かがくののおと 3
簡単な微分方程式
原子や分子では,原子核のまわりに電子が存在し運動している.電子の運動は,波動方程式という微分方程式であらわされ,これを解くことで,原子や分子の構造がみえてくる.波動方程式を解くことは目標ではないが,波動方程式の意味や解の性質を知っていることは重要である.そのために,簡単な微分方程式をみてみる.
つぎの二つの関数に対して,
y = 2 x + 1
y = 2 x + 3
xについて微分をすると,いずれも同じ結果を与える.
dy / dx = 2
得られた微分係数は,もとの関数の変化率を表す.
見方を変えて,変化率が 2 である関数を求めることにする.この条件を満足する方程式をたてると,
dy / dx = 2
これが,微分方程式である.これを解くために,両辺について,x で積分すると,その解が得られる.
y = 2 x + c
ただし,ここで,c は積分定数である.積分定数の存在は,解がいくつもあることを示唆している.積分定数は,初期条件を与えることで定めることができる.原点を通る直線なら, c = 0 である.
つぎの方程式を解く ( 二回微分が,自分自身で,符号がマイナスの場合 )
d 2y= -y (.gif) dx 2
次式は,微分方程式を満足するので,解の一つである
ここで,初期条件として,x =0 および x = 2p のときに,y = 0とおくと,
y = sin x
もう少し,一般的にした微分方程式とその解は,
となる.これは, x が 0 と 2 p のときに節となる定常波を表す,波の関数である.n は,1,2,3,4...... であり,条件を満たす波が複数存在する.(これがわかると,一次元のシュレディンガー方程式は簡単に解ける.)
原子の数を N とすると,崩壊する速度は,原子の数に比例するので,微分方程式は,
変形し積分する(変数分離法)
dN ∫= -k∫ d t (.gif) N
解は
形を変え,初期条件 t = 0 のとき,N = N0 を入れると,
この方法は,一次反応速度の解法にも適用できる.また,符号を変え,増加するとすると,微生物の増殖モデルに適用できる.
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