足の指の間が痒くなる心意気

2002年10月2日(水) 「珍商売

 先日酔って帰った大阪〜京都の間の普通電車の中。何とも言えないモノを見た。

 座席に腰掛けている、見るからに怪しげな男。タイガースの帽子をまぶかにかぶり、大きめのサングラス。そして手には20センチくらいの何か書かれたダンボール片を持って、しきりに周囲の乗客に何事かをアピールしている模様。


 深夜にもかかわらず電車はそこそこ混んでいる。ワタクシが吊革を持って立ったところは、そのうろんな男からホンの2,3mのところだった。

 ワタクシが見るともなしに男を見ていると、男がコチラに段ボール片を向けた。そこには巧い、とは決して言えない字でこう書かれてあった。


「席、売ります。3,000円」


 男はしきりに周りの客にその「看板」を見せる。酔客や一日の仕事に疲れ果てた乗客相手には、もしかしたら…の一発を秘めた新商売なのではないか? 果たして彼の目論見はみごと通用するのだろうか?
 大阪を出て、新大阪に着く。乗客が増え、男の周りの密度も高くなる。男のアピールがひときわ激しくなる。しかし、乗客たちは彼の意に反して全くの無反応だった。

 そこから先の駅はベッドタウンに入っていく。深夜の電車であり、それ以上乗客が増えることはなかったが、まだまだ座れるほどではない。…しかし、徐々に徐々に減り始めた乗客に男は慌てたのであろう。ポケットから極太のマジックを取り出すと「看板」になにやら書き付けた。


「席、売ります。3,000円2,500円」


 こやつはきっとスーパーの鮮魚部か食肉部にでも勤めてたに違いない。その後も駅をひとつ越す度にちょっとずつちょっとずつ値下げを繰り返し、最後には800円まで下げていたがやはり席は売れず、代わりに周囲の客の冷笑と失笑を買っていた。

 そうこうするうちに自分の降りる駅になってしまったので、その哀れな末路を見届けることは出来なかったのだが、今度もし、かの「席売り屋さん」に出会ったならば、勇気を振り絞って(でも、500円くらいに値切り倒して)席を買ってみようと思う。

 そしてその際にこう言ってみようと思う。そしてその時にいったいどういう表情をするか、しかと見届けてみたいと思う。

「領収書、下さい。」

もちろん、「上様」でかまわないんだけど。

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片言隻句

電車にて 座りたいヤツ しゃがみ込み

そこまでしてすら 座りたいのか?  3太郎
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