バイ/オハザード6の二次小説を書いてます。
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日常のキス
キスされるよりも

目の前のケーキにシェリーは目を輝かせながらフォークを伸ばした。
一口頬張ってその甘さに思わず微笑むと、目の前のジェイクがブラックのコーヒーを啜りながら笑った。
「甘いの好きだよなぁ」
「おいしいじゃない。太るからあんまり食べれないけど」
「太ってないだろ」
「それはセーブしてるから!ジェイクは全然食べないよね。嫌いなの?」
「いや…好きでも嫌いでもねぇけど、確かに食べないな。食べる習慣がないっつーか」
「そうなの?一口食べる?」
そう言ってケーキを刺したフォークを目の前に持っていくと、ジェイクはその手を掴んでシェリーの方へ身を乗り出した。
「いや、俺はこっちでいい」
言いながら顔を近づけられて、キスされる!と思わず目を瞑ると――
唇にくるはずのいつもの柔らかさではなくて、唇の端をざらりとした感触がして思わず目を開けた。既にジェイクの顔は遠のいていて、涼しい顔をして「甘い」と言っている。
「クリームついてたぞ」
そう言われて口の端についたクリームを舐め取られたことを悟ったシェリーの顔が茹る。
こ、これ!普通にキスされるよりよっぽど恥ずかしい――!
「顔真っ赤だぞ?」
ニヤニヤ笑いながら言われて、シェリーは何も言えずに睨むしかなかった。




キスマーク

「ねぇ、ジェイク。キスマークってなあに?」
突然のシェリーからの質問にジェイクは読んでいた本を落としそうになった。
「なに…?」
「この前、職場でね、そんな話をしている人がいてね?」
「どんな話だよ!?」
一体どんな流れでそんな話になる?慌てて聞いてみればシェリーは首を傾げた。
「昨日つけられたから首を出せないって言ってる人がいて、それなに?って聞いたら、誰も教えてくれなくて――」
「聞くな、そんなこと!」
「キスでつけるマークってこと?でも唇つけただけで何かつくわけないもんね?でも首出せないってことは何かついてるってことよね?」
本気で考え込むシェリーにジェイクは眩暈がした。
(誰かこの天然を何とかしてくれ…)
「つーか、お前にはつかねーよ」
キョトンと見返すシェリーにジェイクはニヤリと笑った。
「俺、毎回つけてるけど終わる頃には消えてる。Gのせいだろ。キスした時に強く吸ったら皮膚が鬱血するんだ。それをキスマークっていうんだよ」
「ええ!?つけてるの?あっ!何か身体にキスした時ピリって痛い時ある!それ?」
「そう、それ。やってみせてやろうか?」
ジェイクがシェリーの方へ近寄ると、シェリーは顔を顰めて脱兎の如く逃げ出そうとする。その前に手首を掴んで腕の中に閉じ込める。捕獲成功。
首筋に唇を這わせて吸おうとすると――

「そんなとこにつけても私は見えないでしょ!」

ごもっとも。まぁそれは口実だからどうでもいいんだけど。




甘いキス

シェリーは最後の一粒を前に迷った。
とても高級でとてもおいしいチョコレート店の限定品が手に入ったので、ジェイクと食べようと持って来たのに、ジェイクは甘いものはいらないらしい。コーヒーを淹れて飲んでいる。
「ホントにいらないの?おいしいよ?」
「今は甘い物の気分じゃない」
「そう」
ココアがまぶしてある小粒のチョコを摘まむと、シェリーは口に入れた。
ホントはジェイクと食べたかったのに、素直にそう言えなかった。
実は巷で流行ってるおまじないみたいなジンクスで、そのチョコを恋人と2人で食べると末永く幸せになれる、というのがあって、信じてるわけではないが験担ぎみたいな感覚で買ってきた。でもこの年になってそんなことを言って食べてもらうなんて恥ずかしくてできるわけもなく、結局全部自分で食べてしまった。
口の中にほろ苦い味が広がって、シェリーは肩を落とした。
「どうした?」
シェリーの様子に気づいたのか、ジェイクがこちらを向いた。
「何でもない」
「何だよ、言えよ」
ジェイクはシェリーの喜怒哀楽には敏感だ。そんなに自分はわかりやすいのか、と思うが、こうなったら言うまで放さないだろう、と今までの経験から悟った。
「実は――」
仕方なく吐いたシェリーにジェイクは「じゃあ、俺も食べる」と言った。
「でももう食べちゃったわ」
「まだ間に合うだろ」
言うが早いか、ジェイクがシェリーの口を塞いで舌で舌の上を浚う。
まだ口の中には先ほどのほろ苦さが残っていたので、それがジェイクの舌にも伝わる。
唇を離したジェイクは一言、「甘い」と言って笑った。




キスマークの仕返し

ふと気づくとジェイクがソファでうたた寝をしていた。
シェリーの隣で本を読んでいる途中で、頭を向こう側に預けて首筋が露わになっていた。
寝ているジェイクが珍しくて、しばらく眺めている内にふと思いついた。
この間、キスマークとは何ぞやという話をジェイクとした。
その時にいやというほど赤い印をつけられたので、シェリーは自分もつけれるかなといたずら心が湧いた。
そっと首筋に顔を近づける。起きるかな、と思っていたら意外に目を覚まさなかったので、思い切り吸ってみた。
途端にジェイクの腕が首に巻きついて身体を倒される。
「俺にキスマークつけようたぁ、いい度胸だな。それ相応の覚悟でやってんだろうな?」
「ジェ、ジェイクだってやったじゃない!ていうか、起きてたの!?」
「寝てたけど顔が近づいて来た時点で起きた。何やんのかと思ったら…」
「気づいたんなら起きなさいよ!何で寝たフリするのよ!?」
ソファに押し倒されたままもがくが、腕はびくともしなかった。
「キスしてくれんのかと思って。お前からのキスなんてレアだろ?」
「するわけないでしょ!放して!」
ジェイクは首筋をシェリーの方へ向けて「で?キスマークはついたのかよ?」と聞いた。
シェリーは目の前のジェイクの首筋に赤い痕があるのが見えた。
「ついてる…結構目立つのね。ど、どうしよう。服着ても見えちゃうわ」
職場の人が首を隠したわけがわかった。こんなにハッキリ痕がつくんならそれは困るだろう。みんな見ただけで何の痕かわかるみたいだし。
「別にいい。俺もお前に所有印みたいにつけたいけど無理だしな」
しょ、所有印?そんな目的でつけるの?
目を丸くしてシェリーは驚いた。確かに筋としては通ってる。恋人以外とそんなことはしないだろうから、見えるところにそんなものがあれば決まった誰かがいるサインになる。
でも、見えるところにつけられるのは恥ずかしいんじゃないかと思うのに、ジェイクはしれっと「別にいい」と言った。それって――

――俺はお前のもんだから、それを誰に知られても構わない。

堂々とそう言われてる気がして、シェリーは顔に血が昇った。


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