・翻訳家らへのアンケート結果によるミステリ小説オールタイム・ベストの短編部門第1位に『南から来た男』が輝きました。その他、『味』、『大人しい兇器』などで、日常的な風景や会話の中に人間の心の奥底に潜む狂気をうかがわせ、高い評価を得たようです。

今年は、ロンドンでこれらの文豪たちの記念イベントが開催されています。
さて、そもそも人間は、なぜ本を読むのでしょうか。なぜ知識を得ようと思うのでしょうか。
「本」という文字を改めて考えてみました。
もともと生えていた木であっても、根の弱いものは倒れてしまいます。大風が吹いたとしても、強い支えがあれば、倒れることはありません。その強い支え「一」こそ、それぞれの人の自分軸で「本」質と言えるものでしょう。誘惑に負けず、思考力を培い、惑わされないための知識、問題を解決する能力や自信を身に付けるため、沢山の知識が必要なのではないでしょうか。
もう一つは、やはり文明の継承でしょう。子ども達の明るい未来のため、世界平和のためにも、異なる文明を理解するためにも知識が不可欠です。

4月は新学期です。心機一転、気持ちを新たに、また皆さまと一緒に頑張って行きたいと思います。
今年度もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。

The reading of all good books is like a conversation with the finest men of past centuries.
By:Rene Descartes

あらゆる良書を読むことは、過去の最良の人物たちと会話することだ。(ルネ・デカルト)

【参考資料】
ロンドンのイベント紹介
http://www.news-digest.co.uk/news/listing/events/14533-great-literary-figures.html
2016年4月23日アクセス

バレンタインとホワイトデー (2016.3.24)



2月と3月は、チョコレートメーカーにとって嬉しい季節です。

バレンタインとお返しのホワイトデーがあるからです。英国の各デパートでも勿論バレンタイン商戦が白熱していました。
ロンドンにある名店のお勧め商品に注目してみると、言わずと知れたエリザベス女王御用達の名店プレスタット。ハート型やカラフルな四角形の箱に入れられたトリュフは定番の商品ですが、なんと日本でもお馴染みの「ゆず酒トリュフ」もあります。
また、色とりどりのカラフルな丸い箱でおなじみのシャルボネル・エ・ウォーカー。19世紀、後にエドワード7世となる皇太子の仲介で、英国人とパリのチョコレート・ハウスがパートナーシップを締結して生まれた老舗がこの店。看板商品であるピンク色のシャンパン・トリュフは、ストロベリーの風味がほのかに漂います。

そもそもバレンタインって何でしょうか?
聖バレンタインデーの始まりは古代ローマ時代にさかのぼります。この時代のローマにおいて、2月14日は女神ユノの祝日でした。イギリスやフランスで元々考えられていた「2月14日は鳥が結婚する日」などの言い伝えと融合し、現在のように「バレンタインデーは恋人達の日」というイメージが出来上がってきたのではないかと考えられています。
イギリスでのバレンタインデーは、主に恋人達が愛を伝え合うという習慣で、どちらかというと男性から女性へ贈り物をすることの方が多いようです。もちろん女性から贈り物をすることもあります。「恋の告白」というよりも、愛を確かめ合うカップルのためのイベントです。

忙しい日々の中で、人と人との関わりが薄れていき、いつの間にか自ら壁を作り、城の中に閉じこもって、やがて心を閉ざしてしまいます。「友人」、「恋人」、「大切な人」すべてがかけがえのない大事な存在。バレンタイン・ホワイトデー〜誰かを思う気持ちを伝える日。恋人同士だけでなく、普段はなかなか照れくさく、恥ずかしく、言葉にできないけれど、このイベントを通して大切な人に気持ちを伝えられる日があるということは素敵なことではありませんか。

Love is doing small things with great love.
愛とは、大きな愛情をもって小さなことをすることです。
【参考】
「ロンドンの名店による2016年お勧めチョコレート」2016年3月18日アクセス

「日本文化いろは辞典」2016年3月18日アクセス


自信のある女性は美しい (2016.2.24)



先日、ロンドンLondon Fashion Week(一週間にわたって行われファッション業界で重要視されるファッションショー)が開催されました。その中で一つのブランドがテーマを“50+ woman” として行いました。つまり、モデルさんが全員50歳以上であることです。中では、有名なMarie Helvinさん(63歳)も参戦し、締めくくりはDaphne Selfeさん(87歳)です。どの女性も自信に溢れる笑顔で、とても素敵でした。そしてその背後にある数々の努力にただただ脱帽です。
「自信」は「自負」と違い、「自負」は自分の能力や価値に誇りに思い、度を超えると「自慢」になります。「自信」は、文字通り、「自分を信じる」ことです。自分ならできる、乗り越えられるとポジティブに思える心。何より、「自負」は人と比べ、自分に優越感を感じること。一方、「自信」は、人の評価は気にせず、あるいはそれほど重要視せず、人は人、自分は自分、自分の空模様は自分でコントロールすると言う強い信念です。
人は、誰もがShinning Pointを持っているはずです。控えめですが、人を思いやる優しい人。あるいは厳格ですが、誰よりも努力家で何事にも一生懸命成し遂げる人。また一見自己主張がなく、集団のなかでもいつも目立たない存在ですが、実は聞き上手で癒しを感じさせる人。 「世界に一つだけの花」のように、「頑張って咲いた花はどれもきれい、一人一人違う種を持つ、その花を咲かせることだけに、一生懸命になればいい。小さい花や大きな花、一つとして同じものはないから、No.1にならなくてもいい、もともと特別なOnly One」。

若さは永遠ではなくとも、情熱、躍動感、輝きは永遠になりうる〜自信のある女性ほど、美しいです。 True talent comes from belief in yourself, in your own power. 〜Maxim Gorky 

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【参考資料】 ※The first 50+ Fashion Week: A catwalk show designed for stylish women who don’t want to be seen as ‘invisible’  (2016年2月21日アクセス) http://www.telegraph.co.uk/fashion/london-fashion-week/50-fashion-week-the-catwalk-show-designed-for-stylish-women-who/

紳士運動会 (2016.1.25)



英国には、あるユニークな運動会があります。それは「Chap Olympiad」。普通の運動会との違いは、どの競技でも、英国の復刻版正装を着用することです。主催者が言うように「The Americans have cowboys. The British have gentlemen.」(アメリカにはカウボーイがいるように、我々英国には紳士がいる)。
どんなに大変な競技でも、風采や風格を失わない事が大事だからとのことです。

英国の人を見ながら時々思います。紳士とは何か。昔はよく「文武両道、他人を思いやることができる人、あらゆることに情熱を注ぎ、信念を貫くことができる人、女性に優しい人」などと言われていました。紳士を定義するのは、なかなか難しいことです。何故ならば、人にとっての紳士なのか、自分にとっての紳士なのか、誰にとっての紳士なのか、時と場合によって変わってくるからです。
先日読んだある記事にはこのようなことが書いてありました。コンビニの店員さんが一番ストレスを感じることが多いのは、ごく普通のサラリーマン風の人からだそうです。いつも会社で頑張っても成果が思うように出ないためでしょうか、そのストレスを、見知らぬコンビニの店員さんに発散することもあるのだと察します。例えば、不機嫌で些細なことで怒りだす場合もあるようです。
一方、作業服を着た人たちが、「昼から酒を飲んで、ごめんな、朝の仕事が早く終わったんだ」と、レジで店員さんにニコニコ笑いながら話し掛ける姿。どちらが紳士でしょう。

私は、「正」という漢字がとても好きです。「正」は「道理道義」に向かうプロセスであり、自分に都合が良いか悪いかということではなく、道理に適っているかどうか、つまり至善かどうかです。愛と責任をもち、冷静と情熱を兼ね揃えることは、なかなか難しいと思いますが、道理に向かう、正しい事を行うことができる人は、紳士なのでしょう。

ただし、いくら「正しい」事と言っても、どんなに勉強して、頑張っても、すべて良い結果に繋がるとは限りません。中国では有名な言葉があります「天時・地利・人和」、物事がうまくいかないのは、頑張りが足りないというより、単純に「機が熟してない」という事もあります。一つ一つの失敗や悲しみには意味があり、今すぐ分からなくても。太陽がいつも朝を連れてくれるように、今流した涙がいつかはその意味を教えてくれ、歓喜の涙となります。


どんな大変な時でも、笑顔を忘れず、紳士的な風格を持ち、日々頑張っていけたらと思います。


We don’t laugh because we’re happy ? we’re happy because we laugh.
楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ。

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参考: BBC Culture

The Chap Olympiad


真面目さはWork Hard? (2015.12.25)



日本人は小さな頃から、「まじめに勉強しなさい」、「まじめに頑張っていればいつかは良いことがあるよ」など、言われて育った人が多いのではないでしょうか。 しかし、就職してサービス残業、特に女性は結婚して育児、仕事との両立、「真面目にいつまで頑張ればいいの」という気持ちも出てきます。中には、「良い結果が出るまで頑張ろう」という人もおり問題になっているのが過労死です。
過労死は、「Karoshi」として国際機関のケーススタディーとして取り上げられ、英語の辞書に載るなど世界的にも、日本で多く起きることが知られています。なぜ、病気になるまで、過労死するまで、真面目に頑張り続けるのでしょうか。
「真面目」については多くの本が出版されています。「真面目に頑張った方が良くて、長生きもできる」。という本もありますが、ほとんどは「真面目は損する、自分を犠牲にして社会を悪くする、病気になりやすい」というものが圧倒的です。
一つのことをある程度まじめに続けなければ良い結果が出ないことも確かです。子どもの頃、逆上がりができない、自転車に乗れない〜しかし、続けて一週間頑張ったらできた、という経験もあるでしょう。仕事で、何度も上司に修正を指示され、夜10時まで残業、ついに完成した顧客へのプレゼン資料。翌朝、上司のOKが出てすがすがしい気分になったこと。真面目に頑張らなければ得られない嬉しさもあります。
日本よりも女性の活躍の機会が多いと言われるイギリス、首都のロンドン女性の「真面目さ」はどうでしょうか。イギリスとしての資料ですが、労働生産性を見ると、「一人当たり」でも、「時間当たり」でも日本より稼いでいます。結果から見ると、もし真面目に頑張ったことが結果につながるのであれば・・・イギリスは日本以上に真面目に必死になって仕事をしていることになるのかもしれません。当然ストレスで病気になり・・・と考えてしましますが、働く女性であっても自由な時間は日本よりも多く、過労死も事例が全くないわけではありませんが、少ないのは事実です。
現在の日本ではめったに聞きませんが、ロンドンでは交通機関のストライキが行われ、朝の通勤に大きく影響を与えることがたびたびあります。今年も地下鉄の24時間運行計画に伴う給与引き上げのためストライキが行われました。そのストライキ時の政府の運行機関の対応は、バス増発などはあるものの、おススメは「行けるところには歩きか、自転車で!」です。今までのストライキで勝ち取ったものかどうか分かりませんが、典型的な地下鉄運転手の給与は、5万ポンド(約900万円)です。ロンドンの物価が高いものの、給与も随分高いのだと感じます。
イギリスでは、若いころから趣味、それもかなり専門的に行っていることが多く、定年になるころにはプロ級になることもあるようです。このため定年後も自分で作った趣味のもの、花を育て、ニット、ジャムを販売するなどやりがいと、程ほどの忙しさがあります。1万時間、何事も真剣にやればプロ級になれるという、一万時間の法則を体現した人がたくさんいるということでしょうか。
日本女性も、イギリス女性も真面目だと思います。何が違うのでしょうか。真面目に努力した成果の現れ方として、「階段状」の説明をよく聞きます。英語を勉強していてもなかなか上達しない。でもある時、英語による電話会議のネイティブスピーカーの話が急に理解できるようになった。ある期間は、上達が感じられない停滞期間、でもその後、階段を一段登るように成果を実感できることです。 日本女性は、停滞期間がいくら長くても、停滞が後退になっても真面目に頑張る。ロンドン女性は決めた停滞期間を超えたらなんかおかしいと感じる。停滞が後退になることはありえない。楽しい時間が減っていくのはおかしいから。 この辺りに、ヒントがあるのかもしれません。

とにもかくにも、真面目に頑張っておられる世界の女性に、Cheer UP よいお年をお迎えください。来年(2016年)もご愛顧を承りますよう、宜しくお願い申し上げます。

Remember, you can always stoop and pick up nothing. - Charlie Chaplin 

参考資料
ILO:Karoshi
http://www.ilo.org/safework/info/publications/WCMS_211571/lang--en/index.htm
経済産業省:労働生産性 国際比較
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shinsangyou/pdf/report_002_02_06.pdf
BBC NEWS:Tube strike
http://www.bbc.com/news/uk-england-london-33440369

心は一つ (2015.11.24)



BBCのドキュメンタリー。ある中国の山奥で身寄りのない双子の赤ちゃんが発見され、孤児院に送られました。その後間もなく、一人は、アメリカに渡り、もう一人はノルウェーのある家庭に養女として育てられました。そして、アメリカに渡った女の子は「Mia」と名付けられ、バイオリンを習い、充実した生活を送っています。一方、ノルウェーに養女として行った女の子は「Alexandra」と命名され、大自然豊かな風景画のようなところでのびのびと過ごしています。
6歳の頃、初めて対面しました。その後、インターネットや手紙を通じて交流を重ねていますが、遠く離れているため次はいつ会えるのか、二人とも分からないのです。 アメリカにいるMiaちゃんは、Alexandraの事を思い出すと、必ず海に行き、海の向う側につながる水平線をずっと眺めています。またAlexandraちゃんも、Miaちゃん同様に、なかなか会えない姉妹ですが、会いたくなったら、海に行き、Miaちゃんへの思いを雲や波に託し、Miaちゃんに届くようと祈り続けています。
この双子のように、逢いたくても逢えない人がいる人、 また帰りたくても帰れない場所がある人、広い世界なのに、行く場所さえなく彷徨っている人々、今、どのような気持ちで毎日を過ごしているのでしょう。考えるだけでも心が痛みます。
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)憲章の前文には、こう書かれています: 「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。」 人々はこの世の中で共存していくために、文化の違い、信仰の違い、習慣の違いは避けられないものです。無意識の偏見や差別は意識に上る偏見や差別を呼び、理不尽な事も多いのですが、決して暴力で解決できるような単純なことではありません。
今、人類が、宗教や民族や国家によって、その心を分断されていても、いつかは人類の心の力で、対話を重ね、戦争をなくし、笑顔あふれる世界になるよう、心より祈っています。

When you're down and out, there seems no hope at all But if you just believe there's no way we can fall Let us realize that a change can only come When we stand together as one We are the world, we are the children We are the ones who make a brighter day So let's start giving There's a choice we're making We're saving out own lives It's true we'll make a better day Just you and me
                     〜 We are the World 〜

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出典:http://www.bbc.co.uk/programmes/b053pxdt
(2015年11月22日アクセス)





The Waiting Wall (2015.10.23)


イギリスのBrighton Stationは、あるユニークな企画で通行人の目を留まらせました。それは、見知らぬ人からの伝言板です。匿名で誰でも投稿でき、ある人は、仕事の悩み、ある人は、育児で悩まされていること、またある人は恋の悩み、心の中に潜めた悩みや不満、伝えきれない気持ち、叫びたかったこと、ずっと殻に閉じ込めたストーリーを誰にも気付かれずに素直に表現できる伝言板です。そして、見る人もまた、自分と同じ悩みを抱えている人がいる事に共感し、気分転換にもなります。
言わないから苦しみが無いわけではなく、言わないから悲しみを忘れるわけでもありません。人間誰もが悩みを抱えているものです。仕事でこんなに頑張っているのに、なぜ認めてもらえないのか。親の介護と仕事との葛藤。恩返ししたい気持ちがあるものの、毎日が辛い、顔を見るたびに涙が出てしまう。どうしたらいいか分からなくなる。あるいは、子育てで毎日料理を作ること。笑顔を作って。でも本当は疲れた、もっと休みたい。このように皆様々な苦悩を抱えて毎日何事もないかのように過ごしています。
一生懸命頑張るということは大変素敵な事です。ただ結果に至るまでのプロセスは必ずしも順風満帆ではありません。時には我慢することも、時には楽しめることもあるでしょう。船は目的地に向かう途中で燃料補給や整備をすることがあります。たまには一休みをして、自分自身と向き合う時間を作り、心の声をゆっくり聴くことで、いままで気付かなかった、見えづらかった物が見えてくるかもしれません。
自分が受けいれられる量を超えてストレスを抱えることは大変な事です。時には、私がロンドンでよく見かけた風景。それは公園の草場で昼寝をしたり、また誰かと話したり、美味しいものを食べることも良いでしょう。休みながら一歩一歩前進。
そしてこのプロセスに耐えて一生懸命やっていたときにこそ、思いがけない面白さや喜びがあったのだといつか分かるものです。やすやすと答えは見つからないけれど、ひとつひとつの喜びのために、努力して手にいれる達成感。またさらに頑張ろうと思う良き循環。未来の事は誰にも分らない。けれど一生懸命頑張ることはとても素敵なことです!!人生を楽しみながら皆さまと一緒に頑張りたいと思います。

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(撮影:村上昂音 Russell Square、London、2015年8月)

March winds and April showers bring forth May flowers.

三月の風に吹かれ四月の雨に打たれて五月に花が咲く

(英語圏のことわざです。バタバタと忙しく毎日を送っていても、ふと自然に目をやると、そこでは世界が生き生きときらめいています。すべての物事には関連性があって、お互いに影響し合っています。あなたの悲しみも不安も苦労も、いつか大きな喜びの種となることでしょう。)

物事の見方 (2015.09.26)


今年の7月に「Cafe Art」がロンドンの100名のホームレスの人々を対象に、「My London」というテーマでホームレスの人々にカメラを渡し、撮影の技術を教えました。そして彼らの撮った写真で展覧会を開催しました。

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ロンドンの象徴でもある「赤い電話ボックス」、ストラトフォールドにある自然のトンネル、捨てられた靴、そして、「Hyde Park」での「私の影」等々。

これらの写真は撮った人の背後にある物語を静かに伝えています。時には悲しい思いで、時には生活の楽しさを新たに発見して。 同じ風景でも、きっと見る人によって様々なのでしょう。





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例えば、左のこの標記、 何に見えますか?左側から見れば、小文字のmに、右側から見れば、wに見える。また上から見ればeで、下から見れば数字の3に見えます。このように視点を変えると、同じものでも違って見えます。 さらに、心の状態の違いによって物事の見方も変わります。例えば、同じ川の水でも、私たち人間は「河」に見え、天人は「甘露」に見え、餓鬼は「火」に見えるという言葉を聞いたことがあります。 また、ピンチを不幸と考えるか、あるいはこの「大変さ」は自分自身が「大きく変わる」チャンスと捉えることができるかどうかは、心の状態によって左右されます。 そして、三つ目です。誰が見るか?つまり見る主体によって物事が違って見えます。虫嫌いな人は、夕暮れ時に湿った土の上を這うミミズを見ると、鳥肌が立ちますが、ミミズを主食とする鳥から見れば有り難い晩餐に見えるでしょう。 思いのほか、人は無意識に一つの見方に執着して、他の見方があることを忘れがちです。 物事の見方を変えれば、行動が変わる、行動を変えれば成果が変わってきます。良い成果は人を幸せにするものです。 「不幸せ」は、見方を変えれば、「ふう〜幸せ」(笑)〜ではありませんか。

There is nothing either good or bad, but thinking makes it so. By: Shakespeare

出典:2015年9月24日アクセス
http://cafeart.org.uk/

ロンドン散策 (2015.08.26)


百聞は一見にしかずとは、こういうことだと久しくロンドンを訪れていなかったため身を持って感じました。
まず、ロンドンの交通から。自家用車やタクシーはもちろんのこと、公共交通機関としてバスや地下鉄が都市を網羅しており大変便利です。バスは有名な2階建ての赤いバスです。各バス停には、何番のバスがあと何分で到着するという電子表示板が設置されており、大変分かりやすく親切です。地下鉄は車両とプラットホームの間にホームドアが付いてなく、電車とホームの隙間が広く、乗降車時は要注意です。荷物を重たそうに持っていると、手を貸しましょうか、と親切に声を掛けてくれる人もおり、イメージ通り紳士の国と感じます。
東京で地下鉄に乗る時はあまりエレベーターを使わず、階段で上り下りをしていましたが、ロンドンのRussell Squareの駅はなんと階段が157段、知らずに階段を使ったところ相当な運動になりました。多くの人はエレベーターを使用するようです。エレベーターの隣に「こちらの駅には階段が157段あります」と表示してあり、親切です(笑) 街中に案内板が設置してあり、地図を持っていなくてもこの案内板を見ることで、まず迷子になることは無いでしょう。30分間無料の自転車も街の所々借りる場所があるので道に自信のある方には是非お勧めです。また、信号を守らない人が多いからでしょうか、街中に信号の前にほぼ必ず左に注意、右に注意という標識があります。
電車に乗ろうとして日本と一番大きく違うのは、電車の発車ホームについてです。発車時刻ギリギリまで何番ホームから出発するか分かりません。おおよそ発車5〜10分前にホーム番号が表示され、乗客が一斉にそのホームに向かって走るのは何ともユニークな光景です。電車の中で退屈にならないよう、各テーブルの上にクイズ、ゲームができるよう工夫されています。
イギリスは福祉に大変力を入れている国です。国民は医療費(診察費)が掛かりません。留学生も半年以上の滞在であれば同じくこの有難いサービスを享受できます。 中心部の地下鉄から徒歩一分でお洒落なマンションが見えます。なんと低所得者向けの市営住宅です。マンションの周りは大きなスーパーやショッピングモールに囲まれており、病院も併設してあるため便利です。街中のカフェは都会的で洗練された雰囲気に包まれています。仕事の疲れを忘れ、のんびりリフレッシュできるスペースです。日本のホテルは入口が広く天井が高いというイメージと対照的にロンドンは割とこぢんまりとしています。また、街の行く先々どこでも英国ガーデンの雰囲気が漂っています。
ビートルズの影響は今でも色褪せず、あちらこちらにショップがあるので、ファンには嬉しい限りです。 土日の休日、ロンドンの街は大道芸人やパフォーマー達の見せ場となり、歩き回ると東洋と違うパフォーマンスが見られ、気が付くと街角のあちらこちらで足をとめていました。 緑の大地、心地よい風、花の香り。懐かしく響くメロディー。目に染みる夕日の光景・・

自然と伝統を守り続けるロンドン。愛されてやまないロンドン。

 Hear the sight, See the sound. 五感でロンドンを楽しもう!

来月もイギリスの滞在リポートを致します。お楽しみに~(^^♪

全ての道はローマに通ず (2015.07.24)


イギリスのニュースサイト「Mail Online」(2013年6月30日)に掲載されていた下記の絵は、イギリスのレスターシャー州マーケット・ハーボローに住むアイリス・グレース(Iris Grace Halmshaw)ちゃん(当時3歳)の作品です。

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アイリスちゃんは2011年に自閉症と診断されました。神経の発達障害があり、口をきくことができないのですが、並外れた絵を描く才能で、自分の気持ちを表現することができるようです。母親のアラベラさんが彼女の絵を"Facebook"に投稿したところ、世界中から絵を買いたいという問い合わせが殺到し、ロンドンのチャリティーオークションに出品したところ、830ポンド(約12万円)という買値が付いたそうです。現在は「irisgracepainting.com」で原画と複製画が販売されています(注)。 人間は身の回りに起こった現象を、こうだと決めつける「思い込み」の傾向があります。この子は病気だから、この人はこうだからという理由で簡単に諦めたり、結論を下したりします。以前テレビである面白い話を見ました。題名は「やさしいあひる」。とある動物園の池で、毎日「やさしいあひる」が自分の餌のパンを錦鯉に分けてあげているという話です。実際の映像を見ても、確かにあひるがパンをくちばしにくわえ、鯉が集まる水辺で餌を落とす光景。そこに錦鯉が寄ってきてあたかもあひるが鯉に餌をあげているように見えます。「なんてやさしいあひるなんだ」と人間はついつい自分なりの解釈をしてしまいます。   しかし飼育員の話では、事実はもっと単純です。あひるは餌のパンを一度、水に浸けた方が餌のパンが柔らかくなり、食べやすくなるためにしているのです。その食べこぼしをもらうために錦鯉が集まっている、とのことです。
星占いではよく「ふたご座」の人は二重人格と言われます。人間は誰もが隠れた人格を持っています。多重人格の中から適切な人格を選び私たちは生活や仕事をこなすこともあるものです。子供の場合、その隠れた人格、才能を開花させるのは親の役目であり、またニートや引きこもりであっても、それぞれ見えていない才能があるかもしれません、それが何であるか探し出し、光を当て、意識的に育む、開花しやすい環境づくり、あるいは仕組みを作る。これは親の役目であるとともに国家の未来を担う人材教育システムの一部であり国や行政の役割だと思います。 最近、話題の坪田氏の著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』は・・学校で「人間のクズ」と呼ばれ、高校2年で学力は小4年レベル。聖徳太子を「せいとくたこ」と読んでいた偏差値30のギャル・さやかちゃんが、塾講師である著者・坪田信貴氏から心理学を駆使した指導を受け、やる気に目覚め、慶應義塾大学に合格するまでを追った実話を取り上げたものです。  太陽はすべてを照らし、希望をもたらし、恵みを与えます。様々な先入観にとらわれずに、教育を携わる人間として、教育の役割を考える日々です。

           Education is the kindling of a flame, not the filling of a vessel.

(注)出典:世界を驚かせた自閉症の3歳の少女が描いた絵画: Jihirog
参考文献: ▼ Mail Online / 30 June 2013 (英文)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2352055/Iris-Halmshaw-Astonishing-talent-girl-3-paintings-stunned-art-world.html
▼ Mail Online / 12 June 2013 (英文)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2340234/Autistic-year-old-girls-stunning-paintings-sell-800-took-brush-just-months-ago.html
▼ Iris Grace Painting (英文)
http://irisgracepainting.com/


五感で感じ、心に帰り道を (2015.06.29)


 北イングランドの城壁に囲まれ、城壁や寺院などが当時を偲ばせる古都、ヨーク。ノルマン支配の中世以降、キリスト教信仰の中心地となりました。町の周囲は12世紀から14世紀にかけて築かれたという城壁に取り囲まれ、城壁は所々途切れている所もありますが、ほぼ城壁の上を通って街の中心を一周することができるそうです。
 イギリス・ヨークは自然豊かな街です。街の中心部を少し離れると…カモの親子が道を横断、白い蝶の大群かと思わせるような雛菊の群生。 

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(写真提供:佐々木亮会員)

「仕事で、勉強で忙しいのでそんなものを見ている暇はない」と言う人もいるのではないでしょうか。
ジェームス・ワットは、蒸気機関の技術で産業革命に大きく貢献したイギリスの発明家・機械技術者です。1765年のある日曜日、散歩をしていたジェームス・ワットは、新しい蒸気機関のアイディアを思いつき、さっそくアイディアを実現するための実験を開始したそうです。部屋に長時間閉じこもっていても行き詰まることも多いかもしれません。それ自体がストレスになり、そしてそのストレスが創造性を抑圧する敵でもあるのです。 外に出て、歩くことによってセロトニンという物質が分泌されて、爽快感を生み出し、規則正しい歩行運動はセロトニンの分泌をさらに促します。そして不安感が消え、愛の感情さえ生み出すとも言われます。

このコンクリートで固まれた都会で生活をしていると、どこかに不満を感じていませんか。 営業成績が伸びない。子供は勉強しない。夫は家事を手伝ってくれない。妻の料理はまずい。職場の人間関係がなかなかうまくいかず、恋人ができない。等々。人間は様々なストレスを抱え、悶々とした毎日でつい幸せを感じる余裕を持てなくなりました。 疲れた時は休めばいい、毎回100点を目指さなくても、時には80点でもいいのではないでしょうか。毎日美味しいものばかり食べていると、その有難さを忘れます。忘れたころに食べるから美味しく感じるのです。人間関係においても、人を変えるのはなかなか難しいことです。自分自身をもう一度見直して、自分を映しだした鏡を磨いた方が簡単です。悩みも時がたち、よく考えてみると大したことではなかったということも分かります。 心に余裕さえあれば、他人にも優しくすることができ、感謝の気持ちが生まれ、小鳥のさえずりが愛らしく耳に響き、毎日の通勤通学路でも新たな発見や感動の物語に出会えるのかもしれません。

今月のコラムでは、ヨークの可愛らしいカモたちに癒されながら、これから鬱陶しい梅雨の季節を皆様と一緒に乗り越えられたらと思います。

The most important thing is to enjoy your life ? to be happy ? it’s all that matters. - Audrey Hepburn - 何より大事なのは、人生を楽しむこと。幸せを感じること、それだけです。 (英国の女優 / 1929〜1993)オードリー・ヘップバーン

参考資料:(2015年6月26日アクセス) ・ジェームス・ワット http://www.hkd.meti.go.jp/hokig/student/j02/watt.html ・http://www.kigyoujitsumu.jp/life/2137/

悲劇か、喜劇か (2015.05.26)

 以前、テレビ朝日が生涯80本以上の映画を残し、映画に革命をもたらしたといわれる“喜劇王”チャールズ・スペンサー・チャップリンを紹介しました。
 1889年4月16日、イギリス・ロンドンの下町で、チャールズ・スペンサー・チャップリンは、芸人夫婦の次男として生まれました。生後すぐ両親は離婚。そのため、チャップリンは母・ハンナにより、女手ひとつで育てられたのです。1910年、21才となったチャップリンは、舞台俳優として、初のアメリカ公演に臨みました。その演技が、映画会社社長マック・セネットの目に留まり、映画の世界へ。それから4年後、『成功争い』で初主演を掴み取ります。ところがこの作品、興行的には大コケ。しかし、続く2作目の撮影中、チャップリンに思わぬ転機が訪れました。ある日、監督がアイデアに煮詰まり、自暴自棄になりかけていました。現場の空気は最悪。何とか監督を助け、現場の空気を変えられないものか――チャップリンは、ある行動を起こしたのです。衣裳部屋へと走ったチャップリンは、ステッキを手に取り、だぶだぶなズボンに、キツイ上着、小さな帽子に、大きすぎる靴、この時こそが、チャップリンのトレードマークとなった、放浪者でありながら紳士という「放浪紳士・チャーリー」誕生の瞬間でした。この男のキャラクターが、いつの間にかチャップリンの頭の中で出来上がっていたのです。この出来事をキッカケに、チャップリンの類まれな天才ぶりは映画界に認められることとなり、次々と、この放浪紳士・チャーリーは映画に登場することとなりました。
そして世界中で超人気者となったチャップリン、彼に与えられた称号は、『世界の喜劇王』。チャップリンの登場によって、世界中の喜劇は大きく様変わりしました。それまでの喜劇映画といえば、明るい笑顔で人気を博したハロルド・ロイドや、体を張ったギャグアクションで有名なバスター・キートンに代表されるスラップスティックコメディー、つまりドタバタ喜劇が主流。これらは全て、最後には必ず追いかけっこになって終わる、というお決まりの喜劇でした。そしてもうひとつ、チャップリンが喜劇に持ち込んだものが『社会風刺』です。1936年に公開された『モダン・タイムス』の中でチャップリンは、当時資本主義社会の主流になりつつあった機械文明を痛烈に皮肉。「機械化が人類を幸福にする」と信じられていた時代に、人間が機械に支配される未来に対して、警鐘を鳴らしたのです。『涙』と『社会風刺』。このふたつの要素を喜劇に織り込んだ理由に関して、のちにチャップリンはこう語っています。「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇である。」

 新入社員の時、配属先に不満を持った、あるいは人生で何か決断を下した時、そんなはずじゃなかったと思った人もたくさんいるでしょう。 トヨタの渡辺前社長は1964年4月に入社、直後に配属されたのは人事部厚生課。社内食堂を管理する従業員給食係でした。さすがにショックを受けたようです。ところが、渡辺前社長は食堂や調理場に足を運び、余分な仕入れや残飯を減らすためにデータをとり、金券制の導入など「ムダ」を省く工夫をしました。このように新入社員時代に社員食堂の改善を命じられたとき、残飯の分析を行い、現場の人達を驚かせたという逸話があります。
 開業医の免許を受けたものの、医者でも臨床家としての光明を見いだせなかった野口英世は、医学者を目標にすべく決意を固めていました。彼の学問的関心は、隆盛を誇っていた細菌学へ向かい、助手として北里柴三郎博士率いる伝染病研究所への入所を果たしました。しかし当初任されたのは外国の図書、論文の整理の仕事でした。研究者にとって脇道にそれることになりますが、野口英世はそれほど失望しませんでした。そこでの英語力をはじめ、研究の基盤となる文献を読む機会を与えられたことが後の野口英世を支えた原動力となったとも言えるでしょう。どんなところからも這い出す、必ず挽回の機会が来ると信じていたからです。 野口英世は中国語も堪能でした。他の研究者と対照的に清国の人には野口が素晴らしい医者に見え、実際に多くの人を救うことができました。習得した中国語も医学者として力を発揮する機会を得ることにつながりました。

 人は生きている限り、辛い事、ショックを受ける事、不本意な事、様々な事に遭遇します。しかし時が経つにつれ、自分を成長させてくれた出来事であったのだと気付かされることがあるでしょう。 一見、横道に逸れたようでも、「ゴールへの最短コースを歩むのだ」。こう決めたとき、「悲劇」即「喜劇」に転換できる、私はそう信じています。


Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.
人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇である 〜By チャップリン

出典: http://www.tv-asahi.co.jp/ss/166/special/top.html (テレビ朝日:2015年5月24日アクセス)
参考文献: ※http://www.tdc.ac.jp/noguchi/index.html (野口英世と東京歯科大学:2015年5月24日アクセス) ※正木英昭(2006) 『トヨタ方式で仕事も自分も変えられる: 誰でもカイゼンできる仕事のスキル』秀和システム出版

先入観による落とし穴 (2015.04.26)

 英国の元首相チャーチルはかつて、次のような面白い話を演説でしました。 あるスペインの囚人は何年間も地下牢に監禁されていました。ある日、囚人はふと思いついて独房の扉を押してみました。するとそれはなんと開いたのでした。実は、鍵など一度もかけられたことがなかったのです。
 それが実話かどうかは別として、チャーチル氏はそれを用いて伝えたかったのは「人間の先入観の恐ろしさ」です。確かに、囚人である以上、監獄に入れられたら外に出られないと思うのは普通です。 サーカスの象もそうですが、本来であれば象は力持ちで逃げようと思えばいくらでも簡単に逃げられるのです。しかし鎖を付けられたら、もう逃げることはできないと象も思い、鎖の長さの範囲でしか動かないという話もあります。
 また100メートル走の記録について、1960年西ドイツのアルミン・ハリー選手が初めて人類の100メートル走で10秒の壁に辿りつきました。続いて1964年の東京オリンピックでも、アメリカのボブ・ヘイズ選手がやはり10秒0で優勝しました。10秒の壁は人間の力では到底叶わないものなのでしょうか、長い間10秒の壁を破ることはできませんでした。 しかし、2012年のロンドンオリンピックで、ウサイン・ボルト選手は9秒63のオリンピック新記録で優勝し、ついに10秒の壁を破ることができたのです。
 もうすぐゴールデンウィーク。新年度が始まった4月には新入学や入社、異動、一人暮らしなど新しい環境への期待があり、やる気があったものの、その環境に適応できずうつ病に似たような症状が5月のゴールデンウィーク明け頃から起こることが多いことから、「5月病」とよく言われます。もしかして、その「5月病」も先入観による落とし穴なのかもしれません。「上司は怖い、目標を達成できなかったら怒られる」といったような先入観を持って仕事に臨むと、気持ちがネガティブループとなり、人間関係の悪循環にも繋がり、基本的な仕事や報告が遅れることで業務に支障が生じてしまいます。 普段メールでは素っ気ない返事しかしない同僚や上司でも、実際会ってみると、意外にも楽しい会話が弾む、思っていたような人間像と全然違って感じる事があります。この人、苦手だな、自分を敵と思っているのだろう・・・と思っている人にこそ、素直な心で接するべきではないでしょうか。なぜなら、「敵」を「素」の心で見ると、「素敵」になるのではありませんか。

Success is the ability to go from failure to failure without losing your enthusiasm.
(By: Sir Winston Leonard Spencer-Churchill)

価値 〜服は光る人の行動によって輝く〜 (2015.03.25)

 先日、イギリスのキャサリン妃が、チルドレンズセンターを訪れた際に着ていた水玉模様のワンピースが話題になっています、どうもキャサリン妃自らがネットオーダーして購入していたようだとニュースで報道されていました。
 そのドレスとは、黒地に白い水玉模様の七分袖のドレスで、35ポンド(約6280円)のエイソスのものです。デイリー・メール紙によれば、「エイソスの広報は、『キャサリン妃のスタイリストからこのドレスのオーダーはありませんでした。普通のお客様と同じように、キャサリン妃が自らネットで検索し、オーダーをして購入されたものでしょう』と主張している」とのことで、キャサリン妃本人のお見立てということになります。(注)
 ネットオーダーした服を召されたことは聞いたことがない皇室と比べると、イギリスの王室は幾分自由で国民からも親しみが持たれやすいように感じます。ただ、庶民的だから良いというわけではなく、大事なのはブランド・価格ではなく、どこに物の価値を置くのか、ということでしょう。
 先日、書店で週間ベストセラーの「フランス人は10着しか服を持たない」(原題はLessons from Madame Chic:20 Stylish Secrets I Learned While Living in Paris.)という本を手に取りました。上質でお気に入りの必要なものだけに絞り大切にするとのこと、原題に「〜20のスタイリッシュな秘密とあり、品格と知性が感じられます。「その人らしさ」を忠実に表すのが服なのかもしれません。
冒頭のキャサリン妃は、第2子を4月に出産予定です。身重のからだで車から降りる際も手でお腹を支え赤ちゃんを気遣っているように見えます。公務とはいえ今回のように、チルドレンズセンターへの訪問でどれほど多くの人に喜びを与えたことでしょう。

---The value of a man should be seen in what he gives and not in what he is able to receive. 人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる。(BY: アインシュタイン)---

このキャサリン妃の行動が、水玉模様のワンピースをさらに素敵にみせました。
報道されて、数分後このワンピースが売り切れたことは言うまでもありません。

(注)  YAHOOニュース(2015年3月23日アクセス)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150323-00000035-mvwalk-movi


イギリス留学 (2015.02.28)

 皆様、こんにちは。今月はイギリス留学の特集号として、本研究会の会員であるヨーク大学に留学中の跡見女子学園大学の佐々木亮先生にイギリス留学の魅力、日本の大学との比較などについてインタビューをさせて頂きました。(以下、敬称略)

(村上):佐々木先生、ご無沙汰しております。ヨーク大学に留学していよいよ半年が経ちます。いかがお過ごしでしょうか。はじめにイギリス留学のきっかけを教えて頂けませんか?

(佐々木):実際に留学する何年も前から、日本の博士課程に在学している間に留学したいという思いがありました。ヨーロッパ人権保障制度を対象とした研究をしているので、実際にそれらの制度が運用されている場所で研究する機会を作ることが留学の大きな目的でした。1年の留学期間中に自分の研究を深めるとともに、新しいことを学び、目に見える成果を残すことも考えて、LLM(法学修士)コースに留学することに決めました。複数の大学を候補として挙げ、その中から留学先を選ぶことにしましたが、日本で行っている研究が理論研究に近いので、留学先は反対に実務指向の強いコースにしようと考え、最終的にカリキュラムの中でフィールドワークも行えるヨーク大学のロースクールに決めました。

(村上):自分の研究を深め、そして新しい事を学び、目に見える成果を残すということですね。素晴らしいです。有難うございます。実際、イギリス留学中に感じたことを具体的に教えて頂ければ幸いです。

(佐々木):学生の出身地も経歴も多様であることです。単に留学生の数が多いということではなく、 様々な国籍の人が同じ場所で学んでおり、イギリス出身の学生が必ずしも多数派ではありません。また、大学院では、学部卒業後にそのまま進学した人も、大学卒業後に働いた後にキャリアアップのために入学してきた人もいます。私が所属している国際人権法修士コースには、人権NGOのスタッフ、外交官、警察官、弁護士などの経験を持つ人がいて、授業でそれぞれの貴重な経験を共有してくれます。 「カレッジ(学寮)制」もイギリスの大学の特徴かと思います。 授業や研究指導は、各学科(department、Law School、Medical Schoolなど・ヨーク大学には学部(faculty)という区分はありません)で行われますが、departmentやschoolとは別に、全ての学生がいずれかのカレッジに所属します。ヨーク大学には9つのカレッジがあり、入学手続の際に希望のカレッジを申し出るのですが、1つのカレッジの中に同じ専門分野や同じ国籍の学生が集まらないように配慮されています。そのため、授業を終えてカレッジに戻ると、授業とは全く異なるメンバーが生活を共にすることになります。大学の授業でも、生活の場でも、いろいろな意味での多様性を経験できるのも、イギリス留学の大きな魅力の1つです。

(村上):社会人経験を持つ方々と授業で経験を共有するというのは刺激や励みになり、大変良い事ですね。それに一つの大学の中に9つのカレッジもあり、異なる分野や国籍の学生と交流できるのは魅力的ですね。私も8月にロンドン大学(SOAS)にショートビジットに行きますので、今から大変楽しみにしております。 最後に、もう一つ、日本の大学と比較して、ガバナンスへの提言はありますでしょうか?

(佐々木):日本の大学と比較して、イギリスの大学では、カリキュラムの統合度が非常に高いです。 授業内容の決定や成績評価を担当教員に一任せず、各コースを統括する委員会が、 そのコースで開講されている各授業の内容や成績評価の方法を一元的に管理しています。 そのため、1つのコースで開講されている各授業の内容が相互に結び付いています。 反対に、統合度が高い分、履修科目を選択する幅は小さいです。 例えば、最初の学期は、週に3モジュール(1モジュールにつき、90分の講義と60分のセミナーがセット)履修しなければなりませんでしたが、3つとも必修科目であり、授業を選択する余地はありませんでした。成績評価は試験や小論文によるものが多く、大学が定めた基準を全ての授業で一律に適用して、厳格に行われますが、同時にきめ細かい指導が行われています、例えば、私が所属するコースでは、学期の中間には期末試験や小論文の練習のような機会が全ての授業において設けられています。試験や小論文と同形式の問題が出され、解答を作成して提出すれば、担当の先生がコメントを書いて返却してくれます。これは、あくまで学習の機会を提供することを目的としており、成績には反映されません。こうした指導が、担当教員の自主的な取り組みとしてではなく、コース全体で行われていることが、大きな特徴だと言えます。 さらに、どの授業でもシラバスが非常に詳しく書かれています。授業の目的や成績評価の方法、提出すべき課題などはもちろんのこと、毎回のテーマ、 事前に読んでおくべき文献なども細かく指示されます。 在学期間全体を通じて目指すべき目標を設定し、全体が有機的に結びつけてカリキュラムをデザインするという発想は、日本の大学でも浸透しつつあります。今後の日本の大学は、各学生が興味に応じて自分の時間割を組み立てることができる自由に学問を探究できる雰囲気を大事にしながら、授業の垣根を越えて全学レベルでカリキュラムの体系化を図り、学習支援システムを構築していく必要があるのではないかと思います。

(村上):なるほど。イギリスの大学はカリキュラムの統合度が高いのですね。コース全体委員会の管理の元ですべて行われ、教員にとっても学生にとっても大変効率よく学問を探求することができるのですね。確かにこのような体系化された学習支援システムが日本の大学に導入される事になれば学生にとっては朗報です。イギリスへの留学はますます魅力的になっていくことは間違いありませんね。 その留学の経験はきっと未来への自信に繋がります!お忙しい所お時間を頂き、佐々木先生、有難うございました。


01 ヨーク大学メインキャンパス

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02 ヨークロースクール・マネジメントスクール(東キャンパス)

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03・04  ヨーク市街地


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星に願いを〜    (2015.01.27)

イギリスのタレントオーディション番組「 Britain's Got Talent 2014」に80歳のペディとそのパートナー、ニコの登場は会場を震撼させました。一人の審査員が早々と失格のボタンを押した瞬間、音楽が変わり、ペディの様子は可愛いお婆ちゃんから年齢とは思えない情熱的なサルサダンサーに変身。そして最後、会場の熱気と共に審査員から「Amazing」の絶賛。話を伺うと、ペディは夫を亡くし、4人の子どもを育てながらも、ダンサーの夢を諦めなかったそうです。ペディの言葉「This is the result.」人生とダンスの関係は全ての辛さや喜びを物語り、いくつになっても女性の魅力溢れるエネルギーにただ胸を打たれ、涙が出そうになりました。
平凡で忙しい毎日、つい時間との戦いで日々追われ、いつの間にか夢さえ失ってしまいそうな気がしません。自分はいったい何のために仕事をしているのでしょう、何のために生きているのでしょう。思えば、私も教育に携わる仕事をしようと思ったのは、ある夢があるからです。それは中国の内陸部の貧困地域でより多くの子ども達が義務教育を受けられるよう「希望小学校」を造る事です。しかし漠然と何の努力もしないままでは、夢は夢のままで終わってしまいます。一分一秒を大切に努力し続けてきたイギリスの80歳のペディさんには多くの事を考えさせられました。ペディさんがいうResult(結果)は地道な努力と決意ある行動より生まれ、また更なる努力と行動を呼び起こし、その連鎖はいつのまにか本人でも信じられないような高みにまで自らを運んでくれていたのです。
どんなに頑張っても夢は叶わない、という人もいるのかもしれません。確かに努力したからと言って夢が必ずしも叶う訳ではありません。 しかし、夢を実現した人は必ず努力する事を怠ることなく頑張った人、と私は信じています。
星に願いを込めて、そして夢に向かって頑張る!
When you wish upon a star, your dream comes true.

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出典: Spectacular Salsa - Paddy & Nico - Electric Ballroom | Britain's Got Talent 2014
https://www.youtube.com/watch?v=hjHnWz3EyHs




クリスマスの奇跡 (2014.12.23)



イギリスのスーパーマーケットSainsbury'sの今年のクリスマス広告に「第一次世界大戦の英独軍の停戦」が使われています。これもまた大きな話題を呼んでいます。 過酷な戦場で戦争を続ける軍の兵士たちは悲しみ、恐怖、怒り、様々な感情の中に年に一度だけのクリスマスがやってきます。真冬の戦場に白い雪が降り注いだ後、兵士たちは両手を挙げ恐る恐る近づき握手を交わし一時停戦、サッカーを楽しみます。サッカーが終わりお互いの陣地に戻った時、コートのポケットにはクリスマスのプレゼントとして、相手の兵士がそっと入れたチョコレートがありました。 敵同士でも、クリスマスという特別な日には優しい気持ちをわけあおうという実話に基づいた広告の作者の思いが込められており、なぜか心が温かくなりました。

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出典:UEFAがクリスマス休戦の記念行事を計画
http://jp.uefa.com/news/newsid=2086376.html
2014年12月22日アクセス


もうすぐクリスマス、恋人と一緒にロマンチックな夜を過ごす人もいれば、戦争,政情不安,民族抗争,あるいはテロ行為の収まらない地域に住んでいる人々もなおいます。その人々の事を思うと、とても切なく悲しい。戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない。 ノーベル平和賞の受賞者マララさんは、「このノーベル賞は私だけのものではありません。教育を受けることを望む、忘れられた子供たちのものです。平和を希求する、おびえた子供たちのものです。変革を望む、声なき子供たちのものです。」と言っています。教育は人生の恵みの一つであり、生きる上で欠かせないものです。1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペン、それで世界を変えられます。教育こそがただ一つの解決策とマララさんの切実な演説に考えさせられたことが多々あります。 一人立つ、これからの子ども達にしてあげられることとは何か、私達も教育に携わる者としてこの使命を果たすのが義務なのかもしれません。
世界はまだ争いが数多く起きています、せめてクリスマスには安らぎのひと時をシェアしたいですね。

And so this is Xmas For weak and for strong For rich and the poor ones The world is so wrong And so happy Xmas For black and for white For yellow and red ones Let's stop all the fight
A very Merry Xmas And a happy New Year Let's hope it's a good one Without any fear War is over, if you want it War is over now
Happy Xmas

       〜ジョン・レノン“Happy Xmas (War Is Over)”

いつか毎日がクリスマスのような安らぎな平和がやってくるように〜 メリークリスマス!皆様も良いお年をお過ごしください。 また来年お会いしましょう。

Christmas is for sharing.

出典:Sainsbury's OFFICIAL Christmas 2014 Ad
https://www.youtube.com/watch?v=NWF2JBb1bvM
2014年12月22日アクセス

参考文献:Christmas in the Trenches, 1914
http://www.eyewitnesstohistory.com/trenches.htm
2014年12月23日アクセス


心に錦〜紅茶と共に〜 (2014.11.24)



嬉しいことに友人からウェッジウッドの紅茶を頂きました。

1759年「イギリス陶工の父」と呼ばれたジョサイア・ウェッジウッドによって設立された、ウェッジウッド。イギリスはもちろん、世界を代表する高級洋食器ブランドのひとつです。独特の光沢と堅牢性を兼ね備えたボーンチャイナは世界中で高い評価を博し、イギリスの紅茶文化に大きく貢献しました。厳選された茶葉を使い、20種以上のフレーバーからなる紅茶のラインナップも気品あふれる香りと味に英国紅茶の神髄が感じられます。紅茶を中心にビスケットやリザーブもとりそろえ、ティータイムの楽しみを広げています。 紅茶の話でいつも議論の的となるのは「ミルクが先か」、「紅茶を先に入れるのか」という事です。

このミルクを注ぐタイミングに関したこの論争はなんと130年もの間続けられていましたが、2003年、権威のある英国王立化学協会が「ミルクが先」と発表したことでようやく決着がつきました。以来、世界中でミルクを先にいれる方法“ミルクインファースト”が広まっていきました。 階級社会のイギリスではミルクティーの淹れ方ひとつにも違いがあります。労働階級の方達も自分たちの暮らしに誇りを持ち、暮らしに合わせたティータイムを大切な家族と、また自分の時間を愉しんでいる、これこそ誰もができる心の優雅さです。 現代社会は経済発展につれ、豊かな物質生活に恵まれ、便利で快適になった一方、日々時間に追われストレスを抱える日常でもあります。夕食もついスーパーで買ったトレーのままの惣菜を食卓に運び、いつの間にか心の余裕を失ってしまいがちです。 世の中は思ったほど悪くはない、五感を使いいつもの道を散策すれば、道端に咲くけなげな花、小鳥のメロディー、子ども達の無邪気な笑い声、手を繋ぐ老夫婦の後姿、どこか心が温まる一瞬はあるはずです。

幸せとは何か?幸せは「探す」ものではなく、「感じる」事なのです。

At the touch of love, everyone becomes a poet.

芸術の秋 (2014.10.31)

先日、「ビートルズ」をテーマにブロードキャスターのピーター・バラカン氏及び山口大学の大学教育機構留学生センター教授、福屋利信氏お二方のご講演を聞きに行きました。『Beatles MONO LP BOX』から数曲聴きながら、思わず引き込まれてしまう講演者の優しい語り口に、笑いあり、懐かしさあり、温かいひと時でした。

思えば初めてビートルズを聞いたときは、まだ中学生の頃でした。嬉しい時も悲しい時も常にビートルズの曲を聴いていました。彼らの曲はいつまでも色あせることはないのです。ふっと思ったのです、あの日、あの時、あの瞬間、心に流れ続けた音楽の力とは何か。

NHKの番組で「世界的ピアニスト・仲道郁代が旅するイギリス・グラスゴー」は、芸術の力で元気を取り戻した街。子どもたちと自由な発想で曲作りに挑むなかで、仲道さんが見いだす音楽の力とは…長引く不況の中で、芸術家による数多くのワークショップが町と人々を元気づけてきました。仲道さんは子どもが自らの発想で作曲・演奏するワークショップに参加し、「音楽家は社会のために何ができるのか」、子どもたちと向き合ってヒントを探したとの事でした。

人を笑顔にする力、喜びを与える力。それが音楽の持つ力。

心の小さな種が芽吹くときを、夢や希望のつぼみが大きな花を咲かせるときを、 氷のような苦しみが溶けるときを、この芸術の秋に時間の流れに思いを馳せるひと時を音楽と共に〜?

「小川のせせらぎにも、草の葉のそよぎにも、耳を傾ければそこに音楽がある」     By:  ジョージ・ゴードン・バイロン(英国の詩人 / 1788〜1824) 

There are places I remember all my life, though some have changed. Some forever, not for better. And some have gone, and some remain. All these places have their moments with lovers and friends I still can't recall. Some are dead and some are living. In my life I love them all.            In my life――The Beatles

上を向いて歩こう (2014.9.25)

フジテレビの番組「奇跡体験」での「奇跡の出会い、3本足の犬と難病少年」が大きな話題を呼んでいます。 2011年、ロンドンの動物病院に生後半年ほどのアナトリアン・シェパードという大型犬が瀕死の重傷を負って、救急搬送されました。医師たちの懸命の努力により一命を取り留めたものの、損傷の激しかった左の後ろ足はやむなく切断されました。超大型犬が足を失うと、成犬となった時、自らの体重を支える事ができず、寝たきりになってしまうケースが多いためなかなか引き取りたいという人も現れないのが現実です。 それでも保護団体は、この可哀想な犬を救おうと「ハチ」という名前をつけ、様々なサイトで飼い主を募集。そこでオーウェン君という男の子が現れました。しかし彼は全身の筋肉が常に硬直してしまう先天性の難病『シュヴァルツ・ヤンペル症候群』を患っています。顔の筋肉も硬直しているため、常に目が開けづらく、口を尖らせた顔つきになってしまいます。 いつしか他人の視線を極端に怖がるようになってしまったオーウェン君は、やがて学校も休みがちになり、ついには家の外に出る事さえ嫌がるようになってしまったのだった。そんな中で、ハチを迎える日がやってきました。初対面のはずなのに、オーウェン君の膝に頭を乗せて甘えるハチと、ハチをなでているオーウェン君がいたのは何とも不思議な光景でした。 やがて、ハチの存在は、オーウェン君にある変化をもたらすようになりました。それは・・・ハチが足のために薬の混ざった食事をとるのを見て、再び薬を飲み始めたのです。 どんなに大変な状況でも、前向きに生きる姿勢をハチから学び取ったオーウェン君。こう して、失いかけた笑顔をハチと一緒に少しずつ取り戻していったのです。 その後、オーウェン君はハチと一緒に出かける先々で、色んな人にハチの話を聞かせることが何よりの楽しみになり、ついには、多くの人が集まるドッグショーにも出場。昨年3月、彼らは世界最大のドックショー、Crufts(クラフト)で犬と人間の友情に与えられる賞、『Friends for Life賞』の最終候補にノミネートされました。最後はなんと『Friends for Life賞』を見事に受賞。そこには、かつての外を出ることを恐れ、生きることに絶望していた少年の姿はどこにもありませんでした。 生命と生命の触れ合いがもたらす不思議な回復力と生命力を、私もある婦人との出会いから学びました。新入社員の頃交通事故に遭い、暫く入院しました。親に心配を掛けたくなく、一人で寂しさに堪えていた中で、同じ部屋の婦人はとにかく元気でした。私と他の患者さんにいつも話し掛けてくれ、お蔭様で全員が驚くほどの回復力を見せ元気に退院しました。 日本も少子高齢化が現実のものとなり、核家族、単身世帯が増える中、一人で悩みを抱えず、動物でもいい、人でもいい、とにかく一歩踏み出して、触れ合いを探しに行きませんか? ご近所の挨拶から、生命力あふれる一日を共に楽しみましょう。 最後に、世界の三大喜劇王の一人チャールズ・チャップリンの名言で今月のコラムを終えたいと思います。 「下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。」

You’ll never find a rainbow if you’re looking down.

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http://www.fujitv.co.jp/unb/contents/140501_2.html(2014年9月22日アクセス)

英国王のスピーチ      (2014.8.25)

 第83回アカデミー賞で4部門を受賞した映画「英国王のスピーチ」。吃音に悩む英国王ジョージ6世が周囲の力を借りながら克服し、国民に愛される王になるまでを描く実話に基づく感動作です。物事の始まりは1934年、大英帝国博覧会閉会式で、ヨーク公アルバート王子はエリザベス妃に見守られ、父王ジョージ5世の代理として演説を行いました。しかし、吃音症のために悲惨な結果に終わり、聴衆も落胆してしまいました。  人生の宝物探しは人との出会いであるように、吃音に悩んでいたヨーク公(のちのジョージ6世)は、医師の免許もなくパッとしない人生を送っていたスピーチ矯正師ライオネルとの出会いがなかったら2人の人生はもちろん、イギリスの命運も変わっていたでしょう。 ジョージはライオネルの助けを借り、何とか戴冠式のスピーチは成功に終えることができました。しかし、本当の王になるための真の試練はこれからでした。 ヒトラー率いるナチスとの開戦直前、不安に揺れる国民は王の言葉を待ち望んでいた中で、国王は国民の心をひとつにするため、世紀のスピーチに挑む。わずか9分半というスピーチも、ジョージにとっては難関でした。いつ吃音が生じてくるのか、気が気でなくスピーチの日を迎えました。  最後には国民たちを鼓舞するスピーチを成し遂げた英国王ジョージ6世、独裁者の強引な扇動の為の言葉よりも、共にあろうという想い、国民の心に響かせるものだったのではないでしょうか  英国王の強さの源には何かあるのでしょう。心強い友人の応援は勿論大切ですが、国王の内なる使命感が源泉になっていたのではないでしょうか。人間とは不思議なもので、考えてみると、「人の為」なら頑張れるものです。当たり前の事ですが、誰にとっても一日24時間しかありません。人の為に、時間を使うとむしろ心の余裕も生まれて来ます。人生の主人公として、自分の使命に目覚め、そして自分の人生に責任を持つ生き方が素敵だと思います。  「責任は時に人を萎縮させるが、それが人の為の使命になると覚悟が生まれ最高のパフォーマンスを発揮できる!」という事をこの映画から学ばせて頂きました。 最後に73歳でアカデミー脚本賞を受賞した脚本を書いたディヴィッド・サイドラ―の言葉で8月のコラムを終えたいと思います。自らも吃音症だったという彼のスピーチは、「私達には声があり、それは聞き届けられたのです」という胸に染みる締めくくりでした。

「We have a voice, we have been heard」。

太陽は万人を平等に照らす (2014.7.22)

先日フジテレビのFNNニュースで、イギリス・ロンドンで、「犬」をきっかけに、苦しい路上生活から抜け出せた男性が紹介されました。 ロンドンで暮らすドーランさんは、少し前まで、飼い犬のジョージと路上生活を送っていました。いつも、道端でジョージの絵を描いていたところ、画廊のオーナーの目にとまって、個展を開催。これが大成功を収め、生活は一変したとの事です。 今では、作品になんと50万円以上の値がつき、アメリカで個展を開き、本も出版するなど、順風満帆。   人はそれぞれ才能や財産、地位が違うという意味では、世の中は平等ではないのかもしれません。しかし、太陽の光は万人を照らすように、いつ、どこで転機が来るのか分からないものです。ロンドンのドーランさんもおそらくお金持ちになりたくて、犬を描き続けていたわけではなかったのでしょう。「何事もやり続ける」ことが成功の女神を呼ぶ魔法の呪文ではないでしょうか。  そして、現在ドーランさんは通りで絵を描くかたわら、路上生活者の支援などを行っているそうです。イギリスは慈善の精神が社会に行きわたっています。慈善行為は小学校の頃から推奨され、女の子がケーキを焼いて、その売上金を寄付したりするのは日常の光景です。   日本でも貧困の連鎖問題を「自己責任論」で安易に片付けている傾向があります。そうではなく、そうせざるを得なくなった社会的な原因を探り、社会的な包摂が今、もっとも必要となっているのではないでしょうか。 鳥の種類によっては孵化する時に、自力で卵の殻を内側からつんつんとつつきますが、親鳥が外からつついて、ようやくひよこが生まれることもあるそうです。 自らの力を発揮させるためには本人の努力だけではなく、周囲からの支えも大きな要因となっています。 持てるものが持たざるものに与えるという行動が社会に良き循環をつくるきっかけとなります。自ら太陽になることで、善意の輪が次々と希望の輪となり広がります。 ドーランさんも今は、きっと誰かの太陽になっているに違いありません。

The sun shines upon all alike.

英国流「お・も・て・な・し」 (2014.6.18)

ロンドンの地を初めて踏みしめたのは新婚旅行の時でした。記念に伝統的なイギリス料理の店で食事をしました。ダイニングインテリアも英国そのもので、夢心地のような空間でした。ここで、何よりも驚いたのは店のウェイターさんのことでした。 テーブルの食器のセッティングは通常右利きの人を想定したものです。前菜を終え、次の料理が運ばれる前にフォークやナイフの位置がさりげなく調整されました。なぜなら主人は左利きだからです。その「おもてなし」の心は料理の美味しさを更に引き立て、心が温まる至福のひと時でした。 英国人と言えば、山高帽子に傘やスティック。スマートにレディーをエスコートし、どんな時でも「Lady First」という紳士のイメージがあります。そして、駅の階段などで重い荷物を持っている女性に手を貸したり、電車の中で女性に席を譲ったりすることもしばしば紳士的な香りが漂ってきます。 そしてイギリスの友人宅に招かれた時の自家製ケーキや若々しい香りがするダージリン、暖かい会話、あの日のあの味は今でも心に沁みるメモリーとなりました。 東京オリンピック招致の時に滝川クリステルさんの「おもてなし」という言葉は一世を風靡しました。この「おもてなし」とはどのような心と行動を意味するのでしょう。 優しい心遣い、謙虚な態度、助け合いの精神・・・、ともすれば現代社会において多くのストレスと戦う日々、熱い涙を誘うような出来事を見る中で、私達はこの心と行動をどこかに忘れてしまいがちです。 人が人を大切にし、一期一会の出会いだから一瞬一瞬を大事に、人を思いやる心や「おもてなし」の心を、日本を担う未来の子ども達に伝え、大切にして行きたいと感じています。

Love makes the world go round.

チェスターフィールドに学ぶ〜賢者の知恵 (2014.5.31)


18世紀のイギリスにおいて政治家であり、教養家でもあるフィリップ・チェスターフィールド卿が、欧州に旅を出た息子に宛てた紳士の生き方についての手紙があります。

“今日の「一分」を笑う人間は、明日の「一秒」に泣く。”

お金を貯める事ができていても、時間を貯めておくことはできないのです。私たち人類に与えられたもっとも平等な贈り物であると同時に、永遠の課題でもあります。 小学校の時に、クラスの中でいつも私と1位を争っているライバルがいました。彼女は体が弱くしばしば学校を休んでいました。6年生の夏、彼女は学校を休んで暫く復帰した時に、私に遅れた科目を教えてと頼みました。しかし私はライバルである彼女に教えるべきかどうか悩みました。その躊躇は私にとって後に取り返しの付かないことになってしまったのです。何故なら、彼女はその時白血病を患っており秋に亡くなりました。小学生の私にとってあまりにも重い出来事でした。一分一秒を必死に生きようと、勉強していた彼女の姿は永遠に忘れられません。

写真 やりたいことが見つからず悩んだり、またやりたいことが多過ぎて悩んだりしているうちに時間は静かに、待たずに、迷わず過ぎて行きます。「今日の一分を笑う人間は、明日の一秒に泣く」という言葉には、チェスターフィールド自身が、未来を創る今という時間を無駄にせず、自分自身の生き方にも反映してきたのでしょう。 毎日が忙しいと感じている人はきっと多いと思います。家の掃除もしたい、友達との付き合いも無視したくない、時間がないからついつい後伸ばししてしまいがちです。しかし、本当に忙しいのでしょうか。時間のやりくりは出来ているのでしょうか。 全ては私たちの一念です。 今、この時をどう生きるのか、これからの人生を決めるとのチェスターフィールドの教えから、今、ここで、置かれた場所で、出来ることを一歩踏み出しませんか?

 そうです、You have more time than you think.

(写真はオックスフォードシャーの風景 平成24年5月 会員撮影)