かがくののおと 5


光のエネルギー

  1. 光とは

  2. 光のエネルギー

    光を粒子(光子)としてみたとき,光子1個のエネルギーと光子の数で扱う.光のエネルギーは,光の振動数(あるいは,波長)であり,光子1個のエネルギーのことを意味する.光の強さ(強度)は,光子の数である.

    光子1個のエネルギーは次式で示される.

         E = h ν

    h は,プランクの定数,6.6262 x 10-34 J s である. νは光の振動数である.光の振動数と波長の関係は,光の速度を c として,

          c = λν

     
  3. 光のスペクトルと色

     電磁波の波長の範囲は,無限に長い波長から,極めて短い波長まである.このうち,我々は,数100 mから数ミリメートルの範囲を電波とよび,それより短い領域を光と普通呼んでいるが,特に厳密に区別できるわけではない.我々の感じる光の色は,このうちの極めて狭い範囲である.色は,人間の目の色素細胞の感じる光の波長によって分類される結果である.通常,380 nm から 780 nm の範囲を可視光線とよび(化学事典,東京化学同人),短波長側から,紫,青,緑,黄色,赤となる.
     木や草の葉の緑色は,葉の葉緑素が,太陽からの光の内,青と赤の領域の光を吸収し,残った光のスペクトルが,緑として我々の目に入った結果である.つまり,木や草は緑色の光を利用していないのである.

  4. 原子と光のエネルギーのやりとり

     原子と光の関係はいくつかあるが,ここでは,光の吸収と発光について考える.(光電効果の一部)

     軌道間のエネルギー差と,そのエネルギーと等しいエネルギーの光 と対応する.原子に,あるエネルギーの光が入射すると,電子はそのエネルギーを吸収し,よりエネルギー準位の高い軌道に移る(遷移).ただし,エネルギーに等しいだけの,軌道がなければ,遷移は起こらない.電子がエネルギーを得て,より高いエネルギー準位に遷移した状態を,励起状態という.

     励起状態にある電子は,通常,10-8 秒 程度の時間で,光を放出して,低いエネルギー状態に移る.電子が低いエネルギー状態にあり,安定しているとき,基底状態という. 放出された光のエネルギーは,電子が移動した軌道間のエネルギーに等しい.これを発光とよぶ.

     原子の発光による光の波長,原子スペクトル,は軌道間のエネルギー差に対応しているので,波長幅の極めて狭い,線スペクトルとなる.

  5. 図 電子遷移と光の吸収,発光      

  6. 選択則

    電子が光とエネルギーをやりとりして,軌道を変えるとき,規則があり,これを,選択則という.選択則は,角運動量量子数と磁気量子数で示される.

    角運動量量子数の差が1となることが重要である.つまり,1s と 2p の間の遷移は,許容であるが,1s と 2s の間の遷移は,禁制である.この規則は,光のスピンが1であることと,軌道の対称性から導かれる.

  7. 炎色反応  (原子スペクトル,花火)

                  
    元素  波長(nm)
     Rb 深赤 795.5, 781.1
     Li 深赤 670.8, 610.8
     K 766.5, 766.9
     Na オレンジ 589.6, 589.0
     Ca 橙赤 554.4
     Ba 513.7, 524.2
     Cs 青紫 455.5, 459.3


参考書 : 細矢 治夫 (著) ,光と物質,大日本図書,1995.ほか多数


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