春爛漫
それがこんな結果になるとは予想だに出来なかった。
病院の中は、冷暖房が行き届いているのでパジャマとセーターで充分だった。
外は春が来ているとは言え、昼間でもまだ寒いのでおふくろが持ってきてくれていたウインドブルゾンを持って出ることにした。
病院の正面玄関を出て三〇〇m程歩くとその公園に着く、
しかしただの公園ではなかった。小さいが森林公園の相を呈していた。
学校のグランドくらいの広さの森があって、そこに無数の道があって中は、ちょっとした迷路のようになっていた。
そして所々にベンチなどが置いてあり、病院に近いところには患者時折来ているようだったが、
離れていくと、そこにはたいていカップルが座ってイチャイチャしていた。
俺はそんな中、ブルゾンを着て散歩していた。
少し恥ずかしい気分だった。
実は、おふくろが持ってきていたのは、女性用のブルゾンだったのだ。
そのせいで、ちょっとボーイッシュな女の子のように見えてしまっていた。
まるで変態のような気持ちで人がいると人目を逃れるように早足で歩いていった。
出も暫く歩いていると、気疲れと目眩がしてきて、ちょうどあったベンチに腰掛けて休憩を取っていた。
ベンチに座っていると、何人かの青年が前を通ったが、何故かこちらの方をちらちら見ながら過ぎて行った。
暫くすると、花束を抱えた女の子たちが3人来た、よく見てみると彼女らはクラブの後輩だった。
急いで病院に戻ろうとしたが、すでに目前に来ていて帰ることが出来なかった。
その時、彼女らの一人が俺の視線に気が付いて小走りにやってきた。
「大山せんぱ〜い!」
「こんにちわ、お体大丈夫ですか、」
「クラブ女子の代表でお見舞いに来ました〜」
「あ〜、ありがとう!、ここではなんだから病院戻ろうか。」
「は〜い!」
「あれ?、大山先輩、可愛いブルゾン来てますね!」
「とても、よく似合ってますよ!」
「そ〜かい?」
「おふくろが持ってきてくれたんだけど、どうやら女の子用みたいなんだ。」
「でも、ぴったりですね〜、先輩たらっ、赤くなって可愛い〜」
「おい、他の奴らに喋るんじゃないぞ!恥ずかしいんだから。」
「は〜い!」
「それじゃ、病院に戻るか!」
そう言ってベンチをから立ち上がったとたん、お腹の中を何かが流れる感じがして蹌踉めいて彼女に寄りかかってしまった。
「先輩!大丈夫ですか?」
俺は、ほんの数十秒の間、嫌悪感が治まるまで彼女に寄りかかっていた。
「あ〜、もう大丈夫だ、ありがとう!」
そして、俺は病院へと彼女ら3人を連れて歩き出した。
歩き出したのはいいが何故かお尻が暖かいような冷たいような感じがひどくなってきていた。
「先輩!後ろ、血が…出てます。」
「えっ?」
俺は後ろを見るとパジャマのお尻の部分が真っ赤に染まっていた。
「ごめん!」
俺は彼女らを置いて一目散に病院へと走ったのだった。
病室に付くなり俺はブルゾンを脱ぐと着替えのパジャマとパンツとと生理用品を持ってトイレへと駆け込んだ。
そして着替えて病室に戻るとちょうど彼女らの一人だけが病室に来た。
「先輩、本当に大丈夫ですか?」
「後の二人はどうした?」
「帰りました。」
「どうして?」
「だって………」
「んっ?」
「だって………」
「たぶん、気を利かしてくれたんだと思います。」
「えっ?」
「私、先輩のことが好きなんです、先輩のためなら総てをあげてもいいと思ってるんです。」
「ごめん、俺も君のことを可愛いと思っていたよ、でも、もう遅いんだ。」
「何が、遅いんですか?」
「それは………」
「私でできることなら…」
「…………」
そんな態度に業を煮やしたのか、彼女は俺に抱きついてきた。
「先輩、私もう何も聞きません!そのかわり一度だけでいいですから抱いて下さい。」
「…………」
そうして彼女は、徐々に俺をベットへと押し倒せる位置まで押されてしまった。
そして、今まさに押し倒されようとした瞬間、病室の扉をノックする音がした。
「お姉ちゃん!入るわよ!」
そうして、ドアを開け妹が入ってきた。
「あっ、ごめんね、お姉ちゃん!」
「朋美ちゃん、お見舞い来てくれたんだ!」
「ところで、他の二人は?3人でお見舞い行くって聞いてたけど?」
「二人は途中で帰ったの。」
「ねえねえ!お姉ちゃんて誰?」
「大山先輩!」
「…………」
「もしかして、大山先輩、さっきの出血もしかして………」
「ごめんね、お姉ちゃん、私帰るから。」
「夕御飯のおかずと、着替え置いておくから。」
「朋美ちゃん、後お願いね!」
「それじゃお姉ちゃん!また明日ねっ!バイバイ!」
「おい、待てよ良美!」
そして、病室には俺と朋美の二人だけになってしまった。
「まいったなぁ〜」
「悪いね、朋美ちゃん!」
「いいんです、先輩!」
「でも、先輩、本当は………」
「朋美ちゃんの思ってるとおりだよ!」
「そう、俺は女だったんだ!」
「今は、まだ男の部分も残っているけど、後一週間ほどでそれも無くなってしまうんだ。」
「先輩、それでもかまいません!」
「先輩、私をあげます!男だった証として。」
「ありがとう、でも………」
「いいんです、残っている男としての時間を私に下さい。」
「朋美ちゃん!」
「先輩!」
そうして、俺は病室の鍵を掛けると彼女とベットに入ったのだった。
続く