足の指の間が痒くなる心意気

2002年10月4日(金) 「大人の責任

 車で人を迎えに行ったのだが少し早めに着いてしまった。建物の塀ぎわに車を停める。窓の高さくらいまでの塀があり、その上にはフェンスが張ってあった。

 まだ時間がある。本でも読むか、と文庫本を取り出して窓を開け放ち、シートを倒す。と、サイドミラーに赤い何かが映った。…子どもの赤いTシャツ。近所の子どもが塀を登っているのだった。ははぁ、このまま塀づたいにずーっとずーっと行けるトコまで行こうっちゅうハラやな。子どもの時ようやったやった、あはは。

 手元の本に落とした目を次に上げたのは「ゴンッ」という、車に伝わった衝撃音のせいだった。運転席の脇、ホンのすぐ目の前を、さっきの子どもが塀にしがみついてサルのように一歩一歩横ばいになって進んでいる。その子どものぶら下げているカバンがサイドミラーに当たったのだ。結構大きな音がしたのだが、子どもは相変わらず黙々とフェンスと格闘中。
 うーん。ふつう謝るかなんかするやろ? このまま知らんぷりするつもりか? それとも気付いてへんのか? …よ〜っしゃ。ココは一発、大人としてキチンとしつけしたらなアカン。車で良かったけど、この先もし人の頭なんかに当てよったらアカンからな。よしよし。

「ゴルァ」
(うわ。いきなりヤッてもうた。びびりよるやろなぁ…)
案の定、子どもの動きがぴたっと止まり、そろそろとこちらを向いた顔は既に蒼白だった。

「ナンも無しかい? ああ?」
(あっちゃぁ。また言うてもうた。「ぶつけたやろ?謝らなあかんで」って、ニコニコしながら言うつもりやったのに…)
意に反してヤカラ同然のキッツイ言葉を投げつけてしまったワタクシ。子どもの表情がどんどん強ばっていく。いかんいかん。ココはちゃんと説明したらな。

「ボク、カバン当たったの判ってるやろ?」
無言でうなずく子ども。
「ほなら、何か言うことないか?」
無言でうなずく子ども。
「何て言うんや?」
「ごめんなさい…」
「よっしゃ。それでええねん」
それを聞くと子どもはパッと塀から飛び降り、一目散に後ろも見ずに。そう、まるで逃げるように走り去っていった。やっぱりファーストインプレッションが悪すぎたのだ。これでもしワタクシがサングラスでもしてたら泣いてたやろな、あの子ども。なんか、悪いことしてしまったような…あ〜あ。


 深夜になった帰り道、一台のバイクのニイチャンが隣の車線でエンジンを派手に空ぶかしさせながらノロノロの蛇行運転。隣の車線でホンマに良かった…と、そこへ白い無骨なライトバンがバイクの後ろから間を詰めてきた。相変わらずノロノロ運転を続けるバイク。ライトバンがイライラしてる様子が手に取るようにわかる。

 こういう時、モメ事を恐れて迷惑顔で我慢するパターンが多かろうが、このライトバンに乗ってたオッチャン達はちょっと違った。助手席の窓から腕が出てきたかと思うと、バイクに何かぶつけたのだ! それは新聞紙を丸めたヤツみたいで、もちろんそんなのが当たったからと言ってキクわけはない。が、バイクの男はさすがにその迫力に押されたのか、道を譲ったのだ。

 大きくなってからもやっぱり、しつけは必要だ。となると、ワタクシがあの少年に対して行ったことは、決して間違いじゃないはずだ。うん。
 少年よ、ビビる必要はない。キミは少なくとも今日のことで、あんなバイクのニイチャンみたいにはきっとならないだろう。感謝してもらいたいモノだな。うん。

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片言隻句

子ども達を 叱る言葉に 愛あふれ

ゴルァ!しばくど! なめとんか、ゴルァ!
まうまうさま

泣いたところで ゆるしまへん
万屋KENさま


ヤカラの口調じゃ 愛は通じぬ  3太郎
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