<一年B組、高橋佳一のその日>

 俺は、いつものようにつまらない授業を受けていた。その時間は数学の授業だった。
「おい!山田!」
 担任で数学担当の矢沢が、呆れたように言った。山田は、机にもたれたまま眠っている。クラスの他の連中は、クスクスと笑い出した。
「おい・・・山田・・・」
 山田の後ろの席に座っている中谷が、山田の椅子を突つく。
「・・・ハイ!!・・・」
 突然、山田が立ち上がった。顔には、机にあたっていた部分が、赤くあとを付けている。教室は爆笑の渦になった。
「おまえなあ・・・」
 “ゴリラ”とも言われている矢沢が、呆れて山田を見つめている。山田は、頭を掻きながら笑っている。
「おまえなあ・・・居眠りもいいかげんにしろよ!」
 ゴリラはそれだけで、授業に戻った。でも奴の声には催眠効果があるようだ。
 実は俺も眠い。


<一年B組:中谷 光彦>   <一年B組:山田 明夫>

<一年B組担任・数学科:矢沢 栄介>

<翌 日>