足の指の間が痒くなる心意気

2002年8月18日(日) 「決断〜日曜日の恋愛論

「先輩…俺、東京へ転勤になりそうなんすよ」
「おお、栄転やんけ。やったやないか」
「ええ…まぁ…」
「ん?どないしたんや?うれしなさそうやなぁ…ああ、アレか。コレやな?」
「先輩、小指立てるんはヤメて下さいよ」
「ははは。すまんすまん。彼女は…公務員やったな…」
「そうなんすよ。俺、どないしたらええんでしょう?」
「どうしたらええって言われてもなぁ。まあ、ほたら、道は3つやな」
「3つ…」
「ひとつはココでこのまま別れる」
「それは…したぁないし、できないっす」
「まあ、そう言うと思た」
「先輩、2つ目は?」
「どちらかが仕事を辞めるか、転職して今すぐ結婚する」
「う〜ん。今はまだ無理っす。お互い仕事に就いたばかりやし。収入の点でも、仕事への慣れもこれからやし」
「まあ、妥当な話やな」」
「最後の3つ目は…やっぱり」
「そう、遠距離恋愛する」
「それしかあらへんかなぁ」
「お前みたいにすぐに決断でけへんタイプは遠距離しかないやろ」
「そうっすよねぇ」
「ただし、はっきりとした目的を持って遠距離せんと、足かせになるばっかりやぞ」
「足かせ…」
「将来は結婚するんか、それともダラダラと無目的に恋愛関係を継続するんか」
「自分的には結婚したいけど…」
「目的さえもてたら距離なんか関係あらへん」
「そうです…よね」
「ほな、ええチャンスやないか。お前の気持ちをぶつけてこい。『今すぐは無理やけどいつか結婚するために、しばらくは遠距離恋愛する』てハッキリ伝えて来い!」
「はい!判りました。胸がすっとしました!がんばります!」

 …そして彼は玉砕しました。仕事と一緒に天秤にかけられて彼のほうが軽かった、というわけです。ただそれは、早いか遅いか、それだけの話だと思うのです。転勤をキッカケに、お互いの本当の気持ちを知ることができたわけですから。逆に実によかったと言うべきではないでしょうか?

 彼も、そして彼女にも現在はもう子どももいて、それぞれの場所で幸せにやっているようです。その現状が彼と彼女にとって最上だ、とは決して言えませんが、決して悪くはなかったと、そう言えなくはないでしょう。もちろんその決断の時には痛みがなかったはずがありません。彼もそうですが、彼女もそれ以上にツラかったことと思います。
 しかし今、二人がそれぞれで手にしているものは、そのツラさを乗り越えただけの幸せであることだけは確かだと思うのです。

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片言隻句

幸せは ふと気づいたら 手のひらに

指の隙間を ひしとふさぐ
朔月さま

グッと握ると 壊れちゃいそう  3太郎
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