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君と一緒に歩きたい


私はなぜか,もやもやとした気持ちになった.
夕飯の後も寝付けずに,兄の帰りを一人で待った.

なんで? どうして?
こんなにも,胸が苦しい.

兄に恋人が居るのは,いつものことなのに.
なぜか今,私は兄が,本当の兄ではないことを意識した.
私たちは,兄妹じゃない.
――いとこだ.
同じ家に住んでいるけれど,本当はいとこ同士だ.
だから,だから苦しい…….

夜の十二時がまわった頃に,兄は帰ってきた.
「たっだいま〜,っと,」
陽気に節をつけて,歌うように.
「……うわっ!?」
リビングに入ってきた兄は,ずっとソファーで待っていた私に驚いて悲鳴を上げた.
「失礼な.」
私は,唇を尖らせる.
「びびらせるなよ.もう十二時だぜ,さっさと寝ろよ.」
「お兄ちゃん.」
私は立ち上がって,兄の前で仁王立ちした.
「彼女ができたの?」
なぜか,緊張する.
「は?」
兄は,目を丸くした.
そして私から目を逸らして,頭をぼりぼりとかく.
「なんだよ,唐突に.今までそんなこと,聞かなかっただろ?」
「そうだけど…….」
私は言いよどんだ.





私は,お兄ちゃんが好きなの.
私は,お兄ちゃんのことを知りたいの.
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