何もかもを真っ黒に塗り潰していた夜の闇が少しずつ薄れ、
やがて白々とした朝ぼらけの空へと移り変わってゆく。
ジャギはそれを見上げてから、の方に視線を落とした。
己の膝を枕にして、粗末なブランケットに包まり、小さく丸まって眠るに。
結局、はあれから起きる事なく、一晩ぐっすりと眠った。
こんな吹き晒しの場所でも、まるで上等のベッドに潜り込んででもいるかのように
気持ち良さそうに熟睡していた。
余程疲れていたのだろう。でなければ、こんな所でこんな風には眠れまい。
しかし、は一体何を思って自分に惚れたのだろうか。
こんな化け物のような醜い顔を見てさえ、何故にここまで身も心も許すのだろうか。
「・・・ん・・・・・」
そんな事を考えていると、の瞼が僅かに震えた。
「・・・・・起きたか。」
ジャギがを見下ろすのと、がジャギの膝の上で目を見開いたのは、ほぼ同時だった。
「え、えぇっ・・・・・!?嘘っ・・・・・・・・!」
状況を察知するや否や、は瞬時に跳ね起き、激しくうろたえた。
「やっ、やだっ、どうしよう、寝ちゃった・・・・・・!
も、申し訳ありません、ケンシロウ様!とんだご無礼を・・・・・!」
は青ざめた顔を伏せて、ジャギに詫びた。
だが、ジャギにしてみれば、詫びられる筋合いはなかった。
当然だ、別に誰に強制された訳でもないのだから。
「見ての通りの平和な朝だ。賊どころか、犬コロ一匹現れなかったから安心しろ。」
「・・・・まさか・・・・・、私の代わりにずっと見張りを・・・・・?」
ジャギはそれに沈黙でもって答えた。
するとは、どういう訳か寂しげな瞳をして呟いた。
「・・・・どうして・・・・・」
「あ?」
「どうして・・・・・、そんなに親切にして下さるのですか?」
「親切、なぁ・・・・・・」
ジャギは、視線を地面に落としたまま、こちらを見ようとしないを眺めた。
普通ならば、優しい声で『お前が好きだからに決まっているだろ』とでも囁いてやれば、
女の方が感激してそれで終わり、になるところだが、はどうもそんな事を期待しているようには見えなかった。
「生憎と、俺ぁ親切心は持ち合わせていねぇんだ。俺は俺のやりてぇ事しかしねぇ。」
少し考えてから、ジャギは仕方なく正直にそう答えた。
確かに、の事は気に入っている。
可愛いとも思うし、優しくしてやりたいとも思う。
だがそれは、愛しているが故ではなかった。
いじらしい娘に恋い慕われて良い気分になっているのは事実だが、
ならば自分もに惚れているかといえば、そうではなかった。
「ほら、行くぞ。来い。」
「あっ・・・・・・・!」
だが、それに何の不都合があろうか。
今この一時を楽しめればそれで良いのだから。
「おいジジイ!居るか!」
を連れて見張り台から下りたその足で、ジャギは長老が今現在住まう小屋の木戸を乱暴に蹴り開けた。
「はっ、はいっ、ななな、何でしょうか・・・・・!?」
今しがた起きたばかりらしい長老が、寝起きの顔を青ざめさせて進み出て来た。
「たった今から、コイツを俺様専属の『世話係』にする。
今後コイツには、他の仕事を一切させるな。」
ジャギはを親指で指し示しながら、長老に向かってそう命令した。
「分かったな?」
「あ・・・・・、は、はい・・・・・・!こ、心得ましてございます・・・・・!」
長老ははじめ唖然としていたが、その意味はすぐに通じたようだった。
「よし。俺達はこれから部屋に戻る。すぐに飯を持って来い。二人分だ、良いな?」
「は、はい、直ちに・・・・・!」
「それから風呂も支度しろ。コイツにもう少しマシな着替えも用意しとけ。」
「はい・・・・・・・!」
更に命令を重ねてから、ジャギはを連れて小屋を出た。
「ケ、ケンシロウ様、あの、私がケンシロウ様専属のお世話係って・・・・・」
それまで只々圧倒されているばかりだったが、そこでようやく口を開いた。
まさかまるで見当もついていないことはないだろうが、しかしの場合、
ちゃんと理解していない恐れが無いとも限らない。
ジャギは一応足を止めて、の方に向き直った。
「お前はこれからずっと、俺の相手だけしてりゃ良いって事だ。
それさえやってりゃ、他の仕事は何一つやらなくて良いんだよ。」
「え・・・・」
「分かんだろ?こういう事だよ。」
ジャギはおもむろに、の乳房を掴んで軽く揉みしだいた。
その途端、は微かな悲鳴を上げて身体を固くする。
その初々しい反応を見て喉の奥で笑いながら、ジャギはを放してやった。
「お前は俺と飲んで食って寝てりゃ良いんだ。そいつがお前の仕事だ。
お前だってまさか不服はねぇだろ?」
形ばかり尋ねながらも、ジャギは不服など無くて当たり前だと決めつけていた。
しかしは居心地が悪そうに顔を曇らせ、否定とも肯定ともつかない不明瞭な声を、
口の中で小さく篭らせた。
昨夜もそうだったが、何かしてやろうとすると、は決まってこんな態度を取る。
喜ばれこそすれ、こんなしょぼくれた顔をされる筋合いはないというのに、
はどうしてこうなのだろうか。
ジャギは苛立ちながら、脅すような低い声音でに迫った。
「お前、いい加減にしろよ?何なんだ、そのはっきりしねぇ態度は?」
「す、済みません・・・・・!」
「恋しい俺様の横で、贅沢三昧出来るんだ。嬉しくねぇのか?
大体、そもそもはお前の方から俺に気があるみてぇな態度・・」
「ケンシロウ様の事は、お慕いしています。ケンシロウ様のお相手をするのが嫌なんじゃないんです。」
はジャギの話を遮り、はっきりとそう断言した。
その瞳に嘘は無かった。
「だったら何が気に入らねぇ?」
「気に・・・・入らないんじゃなくて・・・・・・」
「じゃあ何だ?」
「・・・・ケンシロウ様が、贅沢をなさるのは・・・・、当然です。
この村を救って下さったのですから・・・・・。だけど私は・・・・・・」
「・・・・・・」
「私には、そんな権利はありません・・・・。私のような者が、ご相伴にあずかる訳には・・・・」
は俯いて地面を見つめながら、歯切れの悪い喋り方でポツポツと話した。
卑屈が骨の髄まで染みついているような、そんな情けなく弱々しい姿だった。
そんなに、ジャギは歯に衣を着せず率直に尋ねた。
「・・・・お前、村の厄介モンか?」
「・・・・・・・」
はそれに答えなかったが、その沈黙の意味は明らかに肯定だった。
「フーン・・・・・、なるほどな。厄介モンだから、ロクなものも食わせて貰えねぇで、
誰もが嫌がるような仕事ばっか押しつけられてるって訳だ。」
「・・・・・・・」
「大人しそうなツラして、一体何しでかしたんだ?盗みか?ケンカか?」
「・・・・・・・」
「・・・・・ま、別に何でも良いけどよ。ただお前、それとこれとは別だぞ。」
「え・・・・・・?」
が少しだけ顔を上げた。
傷付いたような、疑わしげな瞳が、怖々とジャギに向けられる。
「お前が良い暮らしを出来る事になったのは、お前が俺に気に入られたからだ。
お前がその身体を使って、俺に取り入ったからだ。」
「そんな、取り入っただなんて・・・」
「そういう事なんだよ。お前に文句つけてくる奴には、そう言って鼻で笑ってやりゃあ良い。
悔しかったらテメェも実力で勝ち取ってみろ、ってな。」
ああ、けど野郎には言うんじゃねぇぞ、俺ぁソッチの趣味はねぇからな、と付け足して、
ジャギは笑った。
するとも、釣られて笑った。
ほんの少し、小さな笑い声を上げただけだが。
「分かったら、権利だの何だのグズグズ泣き言垂れんじゃねぇ。堂々としてろ。
しょぼくれてる暇があったら、俺に飽きられねぇように、俺の気を惹くような事の一つでもしてみろ。
分かったな?」
「・・・・はい。」
「よし。」
少しスッキリした顔で頷くを見て、ジャギも満足して頷いた。
入浴の準備が整えられた館の浴室は、思わず感嘆の溜息が出る程贅沢だった。
バスタブには適温の湯が溢れんばかりに湛えられ、真新しい石鹸まである。
窓から射し込む明るい日の光に、隆々とした肉体も醜く歪んだ素顔も堂々と晒しながら、
ジャギは温かい湯を浴びて気持ちの良さそうな唸り声を上げた。
「さて、んじゃ身体洗って貰うとするか。」
「は、はい・・・・・・」
裸体に布を巻き付けただけのが、恥ずかしそうにモジモジしながらも、
命令に従って手拭いに石鹸を擦り付け始めた。
しかしジャギは、その手を掴んで止めた。
「そうじゃねぇよ。お前の手で直接洗うんだ。」
「え・・・・・・・・」
「こうやってよ、手に石鹸の泡をたっぷりつけて・・・・・、こうやってやるんだ。」
ジャギはの手に石鹸を擦り付けて泡立てると、その手首を掴んで
己の腕を撫でさせた。
「きゃっ・・・・・・・・・!」
「っへへへ、こん位ぇで恥ずかしがってんじゃねぇぞ。
まだまだ色んな事、じっくり教えてやるからな、へっへへへ・・・・・」
機嫌良く笑いながら、ジャギは顔を赤らめているの手首を、更に何度か我が物顔に操った。
「優しーく、丁寧に・・・・、こうやってやるんだ。指の先も、間もな。」
「・・・・・はい・・・・・・・」
操られるがまま、の手がジャギの腕を撫でる。
大きさのまるで違う手と手が絡み合い、束の間固く握り合っては離れる。
その様を、ジャギは満足げにニヤつきながら、は羞恥に息を潜めて、互いに見つめていた。
「分かったか?こうやってやるんだ。」
「は、はい・・・・・・・」
「んじゃ、後は自分でやってみろ。次は胸だ。」
「はい・・・・・・・」
の小さな手が、7つの傷が刻み付けられたジャギの厚い胸板をおずおずと撫で始めた。
ぎこちない手付きで、震えてさえいる。
は男の身体を愛撫する事に慣れていないのだ。
それもその筈、そういった行為に関しては全くの未経験なのだから。
ジャギはまだ、にそこまで教えていなかった。
ゆっくり愉しみたいと、敢えてさせなかったのである。
だがそろそろ頃合い、我慢の限界だった。
「よし、次は腹だ。」
「はい・・・・・・」
の手が、少しだけ下に下がった。
胃の辺りを恐る恐る撫で擦っている。
視線は明後日の方向に逸らされていて、その更に下の方には敢えて目を向けまいとしているようだった。
「もっとだ。もっと下の方。」
「はい・・・・・・」
「もっとだ!」
「は、はいっ・・・・・・・!」
ジャギはの羞恥心をわざと煽るように、その手をどんどん下げさせた。
の手は追い立てられるように下りていき、ジャギの臍を、下腹を撫でて、
やがて黒々とした硬い茂みに触れてビクンと震え、止まった。
「・・・・・もっと下だ。」
が何故手を止めたのか、理由は勿論分かっているが、ジャギは容赦しなかった。
「っ・・・・・・・!」
「もっと下だ。ビビってねぇで触ってみろ。」
「・・・・・は・・・・ぃ・・・・・・・」
命じられるまま、は怖々と手を下げ、そこにそそり立つものにそっと触れた。
指先で触れるだけで精一杯のようだったが、しかしジャギは尚も容赦せずに命じた。
「握ってみろ。」
「・・・・・・・・!」
「優しくだぞ。きつく握り締めんじゃねぇぞ。オラどうした、早くしねぇか。」
「は、はい・・・・・・」
は言われた通り、ジャギの楔をやんわりと握った。
石鹸の泡で滑った温かい手に包み込まれる刺激で、ジャギの口から自然と小さな呻き声が漏れた。
「よし。じゃあ扱いてみろ。」
「し、扱・・・く・・・・・?」
「こうするんだ。」
「ゃっ・・・・・!」
ジャギは無知なの手首をまたぞろ掴んで操り、己の分身を刺激させた。
「こ・・・、こんな・・・・・・・」
手の中で見る見る内に強度と質量を増していく楔に激しく羞恥したのか、
は顔を真っ赤にして泣きそうな声を出した。
「恥ずかしいのか?えぇ?」
含み笑いを浮かべながら訊いてみると、はコクリと頷いた。
それでも、逆らおうとはしない。
ジャギは悦に入りながら、に問いかけた。
「俺が好きか?」
「はい・・・・。好きです、ケンシロウ様・・・・・・」
真っ赤な顔をしながらも、純粋な瞳でそう答える健気なは、何とも愛らしくて悩殺的だった。
背筋に甘い痺れが走り、思わず本気で昂ってしまう。
「・・・・・キスしろ。手ェ止めずにな。」
ジャギは真顔でそう命じた。
するとは、ゆるゆると手を動かしながら、言われた通りジャギの唇に顔を近付けて来た。
「ぁ・・・・んんっ・・・・・・、ふぅっ・・・・・・・!」
その僅かな間も待ち切れず、ジャギはの首を抱き寄せ、
その花のような唇を自分から吸った。
そして、ひとしきり唇と舌を吸ってから、を解放した。
「もういいぜ、手ェ放せ。」
「は、はい・・・・・・・・」
勿論、これで終わりという訳ではなかった。
ジャギはやおら立ち上がると、の眼前に猛り狂う自身を突き付けた。
「きゃぁっ・・・・・・!」
「次はコイツにキスしな。」
そう命じられて、の顔色が一段と赤くなった。
まるで熱でもあるんじゃないかと思う程真っ赤に火照り、耳まで染まってしまっている。
こんな風に見せつけたのも初めてなら、口淫をさせるのも初めてなので、
のこの反応は当たり前だと言えた。
「怖ぇか?」
は涙目になりながら、小さく頷いた。
セックスは何度か経験したが、受け身で居るのと自分から攻めるのとでは、まるで違うのだろう。
ある意味では初夜よりも怯えていそうに見えた。
そんなに、ジャギは自分に出来る限り優しい声音で話し掛けた。
「なぁに、大丈夫だ。慣れてねぇからそう思うだけだ。何も怖ぇこたねぇよ。
やってみりゃあすぐに慣れる。」
「・・・・・は、はい・・・・・・・・」
「ほら、やってみろ。」
促されて、の唇が戦慄きながらもジャギの先端にそっと触れた。
ギュッと目を瞑って、肩を小さく震わせて、羞恥と緊張の極みにいるのが一見して分かる。
足元に跪くをニヤニヤと見下ろしながら、ジャギは更に命じた。
「舐めてみろ。」
「っ・・・・・・・!」
「ビビってんじゃねぇ。もっと舌を突き出すんだ。」
「はっ・・・・ぃ・・・・・・・・!」
はどこまでも従順だった。
真っ赤な顔を羞恥に強張らせながらも、言われる通りにジャギを愛撫する。
可憐なピンク色の舌が己の先端を不器用に舐める様はやけに艶めかしく、
ジャギに激しい劣情を催させた。
「口開けろ・・・・・」
「ぁ・・・・・・、ぅぐっ・・・・・・!」
ジャギはおずおずと開かれたの唇の隙間に、怒張した己を突き込んだ。
「うっ・・・・、えふっ・・・・・・!」
「下手に逃げようとするから苦しいんだ。自分から吸い付け。」
は当然の如く苦しそうに顔を歪めたが、やめてやる気はジャギには無かった。
とはいえ、未熟そのものなにいきなりテクニックを求めるのは無理があるし、
なまじ欲張って、歯を立てられたり本当に吐かれたりするのも困る。
「このままじっとしてろよ。歯ぁ立てんじゃねぇぞ。」
ジャギはの頭を両手でやんわりと抱えて、自ら腰を振り始めた。
健気にも言われた通りにして喉の奥まで受け入れているの苦しげな表情に興奮し、
熱く滑る口内に自身を絞られる刺激に思わず呻き声が漏れる。
ジャギはその快楽を貪るようにして、ひたすらに腰を振り続けた。
「あぁ・・・・・、良いぜ・・・・・・、・・・・・・・」
「うぅっ・・・・・!う、ぐっ・・・・・・・」
「そろそろ出すぞ、このまま受け止めろ・・・・・・・!」
「うぅぅっ・・・・・・!」
ジャギはの頭を股間に押し付けるようにして抱え込み、
猛然と腰を打ちつけて、限界にまで昂った欲望をの口内に解き放った。
「くっ・・・・・!・・・・あぁ・・・・・・」
ジャギはひとしきり放出してすっきりしていたが、の方は、
解放されたというのにまだ苦しげに眉を寄せたままだった。
口元に不自然な力が篭っているのが、見て分かる。
「気持ち悪いか?」
「・・・・・・・」
は少し躊躇ってから、小さく首を振った。
顰めた顔で否定しても嘘だと丸分かりなのだが、悪い気はせず、それどころかむしろ良い気分だった。
余りにも分かり易く無理をしている姿が面白くもあるし、何より
そうまでして必死に尽くそうとするの健気さが、言い様もない程心地良かったのだ。
「そりゃあそうだよなぁ。何たって、恋しい恋しい俺様のモノだもんなぁ。
気持ち悪くなんかねぇよなぁ。」
「うぅ・・・・・・・」
「じゃあ、飲めるよなぁ?」
ジャギは試すような視線をに投げかけた。
するとは、一瞬泣きそうな顔をしたが、すぐに覚悟を決めたように固く目を瞑り、
白い喉を震わせながらジャギの放った欲望を飲み下した。
「ぅ・・・・っ、はぁっ・・・・!はぁっ・・・・・・・!」
その従順な姿に、ジャギは男としてのプライドが満たされるのを感じていた。
本当に、こんな女は初めてだ。
顔を潰される前ですら、こんなにいじらしく慕われた事は無い。
「クッククク・・・・・。良いぞ、。お前は可愛い女だ。
これから俺様がたっぷり可愛がってやるからな・・・・・」
放心したように床にへたり込んでいるの頬を、ジャギは優しく撫でた。