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春爛漫

第二話

作:HIKU


次の日の朝、

 

朝食が運ばれてきた音で起こされたが、やっぱり寝起きの調子はよくなかった。

目の前に置かれた食事を焦点の合っていない目で眺めて、箸を付けることなく「ボー」っとしていたのだった。

やがて「コンコン」と、ドアをたたく音がした。俺はその音でやっと目が覚めたてきたのだった。

俺は取り敢えず「はいー」とだけ返事をした。

入ってきたのはおふくろだった。

「どう?調子は、」

「相変わらず、朝には弱いようね。」と、テーブルを見てため息を付いていた。

「まだ食べてないのね。」

「食べる?入らないのだったら返してくるけど。」

そう言われて俺は朝食に目を通して「いらん!」と言った。

おふくろも「そうね、こんな朝食ではねっ!」そう言って返しに行ったのだった。

「後で、好きなものでも買いに行きなさい。」

そう言って俺に似合わないようなかわいらしい財布を置いた。

「美津夫!どうするか決めたの?」

俺は、頭がまだスッキリとしてはいなかったが、決意を話した。

 「このままでは完全な男にはなれない、けど完全な女の子にはなれる。」

 「だから、おふくろ!女になることに決めたよ!」

「そうね、その方がいいわねっ。」

「今日は、会社昼からにしてあるから、後で先生とお話しするわっ。」

「でも、良く決心したわね。」

 「おふくろ、仕方がないだろ、すでに生理も始まってるんだし!」

「そうそう!生理で思い出したわ、」

「はい!これ、お赤飯持ってきたのよ!」

 「おふくろ、なんで赤飯なんだ?」

「そうね、あんたは知らないわね男だから、」

「女の子はね、初潮を迎えたら赤飯でお祝いするものなの!」

「あんたも、一応女の子なんだからねっ!」

「食べる?」

そう言えば、2年ほど前に食った覚えがあった。それはこう意味だったと事を今知らされたのであった。

 「たべるよ!せっかく持ってきてくれたものだし、それにやっと頭が回ってお腹が空いてきたことだし。」

「そう、良かったわ!」

「あっ、忘れてたわ!色々と入院に必要なものを持ってきていたのよねっ。」

そう言って、おふくろは、持ってきたものを次々とロッカーに入れていった。

その中には、可愛いネグリジェまであった。

俺は、それを見て改めて思い直させられたのだった。

 「そうか、そんな恥ずかしいものを着ることになるんだな!」

 「・・・・・・」

やがて、片づけが終わると、お茶碗に赤飯がよそわれて出てきた。

そして、俺はそれをゆっくりと意味をかみしめなから食べ終えたのだった。

「そうそう、学校には休学届けを出しておかないとね。」

 「休学届け?」

「だって、今のままじゃ、学校には行けないでしょ!」

「女性としての自覚を身につけるのには、少なくとも半年は掛かるわよ!」

「だからね!1年間休学して、もう一度3年生から女の子としてやり直しなさい!」

俺は、複雑な心境だった。

出来たら誰も知らない学校に転校したかったが、そうそう私立の中学校はなかったのだった。

 「仕方がねーな、判ったよ!」

「後、それから名前も変えるけど好きな名前ある?」

 「名前?」

「そう、だって女の子になるんだから、役所に行って戸籍の性別と名前の変更が必要だからね。」

「特に無いのだったら、美津子にするけどいい?」

 「あー、それでいいよ!」

「それじゃ、美津子ちゃん!」

 「・・・・・・」

 「なんだよ!」

「女の子が、そんな言葉遣いしないの!」

 「そんなの、直ぐに変わるわけないだろ!」

「だめよ!意識して考えて喋りなさい!」

「でも、いいわ退院してからゆっくりと仕込んであげるから!」

 「はいはい!わかりましたよ!」

 

そうしているうちに担当医がやってきたのだった。

「おはよう、美津夫君、調子はどうかね?」

「どうするか決めたかね?」

 「はい、俺、女になります。」

「そうか、決めたか、そしたら手術の段取りを決めないといけないな。」

「先生、宜しくお願いします。」

「よし、わかった、任せておきなさい、きれいな女の子にしてあげるからねっ。」

と、何故かにこにこ顔の担当医であった。

「大体だけど退院するまでに1ヶ月は見てください。」

「そんなに掛かるんですか?」

「今、生理中だし、身体の検査をきちんとやってからになるからね。」

「生理が終わって1週間したら手術の予定だな。」

「そして、後3週間の入院と、リハビリが必要だからね。」

「わかりました先生!うちの娘を宜しくお願いします。」

切り替えの早いおふくろであった。

 「もう娘だって・・・・たまんねえな。」

俺も取り敢えず「宜しくお願いします。」とだけ言っておいた。

「そうですわ先生、うちの子の名前〈美津子〉にしたのでよろしくお願いします。」

「そうか、美津子ちゃんか、わかったよ、後でカルテとネームプレート変更させておくから。」

「詳しい手術内容は明日話をするから、お母さん明日もこの時間に来てください。」

「それでは、次の回診がありますので、」そう言って医者は出ていったのだった。

「さてと、美津子、ママは後必要な手続きをしに行って来るから、もう帰るわね。」

「後、必要なものは自分で買いなさい。」

 「わかったよ!」

「それから、夕方には良子を来させるからね!」

 「別にいいよ!」

「何言ってるの、これからは、良子に女の子のことを教えて貰うのだからね。」

 「はいはい!」

「それじゃぁね。」

そう言っておふくろは帰っていった。

 「あーぁー、する事が無くて暇だよなー」

 「そうだ、財布にはいくら入ってんだ?」

 「1・2・3っと、3万か、けっこう入ってるな!」

 「ちょっくら、売店でも覗いてみるか!」

そうして、俺はパジャマ姿で売店に行くことにした。

売店は、けっこう広かった。

俺は、雑誌を数冊とお茶のペットボトルを何本か買って部屋に戻った。

そして、1本を残して後は冷蔵庫にしまうと、いすに腰掛けて雑誌を読みふけっていた。

1時間くらいしてから、看護婦がやってきた。

「えーと、大山 美津子さんだったわねっ。」

「体温を計っていて下さい。」

そう言って体温計を手渡した、そして枕元と、部屋のネームカードを入れ替えていた。

それに書かれた名前を見て、「大山 美津子か、」

俺はため息を付いた。

「ピピッ・ピピッ」っと体温計が鳴った。

「何度?」

俺は、体温計を看護婦に渡した。

「37.0度ねっ」

「次は、血圧よ!」

そう言って血圧計を腕に蒔いてスイッチを入れた。

今のは、電気式だから楽なものだ。

「106の65ね。」

看護婦は、記入を終えると出ていったのだった。

俺は、その後ろ姿にナース服に浮き出ていたブラとショーツのラインを目で追っていたのだった。

やがて昼食が運ばれてきた、食べれるようなおかずはなかった。

俺は、もう一度売店に足を運び、おかずだけを買って部屋に戻り、ご飯とみそ汁とだけを食べトレイを返したのだった。

 「しかし、どうしてこうも病院の食事は不味いんだ!」

 「こんなものを、食べれるやつの気が知れないな!」

 「さて、食うものも食ったし、散歩でもするか!」

 「とっ、その前にトイレトイレ!いちいち面倒だなナプキンを換えるのは、」

 「これから、これが毎月続くのか・・・」

する事を済ませて俺は散歩に出かけたのだった。

 

続く

 


さてさて、これから何が起こるのか?・・・・・