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君と一緒に歩きたい


兄の裕二(ゆうじ)は,大学生だ.
今日は珍しく,早く帰ってきて,夕飯を家で食べていた.
今日は珍しく,というよりは,ここ最近は毎日帰宅が早い.
多分,付き合っていた彼女と別れたのだろう.

「お兄ちゃん.」
部屋に入ると,兄はギターを弾いていた.
「んー,何ー?」
こちらを見向きもしないで,ギターの弦を押さえている.
私は勝手に,兄が背もたれにしているベッドに腰掛けた.
「ねぇ,お兄ちゃん,聞いてよ.」
「青い海は〜,お前の瞳を思い出させる〜!」
ギターを鳴らして,兄は妙な失恋ソングを歌いだす.
私はとりあえず,竹村に告白されたことを言った.
――兄が真面目に,聞いているかどうか分からないが.
「私は,どうすればいいのかなぁ?」
兄の背中に問いかける.
「好きにすればぁ〜.」
兄の即興曲は続いている.
「好きなら付き合えばいいし,嫌いなら断ればいいし〜!」
なぜか曲は盛り上がり,兄はシャウトする.
「お前の気持ち次第さ,オ〜イエ〜!」





まだ分からない.
私はお兄ちゃんの方が好き.
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