バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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10.あなたが好きです
「何で俺がお前を指名してるかわかってんのか?」
「…私の能力を認めてるから?」
「自惚れんな。お前のナニを認めるっつーんだ?寝不足で集中力散漫だわ、人を守るつもりで特攻隊ヨロシク突っ込んで尻拭いさせるし、」
「そ、そこまで言わなくていいじゃない…」
「それでも俺が何でお前を指名して仕事してるかわかってんのか?」
「…マゾだから?」
言った瞬間、ジェイクがシェリーの頭に頭突きをかました。イタイ!とシェリーが悲鳴を上げる。
「てめぇいい度胸してんな?」
「な、なによ、じゃあ何でよ?私より優秀なエージェントはいっぱいいるから、代えてもらったらいいじゃない!レオンとか!」
「うるせぇ!他の男の名前を出すな!俺はお前としか組まねぇぞ!」
「だから何でよ!?」
お互い噛みつく勢いで言い合ってたのに、ふとジェイクの顔が真面目になった。
「お前のフォローは俺じゃなきゃできねぇからだろ」
え、と言われた言葉を理解する間もなく、ジェイクがシェリーの鼻をつまんだ。
「俺のフォローもお前じゃないとできないしな。俺の背中を預けてもらえるのは光栄だろ?」
つままれた鼻が痛くて、シェリーは頭一個半は上にあるジェイクを睨んだ。
「偉そうに!大体ね、口は悪いし、態度はデカいし、無愛想だし、人の話聞かないし!そんなジェイクのパートナーなんて、私くらいしか無理なんだから!」
「おー、そうだな。致命的に鈍くさくて、射撃も下手で、口うるさいお前の相手だって俺くらいしか無理だしな?」
口の端を吊り上げて今度は額を指で弾かれた。
「ちょ!さっきから鼻だのおでこだの、そんな軽々しく小突かないでよ!痛いでしょ!」
「お前もやればいーだろ」
「届くわけないじゃない!」
「そりゃ残念だったな」
ジェイクは口笛を吹きそうな勢いで先を歩いて行く。
「もう!何食べたらそんなに大きく育つのよ!?」
悔しいので背中を拳で叩いてやったら、「あー、もうちょい右」とか言われて更に悔しくなった。
シェリーの力ではジェイクに「痛い」と言わせるのは無理だ。
憎まれ口ばっかり叩いて、こうやっていつもシェリーをからかう。でも――
もう何日も膠着状態が続いて、脱出するのに難儀しているこの状況で、そんな軽口にいつも救われる、なんて絶対に言わない。
背中を叩いた拳を開いて、シェリーはジェイクの背中に掌をつけた。もうひとつ、絶対に言えない言葉がこの掌から伝わればいいのに。

――あなたが好きです――


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