かがくののおと 8


化学結合 2

  1. p 軌道同士の化学結合

    p 軌道でも,s 軌道の場合と同じように,軌道と軌道が接近すると,2つの原子軌道を基に,2つの異なった軌道に再編成することができる.p 軌道の場合には,原子と原子を結ぶ,結合軸上の重なりと,軸に垂直なp軌道同士の重なりの2種類がある.いずれの場合も,エネルギー準位が2つに別れ,結合性軌道と反結合性軌道になる.

  2. p 軌道の重なり 1

    2つの原子を結ぶ,軸上のp 軌道同士の結合

  3.   
     
      図 8.1 同軸上にある,2つの p 軌道からできる,結合性軌道と反結合性軌道.結合性軌道と反結合性軌道は,同じ軸上に存在するが,エネルギー的には,低エネルギー準位と,高エネルギー準位に分かれる.また,二つの軌道の形をわかりやすくするため,上下に書いてある.

    この結合は,軸対称であるので,σ軌道と呼ばれる.軸対称であるから,この結合で結ばれる,原子と原子は,互いに結合軸で回転することができる.(例 エタン). σ軌道は,有機化合物では,その骨核構造になる.  

     
  4. p 軌道の重なり 2

    2つの原子を結ぶ,軸に垂直な方向上のp 軌道同士の結合

      
     
      図 8.2  二つの原子を結ぶ軸に垂直な,2つの p 軌道からできる,結合性軌道と反結合性軌道.2つの p 軌道は,軸の上と下の2点で重なる.結合性軌道と反結合性軌道は,同じ面上に存在するが,エネルギー的には,低エネルギー準位と,高エネルギー準位に分かれる.また,二つの軌道の形をわかりやすくするため,上下に書いてある.

    この結合は,面対称である.π結合と呼ばれる.軸対称でないので,この結合で結ばれる,原子と原子は,互いに結合軸で回転することができない.(例 エチレン). π結合は,回転できないので,分子の形は固定される.しかし,このことは,DNAに見られる選択制などの機能を発揮するのに貢献している.

     

      
  5. 窒素分子の電子配置

    σ結合とπ結合で構成される,分子の例として,窒素分子と酸素分子を見てみる.いずれも,我々にとってはありふれた物質であるが,化学結合からみると,特殊で特徴的である.

      

      
     
      図 8.3  窒素分子の電子配置
     

     第2周期( n=2 )の3つのp 軌道から,1つのσ軌道と2つのπ軌道ができる.2p 軌道の3個の電子,合計6個を配置すると,1つのσ軌道と2つのπ軌道に,それぞれ,2つづつ電子が入り,3重結合を形成する. 通常,σ軌道は,π軌道より,エネルギー準位は低いが,窒素分子では,これらの軌道のエネルギー準位は逆転している.しかし,π軌道が,より低エネルギー準位にあるため,π軌道が安定になり,窒素分子としては,化学的に不活性となっている.窒素分子は,2つの窒素分子が強固に結合しているので,重合体は見られない.

  6.  
  7. 酸素分子の電子配置     
     
      図 8.4 酸素分子の電子配置
     

     3組の2p 軌道から,1つのσ軌道と2つのπ軌道ができる.2p 軌道の4個の電子,合計8個を配置すると,1つのσ軌道と2つのπ軌道に,それぞれ,2つづつ電子が入り,3重結合を形成する.(だだし,結合次数は,2である.) 残りの2つの電子は,よりエネルギー準位の高い2つのπ*軌道に,1つづつ分かれて入る.これは,フントの規則に従っている.スピンを平衡にした2つの電子を持つことから,酸素分子は常磁性を示す.軌道に1つしか電子が入っていないとき,その電子をラジカルとよぶ.ラジカルは,普通は反応中間体のような,不安定な分子に現れ,反応性が高い.酸素分子はいろんな反応をしやすい.


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Last updated, May 11, 2002.