涸沢〜北穂高岳(〜パノラマ・コース) その2
南稜より前穂高岳と北尾根

南稜より見る北尾根、前穂高岳
◆【山行日時】 2002年8月12〜16日  
◆【コース・タイム】
□8月14日  晴れ時々曇り、稜線部はガス

涸沢=1時間35分=鎖場上部、南稜取付き点=1時間10分=北穂高岳

□8月15日  雨、ところが・・夜には晴れ

北穂高岳=2時間30分=涸沢
◆【正味歩行時間】
□     14日 2時間45分

□     15日 2時間30分
パタゴニア



◆【山行概要】
涸沢の朝は早い。
「荘厳」
ここの朝焼けはこの言葉がぴったり。

真っ赤に燃える穂高連峰を見ようと皆に習ったが、あいにく山頂部は見えず、モルゲンロートは「辛うじて見えた」程度だった。

それでも、その時ばかりはテント場の人の動きが止まっている。

早起きはしたものの今日の予定はここから北穂山頂にまで行けばよいので時間的に十分余裕がある。ゆっくりと身支度の後、さらに、涸沢小屋前テラスでコーヒータイムまでとった後、ようやく北穂沢を登る。
涸沢テント村 穂高岳山荘は雲の中
涸沢の朝の様子
急ぐ必要がないのと、いきなりのきつい登りなので、あえてゆっくり歩く。
北穂沢の登り 涸沢を俯瞰
北穂沢の登り 涸沢のテントが小さくなる
北穂沢のお花畑 東稜
お花畑 ゴーロ帯より東稜・ゴジラの背付近
大きな岩のところで左折。お花畑の中をジグザグに高度を稼ぐ。

右手の東稜の稜線と高度を競うように上り、ゴーロ帯を過ぎると、やがて難所の南稜への取り付き点の鎖場だ。

ここまでくれば、右手には東稜が間近になりゴジラの背付近もそれらしく見える。左手のさらに巨大なゴジラ、北尾根はずいぶん低くなり高度を稼いだことも実感できる。
鎖場 はしごを慎重に上がると南稜下部に出る
南稜への取り付き点の鎖場、ハシゴ
下方の鎖に続き上部のハシゴを慎重に上り南稜下部に出ると、さらに展望が開ける。

前穂や奥穂山頂部は時折ガスがかかり全体的に見晴らしが良いとはいえないが、その中にあって北尾根や下方に見える涸沢カールとカラフルなテント、東にのんびり稜線を横たえる常念〜蝶の展望は素晴らしい。

「でも、天候に恵まれれば遠く南アルプス、富士山まで見えるのでちょっと残念かな。」
常念岳〜蝶槍 前穂高岳と北尾根
東稜、屏風の向こう、常念岳〜蝶槍 北尾根と前穂高岳
前穂〜奥穂や涸沢の展望を堪能しながらの登高を・・・、と行きたいところだったが、前穂〜奥穂稜線にかかるガスは晴れないどころか上部に来るにつれ、こちらがガスの中に入ってしまったようで何も見えなくなってしまった。

やがてはガスの中の歩行となり岩場を登りつめると、ようやく傾斜は緩くなりテント場。稜線は間もなくだ。

涸沢岳、奥穂方面への分岐を過ぎると北穂山頂は目の前。(実際は視界に入らず)

最後に松濤岩基部より短く登ると待望の北穂高岳山頂。

折角来たのに・・・、展望皆無。

槍どころか、すぐそこの小屋の屋根も見えないありさま。
北穂高岳山頂 滝谷上部
念願の北穂高岳山頂・・・ 山頂から辛うじて見えた南面、滝谷上部
小屋前のテラスに行っても変わるはずもなく、何も見えず。

天気はさっぱりダメでとても残念だが、ここで考えてみた。
「今回の目的は何だったか?」
展望もさることながら・・・、
「そうだ、そうだ。例の梁を見ることだ。」
景色が見えないからと言って、何も落胆することはない。

こちらはガスって見えないってことは一切ないので、早速、現在の小屋主人、小山義秀氏に尋ねると丁寧に教えてくださった。

それは、一昨年に完成した新館の梁の一部として今も立派に使用されていた。
「ホッホー、これがあの代物か・・・」

実際は、新館建設の際、棟の都合により少し短くなっているらしいが、それでも長さ4メートルほどはあるだろうか。

材木の色の変わり具合と、そこに墨で書かれた文字の重厚さが、見る者に小屋の歴史を語りかけるようだ。

まさに今登って来た道を担いで上がったというのだから、なんとも閉口する以外ない。
今も無くてはならない存在の”例の梁”
例の梁
外はと言うと、次第に雨も降り出し最悪の天候になってしまった。


翌朝になっても雨は止んでいなかった。

晴れていれば展望を楽しみながら涸沢岳から白出乗越を経て奥穂まで・・・、と期待していたが、この天候では到底無理だ。ここに連泊することも視野に入れ登って来たものの、それも考えざるを得なくなってきた。というのも、小屋内に掲示してある天気図を見ると南海上には台風まで発生して最悪。

これでは今日は勿論、明日の天気もどうなることやら・・・。

連泊したあげく明日、雨に降られようものなら雨中を一日で上高地まで下山しなければならないことになってしまい、一人ならまだしも、(あ)のことを思うと、ちょっと無理のようだ。

11時頃まで天候の回復をと粘ってみたが、雨は一向に止む気配がないので今日のうちに、ひとまず涸沢まで下山することにする。

終始、雨は止まず、細心の注意を払いながら雨中の南稜をひたすら下山。
無事、涸沢に着いた。
松濤岩基部 南稜の下り
山頂直下、松濤岩基部 南稜を下る
涸沢へ向け最後の下り テント村
鎖場下方、涸沢が近づく テントの花
南稜下の鎖場で事故もあったようだが、こちらは無事で何よりだった。

日暮れ前には夕陽に照らされて前穂山頂が白く輝いていたが、明日の天気はどうだろう。
夜のテント場
夜のテント場

つづき

◆【今回、上高地〜涸沢の様子はこちら

◆【今回、涸沢〜屏風のコル〜上高地の様子はこちら

◆【お花の一覧はこちら

◆【ワン・ポイント・アドバイス】
涸沢〜北穂間、初心者には当ルートが最も安心だが、それでも鎖場やハシゴがあり、南稜に出てからも岩場が連続するので甘く見るのは禁物。

雨中の降下は特に注意が必要。ここでひとたびスリップすればヘリのお世話になることになる。


◆【’97、(あ)が4歳時の涸沢山行の様子はこちら

◆【’09、(あ)が17歳になり奥穂高岳山頂を踏んだ家族山行はこちら



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