バイオハザード6の二次小説を書いてます。
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バレンタイン協奏曲 <2>
***
「オイ、何だ?」
呼び出しといて何でそんな仏頂面なんだ?とジェイクは睨んだ。
アメリカへシェリーに会いに来た時に突然コイツに呼び出されて、シェリーに追い出されるようにして指定された場所へやってきた。大衆食堂のようなレストランで、来てみたらなぜかコイツはものすごく不機嫌だった。
「…不本意極まりないけど!お前しかいないからな!」
本当に悔しそうに言うツンツン頭のクリスの番犬――ピアーズが下から睨むようにして拳を握っている。
「もうすぐ、アレだろ」
「あ?」
ジェイクは訳がわからずに聞き返す。
「ホラ、あれだ!わかんねぇのかよ?」
「あれでわかるわけねぇだろ!バカか、お前!」
「バカとは何だ!あれっつったらこの時期わかるだろ、フツー!」
噛みつく勢いで言ってくる奴にジェイクは更に噛みつく勢いで言い返す。
「わかるわけねぇだろ!何だ!?」
「…っ、バ、バレンタインだよっ!」
言った勢いのまま顔を赤くしてこちらを睨むピアーズの顔をジェイクはぽかんと見つめた。
「は?バレンタイン?」
何だそれ?
「おま…知らないのか?」
「アメリカの行事はよく知らねぇ。何すんだ?」
「男が女に何か贈るんだよ」
「はぁ?何のために?」
ジェイクは心底意味がわからず聞き返した。
「そういう男女のイベントだよ!意味なんかあるか!あっ、てかお前、何も考えてないのか?」
「何を?そんなイベント今知った」
「…シェリーは待ってんじゃねぇのか?」
え、と虚を突かれたように黙ったジェイクにピアーズはニヤニヤしながら言った。
「女から贈る場合はバラ一本とかでもカッコつくからお手軽だけど、男は大変だぞ?女が喜ぶものっつったら大概高いしな?」
「で、でもシェリーもそんな行事知らないかも…」
ずっと監禁されていたし、付き合うのも自分が初めてのはずだ。
「こんなに世間が浮かれてんのに知らないわけあるか!バカか、てめぇは!」
大体、とピアーズはジェイクに指を突き付けた。
「何もしなかったらシェリーよりクレアさんが尻叩きに来んぞ、きっと」
う、と詰まったジェイクをピアーズは楽しげに見る。
「…な、何を贈ったらいいんだよ?」
形勢が逆転したかのように仏頂面で聞いてきたジェイクにピアーズは一言。
「シェリーが喜ぶもの」
「だから!それを聞いてんだよ!」
「俺が知るか!てめぇの女だろうが!」
何だと、てめぇ、やんのか!と罵声の応酬をしているところをうるせぇぞ!と他の客に一喝された。
首を竦めた二人はお互い目を合わせて、フイと逸らした。
「…てめぇは誰にやんだよ」
「クリスに決まってんだろ」
お互い目を合わせないまましばし考え――口火を切ったのはピアーズだった。
「…俺の経験から言うと、バラの花束とかいいんじゃね?高いけど。初めてのバレンタインだしな、オーソドックスにいけば?」
「…俺は男に贈り物とか経験ないからわかんね」
「てめ!この野郎!」
奴は向かいの席から身を乗り出して胸倉を掴んでくる。
いやいや、マジで言ってんだけど、俺。大体クリスに何を贈ろうって相談を俺にすること自体間違えてるだろ。人選ミスもいいとこだ。
「つーか、クリスとはうまくいってんの?どこまでいってんの」
わざとあけすけに聞いてやると、奴の顔がうっすら赤くなった。
「ど、どこって――」
ジェイクは聞いて後悔した。あんま聞きたくない話題だな、これ。
「いや、いい。答えなくて」
奴も答えたくなかったんだろう、しばし沈黙する。
ジェイクは溜息を吐きながら言った。
「別に無理してすることないんじゃねぇか?贈りたいものが思いつかないくらいなら。クリスも期待してないだろ」
ぐっと詰まるように黙ったピアーズは低く「で、でも」と反論する。
「せっかく距離も縮まったし、喜ぶ顔も見たいし――」
ジェイクは聞きたくなかったとばかりに顔を顰めた。
「だーかーらー、俺がクリスが喜ぶモンとか知るわけねぇだろ」
「てめ、人が恥を忍んで相談してんのに!」
相談されてたのか、俺。てっきり惚気られてんのかと思ったぜ。
「下着とかセオリーじゃね?」
途端に真っ赤になったピアーズにジェイクはげんなりした。
「そ、そんなあからさまなモン贈れるかっ!!」
そこであからさまとくるトコがホントにやめてくれよ、と思う。
「だ、大体なぁ!あんまり真面目にやるもの照れくさいだろ!こうもっと軽い感じの――」
言いかけたピアーズの言葉にジェイクは閃いた。

「――とかどうだ?」

今度はピアーズはジェイクの言葉の意味がわからなかったらしく、ぽかんとした。
ジェイクは我ながらいいアイディアだと意気揚々にその意味をを説明し始めた――


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