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春爛漫

第四話

作:HIKU


それから二日間は何事も起こらず退屈な入院生活が続いた。

実はあの日の翌朝、婦長さんに

「部屋の鍵は掛けっぱなしにしないように!」

と、注意されてしまいおとなしくしていたのだった。

躰の方も相も変わらずだったが、生理が一応終わってほっとしていたのだった。

これで暫くはあの鬱陶しい感覚に煩わされることもないなぁ〜と、ソファーに座り外を眺めていた。

やがて朝の回診時間が来て主治医がやってきた。

「どうかね、美津子君」

「看護婦から、生理が終わったと聞いているが・・・」

俺は、何故か恥ずかしい気持ちになったが、

 「一応、終わったようです。

 痛みも、憂鬱感もなく、それと下血もありません。」

「そうか、それは良かった。

そしたら、後で手術のことについて話があるから、回診が終わったらまた来るよ。」

そういって、主治医は次の病室に向かった。

後は、看護婦がいつもの血圧、脈、体温、食事の量、トイレの回数などをチェックして行った。

 「とうとう、手術かこれで躰だけは完全な女になってしまうんだなぁ〜」

と、また感慨に耽りながら外を眺めていた。

 

それから暫くして、インターホンが鳴った。

「大山さん、第7診察室へお越し下さい。」

何かなと思いながら診察室へ向かった。

診察室にはいると主治医がいた。

「すまんね、ここの方が説明しやすいんでね。」

そういって、主治医は模型を取り出した。

「これは、解るね、男性器と、女性器だ。」

一応女性経験は豊富にあったが、詳しいことは知らなかった。

「それでは、説明しよう、男性器の方はいらないだろうから女性器の方を説明するよ。

まず一番の外側が大陰唇と呼ばれるものだ。

そして内側の部分が小陰唇で、一番前にあるのが陰核、つまりクリトリスだ。

その後ろにあるのが尿道口、オシッコの出るところ、そして後ろが膣口だ。

君の場合は、女性器のこの部分がほとんど男性器化していたんだ。

これからは詳しく検査を行っていくが、簡単に言えば、

余分な男性器を切り取って、女性器を作るだけだがね。

性転換者と違って、君には膣はきちんとあるから、大陰唇と、小陰唇の形成。

それと、尿道口の変更と、神経を集めてきての陰核の形成だね。

多分、2時間くらいは掛かるだろう。

これが、終わると、誰がみても君は完璧な女性になれるよ。

後、手術までの検査だがMRIの検査と麻酔の検査だけだからね。

手術は、3日後の午後から行うからね。

ほかに何か質問はあるかね。」

いきなりの説明で頭が混乱していたが、

 「手術後はどうなるんですか?」

「そうだね、一週間は安静だね。傷口が落ち着くまで1週間は掛かるからね。

オシッコはカテーテルを通しておくから心配はいらないよ。

後は、経過次第だね。

暫くは大変だけど、これからの人生のためだからね。

他に質問がなければ終わるが、後の段取りは看護婦に話して準備しておくからね。」

 「・・・・・・」

「それでは、以上だよ、ご苦労さん。」

そういうと、主治医は、カ.ルテルにいろいろと指示を書き込んでいった。

俺は頭の中が真っ白なまま、

 「有り難うございました。」

とだけ言うと、病室に戻ったのだった。

 

そして次の日、検査が始まった。

まずはMRIからだった。

台に寝かされると、巨大なリングの中へと入っていった。

まず、全身をひととおり検査した後、下半身を念入りに検査しているようだった。

時間的には30分程度だった。

その後は、麻酔の予備検査と、凝血の検査だった。

耳たぶをちょっと切られ一定間隔で濾紙で血を拭き、止まるまでの時間を計っていた。

男から、女になるのだから、もっと色々な検査をするのかと思っていたが、検査はこれで終わりだった。

 

 「後は、手術を待つだけか。」

 

病室へ戻ると、する事もなく退屈な時間を過ごしていたのだった。

 

次の日も、退屈な時を過ごしていたが、また朋美ちゃんがお見舞いに来てくれた。

あの後、どうしたのか気になってはいたのだが・・・、

「先輩、どうですか?」

 「別に、もう退屈で退屈で早く退院したいよ。

 ところで、もう何ともない?」

と、聞くと顔を赤らめながら、

「もう、先輩の意地悪!、」

と言いながら「べー」をする朋美ちゃんだった。

「先輩、退屈なら、もう一度お相手しましょうか?」

そういって、猫なで声で擦り寄ってきた。

 「OK、頼むよ!」

 「今度は手加減しないぞ!朋美ちゃん!」

「先輩こそ、頑張ってくださいね。」

そういって、1ラウンド目を開始したのだった。

朋美ちゃんは、結構タフで、好きならしくて、その上旨いので俺はあっという間にダウンさせられてしまった。

「まだまたですよ、先輩!」

 「おう!、望むところだ!」

そういって、俺は2ラウンド目に挑戦したのだった。

次は、さっきより時間をかけて、俺は頑張った。

そして、3ラウンド、4ラウンドと時間をかけてやっていったのだった。

「もう、先輩弱いですね!

朋美の4戦4勝ですよ、まだ続けます?」

俺は意地になって、「もう一回!」

そういって、オセロをもう一度始めたのだった。

 

つづく