バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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09.とっても好きでした
「お前の好きなタイプってどんな?」
「ええ?なに、急に」
突然の質問にシェリーはびっくりした。ジェイクからそんなことを聞かれるとは思ってもみなかった。
「別に。ただの好奇心」
いっそ素っ気なく言い捨てられて、シェリーは笑った。ここで自惚れるほどシェリーは自分に自信があるわけじゃない。
「そうね…優しくて、頼りになって、」
――口は悪いし態度も大きいけど、
「どんなことでも決して諦めないで…」
――いつでも軽口で私を励ましてくれて、
「私を甘やかさない人、かな」
――私の思い上がりを怒ってくれる、そんな人。
言えない想いは全て飲み込んで、当たり障りのないことだけ答える。

「今誰を思い浮かべてた?」
「え?」
「今、誰か思い浮かべながら言ってたろ」
隣を歩くジェイクがチラリとこちらに視線を投げた。どこか不機嫌そうに見える彼にシェリーは慌てた。

――ジェイクを思い浮かべながら言ったことがバレた?

「そんな、気のせいよ。誰も…」
「ヒーローか?」
被せるように言われてポカンとした。誰?
「だから、お前のヒーローのことか?」
ようやく誰のことを言ってるか合点がいった。
「レオン?」
「初恋ってやつか?」
問い詰めるような口調だったジェイクの声音が和らいで、からかう響きが混じった。
――違う、と否定したら、じゃあ誰だ、となるかしら、とぼんやり思った。
口が裂けても本当のことは言えない――まだ。
「そうね。命を賭けて助けてくれた異性だもの。恋してもおかしくないわよね」
それはジェイク相手にも言えること。
「…今でも好きなのか」
聞きようによっては重い口調でジェイクに聞かれて、シェリーは目をぱちくりさせた。
「――とっても好き"でした"」
シェリーはわざとおどけた口調で返した。
レオンのことがとっても好き"でした"。でも今は――

あなたがとっても好き"です"。

言えない言葉は飲み込むしかなくて、シェリーはそれが少し残念だった。


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