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 「人間が考えだした最もおもしろく最も知的なゲーム」。英国の文豪、サマセット・モームはコントラクトブリッジをこう表現した。なんだか相当難しそうだ。「奥深いのは確かですが初心者でも十分楽しめますよ」と、日本コントラクトブリッジ連盟(東京都新宿区)の普及事業部長。ゲームは4人で行い、向かい合った2人がペアを組み対戦する。ジョーカーを除くトランプ52枚を13枚ずつ配布。持ち札を1枚ずつ順番に出し、4枚の札の強さを競う。Aが最強で以下、数が大きい順となる。自分の札が弱くてもパートナーが強い札を出せぱそのペアが勝ち。13回繰り返して勝利数を争う。ルールはそう複雑ではないのだが、このゲームではだれがどのくらい強い札を持っているか札の行方を探ることが肝心。毎回、持ち札をすべて公開しなければならない人が1人いて、この札が、自分をのぞく残り2人の持ち札を推理する手掛かりとなる。一方、場に出された札は勝負が決まると裏返していくため、記憶力も試される。さらに面白さか深まるのか契約(コントラクト)のルール。各プレーヤーは持ち札の強さをみながら自分たちのペアが13回中何回勝てるかを宣言する。その宣言の内容がまた、持ち札を予測するヒントになる。もっとも達成が難しいと思われる宣言かそのゲームの契約として限定し、宣言をしたペアは達成できなければ負けだ。例えば「9回勝つ」と宣言したのに8回しか勝てなかった場合は、勝負は8勝5敗でも、このペアは宣言を破ったから負けだ。強い札が配られても勝てるとは限らないのがこのゲームの醍醐味だ。パートナーと協力し合って勝ちに行くのだが、正式なゲームの最中は決められた用語以外の会話は禁止。限定的な状況下で戦略を練らなければならない。宣言をうまく操りゲームを楽しむまでには時間がかかるのだが、巧みな心理戦をものにできれば楽しさは倍加する。「初めのうちは会話を自由に楽しんでいい。相手の持ち札を推理しパートナーと意思疎通して勝ちに行く面白さを味わってほしい」と話している。ブリッジはトランプさえあればできるのだが、4人そろわないと始まらない。最初に覚えて置くべきルールやコツもある。まずは専門家に習うのが近道だ。日本コントラクトブリッジ連盟は全国に15のブリッジセンターを持ち、カルチャーセンターでもブリッジ講座を設けているところは多い。公民館や個人が開くブリッジクラブは連盟か把握するだけで全国に百近く。初心者向けの体験教室や入門講座も豊富にある。施設に行けば1人でもペアを決めて始められるし、センターの職員が相手になってくれることもある。ブリッジセンターの場合、所要時間は1回2時間前後。費用は平日で千円程度だ。四谷ブリッジセンター(東京都新宿区)の午後7時からの入門コースに参加していた女性二人は友入同士。昨年12月から習い始めた。多くの他の参加者同様、仕事帰りに立ち寄る。覚えたての「宣言」を駆使してゲーム開始。「どうしよう?」「いや、こっちだな」と苦笑いしながら進んでいく。「パートナーの宣言の意味を推理して」。講師が声をかける。「今はまだ覚えるのに精いっぱい。退職後に世界大会に出るのを目標に続けたい」と語る。東京・五反田のブリッジスタジオに参加する女性は夫の赴任先のシンガポールでブリッジを始めて4年。「運次第のマージャンと違い、ブリッジはどんな札が配られても勝負かわからないのが面白い」と目を輝かす。判断力やコミュニケーションカが養われるため教育現場でも採用され、ブリッジを単位として認める大学か増えている。ブリッジ経験のある高齢者は記憶力が増進するという研究結果もあるほど、頭をフル回転させるゲーム。一生物の楽しみになること請け合いだ。