かがくののおと 4
水素原子の 軌道
水素原子は,陽子 1 コからなる原子核と,原子核の周りに存在する電子 1 コで構成される.
電子は,原子核の周りを, 次の条件を満たして,運動している.
電子の振る舞いを,波の関数に表し,エネルギーについての条件を入れた,微分方程式が,シュレディンガー方程式である.次式は,3次元空間での式であるが,われわれは,この式を解くことはしないで,この式の結果を利用する.
シュレディンガー方程式の解は,水素原子について,厳密な解が得られる.これは,電子が1つしかないからである.
シュレディンガー方程式をみたす解は,沢山得られる.それらは,量子数 (n,l,m )を使って規則的な分類がされる.とりあえず,重要なのは,それらの波動関数から得られる,軌道の三次元的な形とエネルギーを理解することである.
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図 4.2 シュレディンガー方程式をみたす解の一部 | 図 4.3 2p 軌道の重なり.図には示していないが,1s軌道や 2 s 軌道,さらに, 3 s ,3 p, 3 d,...軌道と,重なっている. |
図 4.2 に示す波動関数は,原子核を中心に広がっている.たとえば,2p軌道は,図 4.3 に示すような状態である.p 軌道には,節が1つあるが,電子は両方のフサに存在できる.それぞれの軌道関数は,お互いに直交しており,電子は異なる2つの軌道のあいだを,勝手には行ったり来たりしない.
量子数の名前 | 記号 | 値の範囲 | 備考 |
主量子数 | n | 1,2,3,... | |
角運動量量子数 | l (エル) | 0 <= l <= n-1 | l =0 は s 軌道,l =1 は p 軌道, |
磁気量子数 | m | -l <= m <= +l | |
スピン量子数 | s | -1/2 or +1/2 | スピンのsは,s軌道のsとは関係ない |
シュレディンガー方程式の解は,水素原子について,厳密な解が得られるが,エネルギー準位についても,水素原子の場合のみ,単純な結果がえられる.
図 4.4 水素原子のエネルギー準位.n = ∞ のときに,エネルギー準位は,e = 0 である.n = 1 の場合に,エネルギー準位は最も低くい.水素原子の電子は,この最低の準位である,1 s に入る.n = 2 の場合は,同じエネルギー準位の軌道が4つあり,縮退している.水素原子の場合,s 軌道と p 軌道のエネルギー準位は,同じであるが,水素以外の原子では,エネルギー準位が異なる.
原子核の周りには,電子が入ることのできる軌道が,沢山存在する.水素原子の場合には,電子は,通常,1つであり,沢山ある軌道のうちのどれか1つの軌道に入ることができる.しかし,普通の状態では,最も低いエネルギー準位である,1s 軌道に入っている.この,低い準位にいる状態を,基底状態という.
参考書 : 西本 吉助 (著) ,量子化学のすすめ,化学同人,1983.ほか多数
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