ホーム

君と一緒に歩きたい


「私は,お兄ちゃんのことを知りたいの.」
すると兄は,苦笑した.
「何を知りたい?」
その笑顔があまりにも優しくて,どきどきする.
何を知りたい?
何を知りたいのだろう,私は.
「ま,まず!」
勇気を出して,声を出してみる.
「彼女はいますか?」
「いません.」
するりと答えが返ってくる.
私は拍子抜けした.
あ,なんだ.
居ないのか.

「こ,今後,彼女を作る予定は?」
声が,妙な風に裏返った.
「ありません.」
ほっとする.
安心する.
どうして,なぜ?
けれど兄の笑顔は,いつも私を安心させる.
「他に質問はありますか?」
兄が楽しそうに笑う.
「……ありません.」
顔が赤いような気がして,落ち着かない.

私の中で,何かスイッチが入ったみたいだ.
スイッチを押したのは,嘘の告白をした竹村.
けれど回路に電流が流れて,見えたのは兄だった.
「私,子供だった?」
兄の顔を見上げると,兄はすべてを理解しているように感じられた.
「待つさ,いつまでも.」
そうして兄は,私の髪をくしゃっと撫でる.
「だから急いで大人になるな.もう少しだけ,俺のかわいい妹でいろ.」
妹…….
「やだ!」
思わず,反発してしまう.
「そういうところが,まだまだ子供なんだよ!」
兄はますます笑い,さらに私の髪をぐちゃぐちゃにした.





――END(妹)
ホーム
Copyright (c) 2007 Mayuri_Senyoshi All rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-