ANOTHER HEAVEN 3




見た目通りの荒々しい仕草だ。
ジャギの無遠慮な手に身体中を弄られながら、は冷めた頭の片隅でそう思った。
尤も、恋人を抱く時のように優しくされても気味が悪いから、別にこれで構わないが。


「古傷だらけだな。なんて女だ。」
「うるさいよ、文句があるなら下りな。」

そう言って、は自分の上に覆い被さっているジャギの太腿を膝で蹴った。
だが、ジャギは別にを抱く気が失せた訳ではないらしい。
小馬鹿にしたように喉の奥で笑って、の秘部に手を差し入れた。

「いちいち突っかかるな。誰も文句なんか言ってねえだろう。ん?」
「・・・・・・チッ・・・・・」
「男に抱かれてる時に舌打ちたあ、どういう了見だ。少しは色っぽい声ぐらい上げてみろ、ほら・・・・・」

そう言って、ジャギはその無骨な指先での花芽を苛んだ。
その度に、の身体がピクリと跳ねる。
花芽は神経が多く集中する部位なだけに、これは当然の生理的な反応なのだが、ジャギはその様子を大層悦んだ。

「んっ・・・・・・・、っ・・・・・・・」
「クッククク・・・・・・、良いぞ、その調子だ。濡れてきたじゃねえか。オラ、もっと声を出せ。」

ジャギの指は秘裂を潤し始めた蜜を絡め取り、それを塗すようにして花芽を刺激し続ける。
相変わらずヘルメットで顔を覆っている為表情までは分からないが、少なくとも口調は愉しげだ。
そんなジャギが癪に障ったは、見下すような笑みを浮かべて言った。


「フン・・・・、そうして欲しけりゃもっと上手にやりな、このヘタクソ。」
「・・・・・・・言ったな、このアマ・・・・・・」
「ああんッ!」

煽られて腹を立てたジャギは、不意にの両膝を大きく割ると、その中心にいきり立った自身を突き立てた。
まだろくな前戯もない内の交合とあっては、いくら慣れていても身体に多少なりとも負担が掛かる。
我が物顔で体内を犯すジャギの楔に、は眉根を寄せて喘いだ。

「んんっ・・・!あぅっ、くっ・・・・・・・!」
「ヘッ、最初から素直にそうやって啼きゃ良いんだ。」
「んっ!・・・・・ふっふふふ、だったらもっとしっかりやんな。こんな程度じゃ感じやしない・・・・・」
「上等だ。後で泣いて頼んだって止めねえぞ?オラッ!」
「はぅっ!!」

卑猥な音を立てて、楔が最奥を突き上げる。

ここまで来て嫌がるつもりはない。
男は己の欲望を満たす為に女を抱くが、それと同時に女も快楽を貪るのだ。
精々愉しませて貰うというのは、こちらの台詞でもある。
それに気付かない馬鹿な男が多いのには、全く閉口するが。

「アンタは・・・・・、どうだろうね?」
「あん?何がだ?」
「いいや別に・・・・・」

蒸し暑い熱気のせいで上気した頬を綻ばせて、はジャギの裸の肩を力一杯掴んだ。

「ふふっ、ほら・・・・・、もっとしっかり腰振りな。啖呵きるだけきっておいて白けさせるんじゃないよ。」
「・・・・ヘッ、この好き者が。これで・・・・・どうだ!」
「はっ、あぁッ!!あんッ!んッ・・・ふふ、もっとだよ、ほら・・・・!」

ジャギの肩に思い切り爪を食い込ませて、は妖艶に微笑んだ。







「チッ・・・・・、思いっきり爪立てやがって。この野良猫が。」

肩についた何本もの爪痕からは、薄らと血すら滲んでいる。
この程度の傷など傷のうちにも入りはしないが、こんなに無遠慮な女も初めてだ。
とはいえ、女の爪痕は男の勲章であるし、報復はたっぷりと与えてやったから構わないが。

ちりちりと痛む傷に触れて、ジャギはまだベッドに横たわったままのを見た。


「チッ、馬鹿みたいに出しやがって。この種馬が・・・・」

で、秘裂から大量に溢れ出ているジャギの欲望の証を忌々しそうに指で拭っていた。
早々に音を上げられるのも退屈だが、煽れば煽るだけこの男は乗ってきた。
これ程満たしてくれる男は久しぶりだが、それにしても閉口する。

「よっぽど溜まってたんだね、アンタ。」

顔を顰めて指先に絡みついた精液をシーツで拭い、ついでにそれで秘裂をも拭うを、ジャギは嫌そうな顔をして窘めた。

「おい、俺のベッドを汚すな。行儀の悪い女だな。」
「うるさい。誰のモノだと思ってんの?ガタガタ文句つけんじゃないよ。」
「・・・・・ったく、なんてアマだ。呆れるぜ。」
「そりゃどうも。」

全く悪びれないにそれ以上言っても無駄だと悟ったジャギは、諦めて話を変えた。


「別に溜まってたからじゃねえ。俺はこっちの方にも強いんだ。」
「へぇ。『にも』ね。他にも何か強いものがあるっての?」
「当然だ。俺を誰だと思ってる?まさか忘れたなんて言わねえだろうな?」

再びに圧し掛かりながら、ジャギはぞくりとするような視線を向けた。

「あぁ・・・・、何だっけ?何とかの伝承者って言ったっけね?」
「お前の頭は空か?殺すぞ。」
「お生憎。興味のない事はすぐ忘れる方なの。」

しれっと言ってのけるに溜息をついて、ジャギは不愉快そうな声で言った。

「俺は北斗神拳伝承者、ケンシロウだ。いいか、次はねえぞ。次に忘れやがったら本当に殺してやるからな。」
「フン」
「全く可愛げのない女だぜ・・・・・・。まあ良い。それはそうと、お前の名は?」
「名前?」
「まだ訊いてなかっただろう。言え。」
「・・・・・・。」
「フン、、か。なあ・・・・・・・、俺の話に乗らねえか?」
「話?何さ?」
「ここで俺の女になる気はねえか?」
「は?」

訝しそうに訊き返すを抱いたままごろりと寝返りを打って、ジャギは愉快そうに言った。


「俺と相性の合う女は、なかなか居やしねえ。どいつもこいつもすぐに泣き喚いたり気絶したり、終いにゃ自殺までしやがる。退屈でしょうがねえ。その点お前はタフだし、下らない感傷でヒステリー起こしてピーピー言う事もねえ。早い話がお前を気に入った訳だが・・・・どうだ?」

自分の上に跨っているに、ジャギはヘルメットの奥から不敵な笑みを向けた。

このときたら、交合の最中も口汚い言葉で煽るわ罵るわ、気に入らなければ容赦なく殴るわ蹴るわ、正に野良猫と呼ぶに相応しい女だ。
だがその分、満足いくまでその身体を貪れる。
嫌がる女を無理矢理犯すのも一興ではあるが、やはり奔放に乱れて求めてくる女が良い。

それに、魅力的だ。
食わせてやって、危険の及ばないように庇護してやる価値が十分にある。


「私がアンタの女に?」
「そうだ。ここに居れば水も飯も、何も不自由はねえ。どうだ、悪い話じゃねえだろう?」
「ハッ・・・・・、」

『冗談でしょ』と一笑に付しかけたが、はそこで思い留まった。

こんな男に付き合っている暇はないし、その気もない。
仮にこの男が、一国を支配している男だとしてもだ。
自分には、やらなければならない事があるのだから。

だが、問題はそこだ。

今自分は、全くの丸腰状態だ。
持っていた武器類は全て取り上げられて、何処にあるかも分からない。
乗っていた車だって、どうなったか分からない。
そんな状態で再び挑みにいっても、今度こそ確実に死ぬのがオチだ。
自分一人が当たって砕けては意味がない。目的を果たさない事には、死んだって無意味なのだ。

そこへきて、このケンシロウという男。
この男ならば、色々と物を持っているだろう。それを拝借出来るなら、願ってもない事だ。
暫くの間身体を提供していれば、いずれチャンスがやって来る。
この男が自分に気を許して隙が出来た時に、奪うだけ奪って逃げてやれば良い。
その間食うに困る事もないし、確かに良い話だ。

だが、それにはこの男より優位に立つ必要がある。



「確かに悪くはないけどね・・・・・・、どうしようかな?」
「欲しい物なら何だってくれてやるぞ?どうだ?」
「ふふっ・・・・・・・」

思わせぶりに微笑むと、はヘルメットに覆われたジャギの顔に唇を寄せて、わざと甘い声で囁いた。

「・・・・・・・考えておくよ。」
「おいおい、勘違いして貰っちゃ困るぜ。言っておくがな、俺がこう言ったって事は、お前に選択権はねえんだ。」
「勘違いして貰っちゃ困るのはこっちの方だよ。あたしみたいな女はなかなか見つからないんだろう?何なら死んでみせようか?死体とヤるのは好きかい?」
「・・・・・チッ、足元見やがって、この雌猫が。」

口説き文句を逆手に取られたジャギは、忌々しそうに吐き捨てた。

「フン、まあ良いだろう。色好い返事を期待してるぜ。」
「じゃあね。おやすみ。」

にんまりと微笑んでローブを纏い、部屋を出て行くを見送って、ジャギはヘルメットを取った。

開け放した窓から吹き込む湿った風が、素肌にべったりと纏わりつく。
葉巻を咥えて火をつけ、紫煙を吹き出してから、ジャギはテーブルの上にあったジンを瓶から呷った。


「フ〜ッ・・・・・、美味え・・・・・」

酒の味が、いつにも増して美味く感じられる。
久しぶりに満足のいくまで女を抱いた後だから、そう感じるのかもしれないが。

いざとなれば、どうとでもして縛り付けられる。
多少武器の扱い方は心得ているようだが、己の前では無力な赤子同然なのだ。
暫く待ってやっても構わない。勿論、厳重な監視下に置いてだが。

「クッククク・・・・・・・」

もう一口酒を喉に流し込んで、ジャギはほくそ笑んだ。




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後書き

ご無沙汰しておりました。久しぶりの更新です。
やっと書いたと思ったら、この有様。猛烈にお下品ざますね(笑)。
いやもう、毒々ドリームという事で、平に許してやって下さい(汗)。