レインジャー・シリーズ
1961年〜1965年、 NASAが打ち上げた9機の月探査機。 1〜5号は打ち上げに失敗した。 6号は月面の硬着陸に成功したが、計器の故障で地球との交信はできなかった。 レインジャー・ミッションの目的は月の弾道軌道に入り、月面に硬着陸するまでに高分解能のテレビ画像を撮り続けて地球に送ることであった。 7〜9号がこの目的を達成した。

レインジャーには、6基のテレビ・ビデコンカメラ、2基の広角カメラおよび4基の狭角カメラが搭載された。7号は1964年7月8日に打ち上げられ、 4000枚の映像を送信してきた。 8号と9号は、それぞれ1965年2月17日と3月21日に打ち上げられ、更に何千枚もの映像を得ることができた。 月面の探査は、 ルナ・オービター・ミッション(1966〜1967)、サーベイヤー・ミッション(1966〜1968)そして有人探査であるアポロ計画(1969〜1972)まで継続され一段落した。

レインジャー・ミッションは、 月の質量を精密に測定するアメリカの最初のプロジェクトでもあった。この測定では、 月の質量は月へ接近していく探査機の変化率から算出する方式がとられた。質量の測定は、引き続きルナ・オービター・ミッション、 サーベイヤー・ミッション、 そしてアポロ計画(8号〜17号)まで継続され、月の質量が地球の8万1302分の1であることがわかった。

レインジャーは、 8角形のフレームの基部(アルミニュウム製で差渡しが1.5m)、 その上に装着された推進機と発電装置の収納部分、更にその上にテレビカメラが取り付けられた円錐形のタワーで構成されており、全体の高さは3.6mになる。 探査機の基部には、 2枚のそれぞれ長さが1.54m、 幅74cmの太陽電池パネルが向かい合って取り付けられている。パネルから離れた基部の一隅には、 お椀型の指向性高利得アンテナが、 そしてタワーの一番上には、円筒形の準全方位低利得アンテナが取り付けられている。 地球との交信は、 これ等2つのアンテナが司る。

推進はヒドラジンを燃料とする一薬エンジンが司り、 高度と方向は12基の窒素ガスエンジンの噴射で制御される。9792枚のシリカ製の太陽電池が貼られたパネルは、200Wの電力の供給能力を持っている。レインジャー・シリーズの総費用は、約1億7000万ドルであった。

レインジャー・ミッションに続いて、ルナ・オービターとサーベイヤーの2つのミッションが打ち上げられた。ルナー・オービター・ミッションは、月面地図の作成及びサーベイヤー・ミッションとアポロ計画の軟着陸地点の調査が主な目的で、NASAが行った初めての系統立った月面の調査であった。 1966年8月10日の1号から1967年8月1日の5号まで、5機の探査機が打ち上げられた。ルナ・オービターは、ほぼ3ヵ月毎に打ち上げられて1800枚に近い月面の写真を撮影した。写真は自動現像されて地球に送られてきた。ルナ・オービターの写真で、月の表側は月の平均半径より約2.6km凹でおり、逆に裏側はほぼ2.6km突き出ていることがわかった。

サーベイヤー・ミッションは、1966年5月30日の1号から1968年1月7日の7号まで打ち上げられ、その中の5機が打ち上げに成功した。このミッションは、アポロ計画の有人宇宙船の軟着陸に備えた工学調査が主な目的であった。 サーベイヤーは月の赤道を周回して、膨大な数の月面のクローズアップ写真を送ってきた。




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