バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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難攻不落の高嶺の花 <2>
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『こちらメラ、現在エリアB!そちらの所在地は?』
インカム越しに聞こえてきた声は若干乱れている。相当の混戦のようだ。答えるより先にドカーンという爆発音がインカム越しではなく遠くの方で聞こえてきた。
「こちらクリス、了解した。ピアーズ共に現在エリアC!敵殲滅後に合流できるか!?」
インカムと同時に直に聞こえるクリスの声は特に乱れてはいない。

アジア某国での大規模バイオテロの鎮静のため、極東支部から応援を要請されたのは昨日のこと。廃墟と化したショッピングモールにはピアーズたちにはお馴染みの、しかしアジア圏内では初めて遭遇するタイプのB.O.W.が縦横無尽に闊歩していた。
政治的理由から大量の部隊投入は不可能だったため、北米支部からはクリスとピアーズ、極東支部からはガイド役を兼ねたメラが派遣された。
たった3人では荷が重いであろう任務もここで鎮圧せねば国境を越えてB.O.W.が流出すれば大惨事となる。
メラと初めて手合せしてから一年が経過していたが、会えば旧知の知人のように二人は軽口を叩き合う。メラは一部隊の隊員からエージェントに昇進しており、その出世のスピードには目を瞠るものがある。
「適性が大人数よりも単独もしくは少数の方がいいと判断されたためよ」
ピアーズの賞賛に軽く笑って答えたメラは、あの頃のガッツが幾分和らぎ、代わって実績に応じた余裕が見て取れた。
もうがむしゃらに突っ走っていた頃の小娘じゃない。一人前のエージェントとしてピアーズと肩を並べて任務をこなせる、そんな風に思えた。

『了解!ちょっと時間がかかるかもしれませんが、後で合流します!』
「了解!こちらピアーズ!こちらの手が空き次第、そちらに向かう!」
インカムに向かって声を張り上げたピアーズをチラリとクリスが見たが、ピアーズは気づかないフリで吹き抜けの階下にいるクリスに集まってくる敵を狙撃する。
あの応戦具合から見て、あちらの敵の方が数は多いのかもしれない。こちらは二人だ。早く片付けてメラの応援に回ろう。
アンチマテリアルライフルを構えて次々に湧く敵を倒して、見える範囲には敵がいないのを確認してピアーズは階下にいるクリスに声をかけた。
「メラさんの応援に回ります!」
『メラ、そちらの状況はどうだ?』
クリスはそれには答えず、インカムでメラに問う。
『あと数体で終わりです!こちらに応援は不要!』
乱れた息と共に勝気な声音で応答がある。階下を覗いているピアーズをクリスが見上げた。
「メラを見くびり過ぎだ。俺たちは俺たちの仕事をするぞ」
苦笑いとも取れる表情でこちらを見上げたクリスの顔が瞬時に引き締まった。
「メラの心配より先にこちらの心配をしないとな…」
そう言いながら目配せした先には異形の姿。ピアーズは舌打ちしながらライフルを構えた。
『了解しました』
スコープから覗くと、醜い姿がズームインされる。照準は眉間の真ん中。
ピアーズは指にかけたトリガーを思い切り引き絞った。


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