涸沢〜北穂高岳(〜パノラマ・コース)
涸沢テント村より涸沢岳を見上げる

涸沢より涸沢岳を見上げる
◆【山行日時】 2002年8月12〜16日  
◆【コース・タイム】
□8月13日  曇り時々晴れ

上高地・バスターミナル=50分=明神=45分=徳沢=50分=横尾=1時間10分=本谷橋=1時間35分=涸沢
◆【正味歩行時間】
□8月13日 5時間10分

パタゴニア


◆【山行概要】
北穂高小屋創設者である小山義治氏著『穂高を愛して二十年』は、標高3100メートルの北穂山頂直下に小屋を開設するまでのご苦労や、その後小屋とともに生きた彼の記録を綴ったものだ。

なかでも特にリアルなのは”北穂高小屋”の章にある、長さ18尺、重さ35貫の梁を横尾本谷橋から北穂沢を北穂山頂まで持ち上げる場面。

5.5メートル、130キロの長く重い梁を一人で担ぎ、涸沢からさらにあの急な北穂沢を登ったのだから、とうてい人間業とは思えない。

少し短くなったものの、現在も北穂高小屋・新館に使用されている、当時の梁(はり)

一昨年、槍の穂先から穂高連峰が見えた際、
「今度は奥穂に登りたいな〜」
(あ)はこんなことを言っていた。


確かに奥穂は本邦第三の高峰、また、北アルプスでは最高峰だ。

しかし、彼が槍の穂先から見たものは穂高連峰であり決して奥穂ではなかったはず。黒々とした巨大な岩の山塊のうち、どれがそれなのか分かっていなかったに違いない。

槍から穂高連峰を見た時、どれが奥穂で、どれが涸沢岳なのか、ましてや北穂・南峰やジャンダルムにいたっては稜線をたどって行かなければなかなか判断しにくいもの。

すぐにそれとわかるのは、キレットが立ち上がり、直下の今にも崩れ落ちそうな場所に小屋の建つ北穂・北峰とギザギザの北尾根を従え聳え立つ前穂や奥穂のすぐ右にいかにもそれらしい形を見せるロバの耳くらいだろうか。

この際、山座同定する必要性もないのかもしれないので、彼もそうであったように全体を穂高としてとらえればよく、『穂高イコール、その中で最も標高の高い奥穂』と考えるのが、ごく自然なこととしておこう。

(あ)にとっては、4歳の時以来二度目の涸沢。ここからは彼の希望通り奥穂に登るのが常道かもしれないが、元来、あまり人の多いところは好まないので(この時期どこに行っても人だらけだが・・・)、今回、あえて穂高では最も人の多そうな奥穂をメインとせず、
「本来、ここの方がいかにも穂高らしいところ。」

小山氏が担ぎ上げ、今も小屋に使用されている巨大な梁と、そして、あわよくばキレット越しに見える北穂山頂からの雄大な槍を見ることを目的とし、8月12日、神戸・三宮より(あ)と二人、夜行バスに乗った。
梓川と岳沢
梓川と岳沢
上高地からは梓川右岸を歩き、横尾まで来て槍沢との分岐を涸沢方面へ取る。とても立派になった横尾大橋を渡ると、ようやく登山道らしくなる。
横尾にて ’97、同所にて (あ)4歳時 横尾大橋
横尾にて '97、同所にて 横尾大橋
屏風岩の麓を巻くように、ゆるやかにしばらく登ると次第にうしろに蝶ヶ岳〜常念の稜線が望め、蝶槍も見えて来る。

やがて着く本谷橋で大休止。横尾本谷の流れが冷たく気持ちいいものの、ここの上流には涸沢があり、大量の生活廃水も混じるので顔は洗っても、口にするのはこの際ぐっと我慢。
蝶槍を望む 本谷橋
背後に蝶槍付近の稜線 本谷橋
短く急登し、樹林帯を登ると正面には北尾根の向こうに前穂・本峰。Sガレまで来れば正面にガスの切れ間に白出乗越、右に涸沢岳と涸沢槍。

しかし、あいにく奥穂はガスの中。
前穂が見えてくる やがて正面には涸沢岳も見え出す
北尾根と前穂高岳、吊尾根 正面に白出乗越〜涸沢岳〜涸沢槍
石積みの階段状の登山道をしばらく上ると、ようやくテント場、ヒュッテ分岐。

もうひと踏ん張りすれば、そこは涸沢カールの底、穂高の真っ只中だ。

かつては二日かかった涸沢までの道のりも無事、一日で到着。

落ち着いたら、あとは自由時間。
「どこにそんな元気が残ってたんだ?」

ホントに子供は元気なもんだ。すぐそこの雪渓を見つけると岩を伝って一目散。

それもそのはず、彼はここの雪渓で遊ぶのを楽しみにしていたようだ。

こちらはこちらで、遊ぶ姿を遠目で見ていると、当時と何も変わってないようで、タイム・スリップした気分にさせられた。
北穂沢を挟み南稜、東稜 北穂沢と北穂高岳山頂方面
涸沢から見る北穂沢と南稜、東稜、北穂山頂部
北穂沢から北穂山頂を見上げる
(いずれも16日)
しかし、今回はこれで満足していてはいけない。

明日は目の前に聳える北穂に挑戦だ。早々に就寝。

つづき


◆【今回、涸沢〜北穂往復の様子はこちら

◆【今回、涸沢〜屏風のコル〜上高地の様子はこちら

◆【ワン・ポイント・アドバイス】
涸沢までなら小さな子供連れでも何とか行くことができる。

小屋泊まりが苦痛と感じるならレンタルテントもあるので上高地散策だけでなく思い切って足を延ばしてみてはどうだろう。

この時期に見るカールの雪渓は特に印象深く、子供にとっては永く記憶に残るに違いない。


◆【’97、(あ)が4歳時の涸沢山行の様子はこちら

◆【’09、(あ)が17歳になり奥穂高岳山頂を踏んだ家族山行はこちら

G A L L E R Y | 山のアルバム | 信州の山TOPへ