「ううっ・・・・・・・!」
「気分はどうだ?」
「あんた・・・・・・、一体何を・・・・・?」
一体何をされたのだろう?強く鋭い衝撃を、丁度子宮の辺りに感じた。
だが痛みもなく、まして死にそうな気配も今のところは無い。
ジャギが何をしたのか、が不思議に思うのも仕方のない事だった。
「今、お前の身体にある経絡秘孔の一つを突いた。」
「経絡秘孔・・・・・?」
「手短に言えばツボだ。俺の拳法は、この経絡秘孔を突いて相手の身体を内部から破壊する暗殺拳、北斗神拳だ。」
「北斗・・・・・、神拳・・・・・・・」
そんな恐ろしい拳法が、この世に存在したのか。
道理で敵わない筈だ。そんな拳法の心得がある男だったのだから。
妙な所で納得したは、小さく笑って言った。
「・・・・・じゃあ、その『内部から破壊』ってやつは、いつ来る訳?まだ何ともないんだけど。」
「来ねえな。」
「え?」
「残念ながら、俺はお前を殺す秘孔は突いてねえ。突いたのは『獄絶媚』という秘孔。まあ、こいつはこいつで、ある意味死ぬより辛いかも知らねえな。」
「え・・・・・・!?あ・・・・・・」
ジャギの言葉を図りかねている内に、はそれが何かを身をもって知った気がした。
「熱い・・・・・・、腹が・・・・・・・」
「クックッ、効いてきたようだな。」
「あんた・・・・・・、一体あたしに何を・・・・・!?」
「お前に突いた秘孔、これはな。女の本能を極限まで高める秘孔だ。突かれたが最後、どんなに貞操観念の強い女でも、男が欲しくて欲しくて仕方がなくなる。」
ジャギはさも愉しそうに、飄々と言ってのけた。
それにしても、昔頭に叩き込まれた奥義書が、こんな所で役立つとは思わなかった。
北斗神拳は一子相伝、いつの世も後継者が必ず望まれる。
だが、この世に並ぶもののない最強の暗殺拳を体得する人間が多く出来る事を神が許さないのか、
或いは非情な宿命のみを見据えて、人間としての幸せにわざと背を向ける伝承者が多かったのか、
代々の北斗神拳伝承者には直系の世継ぎを授かる者が、それ以前にその世継ぎを産む女を得る者が少なかった。
故に、養子を迎えたり伝承者争いに破れた者の子に跡を継がせる者が目立ったのだが、
伝承者に選ばれ、『才ある』とされた者の実子が一番である事には違いない。
この秘孔は、そんな問題を打破すべく編み出された秘孔だ。
この秘孔を突かれた女は激しい飢餓にも似た劣情に苛まれ、たとえ純潔の処女であろうと、飢えを満たす為に自ら男に飛び掛りさえする。
もしそれを拒み、そのまま捨て置けば、女は狂い死にする。
男の精を胎内に受けるしか、女が救われる術はないのだ。
つまり、女の命を盾にして、伝承者に世継ぎを作る事を強要する、野蛮な術である。
獄絶媚を突かれた女を褥に侍らせると、妻を娶るつもりのない者でも、大抵は女の命を案じる故、また壮絶なまでの嬌態に当てられる故に、求められるまま抱いてしまう。
それは如何に自己に厳しい伝承者であろうとも、いや、そんな人物こそ例外はなかったらしい。
ただ、余りにも女の尊厳と命を軽んじている行いであり、また、その秘孔を悪用して快楽を貪る邪な者も後を絶たなかった為、いつからか禁じ手とされてしまったのだが。
「は・・・・・・あ・・・・・・・」
「どうだ、身体が熱くなってきたか?なかなか色っぽいじゃねえか、ククッ。」
「ちきしょ・・・・・・、この野郎・・・・・・!」
「憎まれ口を利くのも、そろそろ辛くなってきただろう?抱いて欲しいか?」
「ふざけんじゃ・・・・・ないよ・・・・・・!」
毅然と拒絶してはいるが、その表情には一片の余裕もない。
上気した頬と、固く閉じた太腿を僅かに摺り合わせている仕草が、獄絶媚の効果を物語っていた。
「ククッ、そのやせ我慢が何処まで続くか楽しみだな。」
「おっ、おい!!離せ、離せよ!!」
暴れるをひょいと肩に担ぎ上げると、ジャギは愉しげに言った。
「懐かねぇ野良猫を飼うには、一度厳しく躾する必要があるからな。お前が誰の物になったのか、じっくり分からせてやる。」
「っ・・・・・の野郎・・・・・!」
「クックック、ハッハハハハ!!」
ジャギは勝利の高笑いを上げると、を担いだまま館に戻っていった。
後にはすっかり手持ち無沙汰になった彼の手下達の、
『ま〜たジャギ様ばっかり・・・・・・。』
という、つまらなさそうな呟きが響いた。
「あっ・・・!」
ドサリと乱暴にベッドに投げ出されたは、のろのろと上半身を起こしてジャギを睨んだ。
「この野郎・・・・・・、あたしに何する気だ!?」
「別に何も。俺はただここに居るだけだ。そしてお前もな。逃げ出す気力なんざ・・・ねえだろう?」
一々こちらの状態を分かった風に言い当てるのは癪に触るが、悔しいけれどジャギの言う通りだった。
下腹部や胸が熱く疼いて力が抜け、何の刺激も受けてはいないのに、己の秘部が時折ひくひくと蠢くのを感じる。
ジャギはから少し離れた場所で椅子に腰を下ろすと、傍らにあった酒の瓶をゆっくりと呷り始めた。
「ククッ、どうだよ?そろそろ堪らなくなって来ただろう?」
「う、うるさい!」
「良いんだぜ、別に。俺が嫌なら自分で処理してもよ。見ててやるからやってみろ。」
「ふっ・・・・・ざけんじゃないよ!」
「おっと。」
腹立ち紛れに、は手近にあった枕をジャギに投げつけた。
だが、ジャギはそれを難なく受け取り、己の後頭部に敷いて、益々リラックスした姿勢で椅子の背凭れに凭れただけだった。
「ちきしょう・・・・・・、今すぐ元に戻しやがれ!!」
「無理だな。一つだけ方法はあるが・・・・・・・」
「何だよ!?」
「俺に抱かれる事だ。今更じゃねえか、簡単だろう?」
「チッ・・・・・!じゃあさっさとしやがれ!」
喧嘩腰に怒鳴り散らしたに、ジャギは肩を揺すって笑った。
「おいおい、勘違いするんじゃねえぜ?俺はこれでも情の深い男なんだ。愛のないセックスに応じる事は出来ねえなあ。」
「ハッ、白々しい!よく言うよ・・・・・・!」
「お前が『俺の女になる』というなら、抱いてやっても良い。だが、お前にその気がないなら・・・・・・・・、このままだ。」
ジャギの囲われ者になる事を承知しなければ、この甘い地獄から抜け出す事は出来ない。
要するにそういう事だ。
「どうだ、その気になったか?ん?」
「フン・・・・・、寝言は寝てから言え・・・・ってんだよ・・・・・。」
だが、まんまとしてやられるのが、今のにはどうしても我慢ならなかった。
は知らなかったのだ。己が突かれた秘孔の何たるかを。
耐えていればそのうち治まると、そう考えたのであった。
「良いだろう。お前が何処まで意地を張り通せるか・・・・・・、ゆっくり見させて貰うぜ。」
の考えが手に取るように分かったジャギは、余裕の態度で高みの見物を始めた。
「あっ・・・・・・、くっ・・・・・・・・・・!」
それから何時間が経過しただろうか。
は相変わらず、ベッドの上でのた打ち回っていた。
治まるどころか増していく一方の疼きを堪えようと太腿を固く閉じ、時折我慢しきれなくなるのか、手は乳房を掴もうとする。
その手をまた慌てて握り締め引っ込める仕草が、ジャギにとっては何とも快感だった。
「あ・・・・・ふッ・・・・・・・・!」
「可哀相になあ。辛いか?」
「へっちゃら・・・・・・だよ・・・・・・、こんなの・・・・・・・」
「ほう、そうかそうか。そりゃ大した精神力だ。だが、その割には随分良い声で啼いてるじゃねえか。何もしてねえのによ。」
「うるっさい・・・・・・・!」
ジャギはゆっくりと椅子から立ち上がり、の側に歩み寄った。
余りに強烈な劣情のせいで、の瞳からは涙すら零れている。
そんな顔に己の中の加虐的な性欲を掻き立てられて、ジャギはの頬をそっと撫でた。
「っ・・・・・!」
「おいおい、こんな事ぐらいでも感じるのか?ククッ、淫乱だな。」
「変態野郎に・・・・・、言われる筋合いは・・・・・ないね・・・・・・」
「ククッ。」
愉快そうに含み笑いをすると、ジャギはの身体を無遠慮に見つめ始めた。
「汗が酷いな。そんなに熱いか?」
「・・・・・・・・」
「ん?濡れてるのは汗のせいだけじゃねえか。」
ジャギは笑いながら、の下半身を凝視した。
枯草色のパンツに包まれた脚の付け根から内股にかけての部分が、他に比べて色濃くなっている。
それが信じられない程溢れ出した蜜で濡れた跡である事は、どう見ても明らかだった。
「こんなに濡れてちゃ気持ち悪いだろう?脱がせてやろうか?え?」
「・・・・・・触るな、この腰抜け野郎・・・・・。」
は朦朧とし始めた意識を振り絞って薄い笑みを浮かべ、なおもジャギを挑発した。
「・・・・・腰抜けたぁ俺の事か?」
「他に・・・・・、誰が・・・・・、居るってんだよ・・・・・」
「フッ・・・・・・・」
ジャギは一瞬沈黙すると、次第に笑い声を上げ始めた。
「・・・・・クッククク、ッハハハハハ!!」
「何が可笑しいんだよ・・・・!?」
「見上げた根性だ。この俺をここまで徹底的にこき下ろした奴は、男でも女でもお前が初めてだ!」
「ハッ・・・・・、だから何だっていう・・・」
「大したアマだぜ、お前。益々気に入った。良いだろう、お前には特別に俺の顔を見せてやる。」
ジャギは緩慢な手付きでヘルメットを掴むと、そのままゆっくりと上に向かって引き上げ始めた。
「俺が何故、こんなヘルメットで顔を隠さなきゃならねぇか・・・・・・・」
今まで見た事のなかった顎が、口元が見える。
「何故、己の名を名乗らねぇか・・・・・・・・・」
鼻柱が僅かに見え、それを挟む頬の片側に、そこに有る筈のない物が見える。
「全部・・・・・・、教えてやろう。」
全てを曝け出したジャギの顔を見て、は大きく目を見開いた。