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法律講座

 

★ 第1回〜第10回 ★ 第11回〜第20回

第23回  原因において自由な行為

リクエストを受けたんで、今回は「原因において自由な行為」について話をするね。

とはいえ、リクエストていうても、こんな特殊な表現を一般の人が知ったはるわけもなく、元々のリクエストていうか質問は、「覚せい剤の使用で心神喪失状態になって無罪になるのはおかしい、なんとかならないのか?」ていうような内容でした。

で、この質問についてなんやけど、おっしゃることはごもっとも。元々、心神喪失状態や心神耗弱状態で刑を免除したり減刑したりするんは、精神上の病気で善悪の区別や、そもそも自分が一体何をしているのかすらわからへん人の行為について、たとえそれが犯罪であったとしても、そのまま刑罰を科すのはあまりにも酷なのではないか、ていうような考え方から来てる。

例えば、1才や2才の子供がなにか気に入らへんで叩いたり、物を壊したりしたことに対して、暴行罪や器物損害罪を適用するのが許されるのか?てな考え方と元々は同じな訳やね。あるいは、修学旅行なんかで寝ている最中に、寝相が悪くて隣の人の顔を蹴って鼻血を出させたなんていうときにも、傷害罪に問われるていうことになったら、それはやはり厳しいやろう。なので、この制度自体は、特におかしな規定ではないと思う。

もちろん、最近しばしば起こっている精神障害者による殺人事件などで批判の声もあるんやけど、それについても安易に退院させた病院の責任などが問題とされることが多く、刑の減免規定については、あまり問題の声もないと思う。

ただ、だからといって、覚せい剤という元々が法で禁じられている薬物を使って、心神喪失状態や心神耗弱状態になっておきながら犯罪を犯した者についてまで、刑の減免を許すていうのもおかしな話やというのは、非常に説得力のある意見やと思うし、魚もおかしなことやと思う。

そのおかしさ≠ノ対する一つの対策として考えられているのが、冒頭に挙げた「原因において自由な行為」なんやね。これは、

「覚醒剤を打つなど、後で心神喪失(耗弱)状態になるのを分かった上で、あえてそういった状態にして犯罪を犯そうとした者については、たとえ犯行時に心神喪失(耗弱)状態であったとしても、覚せい剤を打ったというその行為によって、後で犯した罪にも問える」

ていうような考え方のことなんやね。まぁ、これについては色々と学説(学者による意見、見解)もわかれるところなんやけど、とりあえず、犯罪を犯そうという意思があったのならば、心神喪失とかで刑を減免する必要はないやろうていう、非常にもっともな理屈であると。

とはいえ、あくまでもこの理論は、犯罪を犯す目的で心神喪失状態を引き起こした場合についてのみ成り立つ理屈で、犯罪を犯す気はなく、単に覚せい剤を打っただけの者が、その結果、心神喪失状態になり、犯罪を犯した場合については成り立たへん理屈なんやね。あくまでも、殺人なら殺人の、傷害なら傷害の、犯罪を犯すための手段として心神喪失状態を利用しようとした場合だけに限られると。

なので、覚せい剤で精神錯乱状態に陥って、無差別に通り魔殺人を引き起こしたような場合には、従来通り。心神喪失状態なら無罪、心神耗弱状態なら、減刑ていうことになる。

魚の個人的な意見としては、覚せい剤(もっと幅広く麻薬でいいけど)については、例えば交通事故なんかによる業務上過失致死傷罪みたいに、あらかじめ、薬物使用時における致死傷罪でも作っておけばいいと思うんやけどね。そもそも、精神錯乱状態になって、なんらかの犯罪を犯すかもしれへん精神状態になるていうのは周知の事実であって、その結果、心神喪失状態で犯罪を犯したとしても、元々注意義務違反があると思うんやけどねぇ。

殺意は認められへんにしても、覚せい剤使用致死罪で無期懲役とかしても、国民から非難の声は上がらへんと思うんやが。

とまぁ、今回は細かい学説についてなんで、わかりにくかったことやと思います。ただ、テーマ自体は共感を呼べるモノやったとも思います。法律ていうのは、別に正義でもなんでもありません。なので、おかしいと思うことについては、おかしいと声を上げていきましょう。そうすれば、民主主義国家である以上は、その意見が通ることも出てきます。では、今回はこんなところで。

2004/09/21

第22回  結婚

今回は、結婚について。ちなみに、法律では結婚という言葉は使わず、「婚姻」という言葉を使うんやけど、まぁ、ここではわかりやすく「結婚」を使って説明すんね。

で、結婚するためには、ご存知の通り、婚姻届ていう書類を出す必要があるねんね。これを出さへん限りは、どれだけ派手な結婚式を挙げようが、何十年一緒に暮らそうが、法的に′牛・してるとは認められへん。この場合は、あくまでも「内縁」ていうものになると。まぁ、最近は内縁でもある程度法的な不利益はないようになりつつあるけど、それでも相続とかのときに余計な手間がかかったりするわけで、その意味では正式な結婚とは区別(差別という人もいるやろけど)≠ウれていると。

ちなみに、「婚約」ていうものは、「結婚の約束」すなわち「将来結婚をしようという契約」ということになり、婚姻とは全く違った「契約」という法律行為になりやす。契約なので、当然、一方的に婚約破棄したりすれば、正当な理由のない契約の解除の申込になるので、損害賠償などといった問題も出てくるので、相手方は泣き寝入りする前に弁護士さんに相談を( ̄m ̄)ノ

さて、話を戻して結婚なんやけど、結婚はお互いに結婚する意志があっても、それだけで好き勝手にできるわけではありやせん。それなりに条件というのがついてきます。

まず、年齢。よく知られているように、男は満18歳、女は満16歳にならへんと結婚できひんねんね。なぜ男女で年齢差があるのかは不明。いわゆるフェミニズムの方は、後でいう再婚禁止期間なんかには噛みつくのに、結婚可能年齢に男女差があるのには文句を言わへんのは不思議不思議。

なお、満18歳以上の男、満16歳以上の女であっても、未成年の間は、その両親の同意がなければ結婚できひんていうことになっていやす。

次に、すでに結婚している人は、離婚しない限りできやせん。俺なんか、一人ともできないのに、二人も三人も独り占めさせてたまるかぁ〜っ、女が減るだろぉ〜っ!!などというモテない男の僻みかどうかはしりやせんが、これを重婚といって、日本では禁止されています。もちろん、女性が重ねて結婚することも禁止されています。イスラム教では、一夫多妻が認められてたりするし、昔の日本も平安時代の物語を読めば、貴族間では一夫多妻が普通やったみたいなんで、必ずしも倫理的に問題があるというわけでもないと思うけど、とりあえず今の日本の法律では禁止されているね。

で、いわゆるフェミニズムの方から男女差別だと抗議されているのが、再婚禁止期間。これは、女性についてのみ、離婚後6ヶ月間は再婚できないという規定なんやね。理由は、再婚してすぐに子供が生まれた場合、その子のお父さんが離婚した夫か再婚した夫かがよくわからないから。今はDNA鑑定でわかるからいいていうのがその人らの主張やけど、わざわざDNA鑑定をさせた上で(そもそも、前夫にDNA鑑定を強制する理屈が成り立つのかていう問題もある)、親子関係の存在確認を訴訟でせなあかんていうデメリットと女性が再婚禁止期間の間、再婚ができないていうデメリットのどちらが大きいのかていうお話になるわけで、今のところは現行の法律が維持されて、再婚の方が制限されるていうことになってます。

なお、この規定はあくまでも子供の父親の推定だけの問題なんで、例えば、夫の生死が3年以上不明(離婚の条件になる)やったことを理由とする離婚の場合には、前夫の子供を受胎してるわけがないので、すぐに再婚できるし、「やっぱり考え直して前夫ともう1回やり直すわ」、といった場合にも、すぐに再婚できます。

最後に、近親婚。直系血族と3親等内の傍系血族同士は結婚できひんていう規定やね。直系血族ていうのは、親子関係の繋がりのこと。ようは、祖父母、父母、本人、子供、孫のつながり(まぁ、曾祖父、曾孫とかも厳密には入るけど)の中では結婚ができひんていうこと。傍系血族ていうのは、間に兄弟が絡む関係で、兄弟同士は傍系血族2親等、叔父と姪、叔母と甥は傍系血族3親等なんで結婚できひんけど、いとこ同士は傍系血族4親等なんで結婚できるということになってます。

なお、養子については、直系間では上と同様にあかんにゃけど、傍系間では何親等でもオッケー。すなわち、養子に入った家の子供(ようは兄弟)とは結婚できるし、養子に入った家の父母の兄弟(ようは叔父さん叔母さん)とも結婚できる。

ちなみに、民法ていうのは、傍系間には甘いくせに直系間には厳しくて、たとえ離婚しても死別しても、血の繋がりがなくても、一度直系の家族関係があったら、もう二度と結婚できひんねんね。例えば、妻(夫)の連れ子と再婚したりとか、養子縁組解消後に当初親子関係のあったものが再婚したりとか、息子の妻(娘の夫)と結婚したりとかはできひん。そやけど傍系関係では、夫(妻)の兄弟(姉妹)と再婚したり、血の繋がりのない連れ子同士は結婚できたりするねんね。

そもそも、近親婚が禁止されているのは、優生学的理由(近親婚やと先天的な障害を持った子供が生まれたり死産になったりしやすい)と倫理的な理由(家族が恋愛感情を持つなんてとんでもない)からなんやけど、直系と傍系の間で、血の繋がりがない場合でも、これだけ違いがあるていうのはチト不思議な気がするねぇ。

では、今回はこんなところで。

2004/01/18

第21回  酒とタバコ

今回は、酒とタバコのお話を。

タバコについては、最近は、健康増進法とか、いわゆるポイ捨て禁止条例なんかができてきてるけど、今回のお話は、昔からある未成年への禁止の法律について。

これらの法律名は、それぞれ「未成年者飲酒禁止法」、「未成年者喫煙禁止法」ていうんやけど、意外に知られてへん事実として、この法律は、飲酒や喫煙をした未成年者を罰するのではなくて、未成年者にお酒やタバコを売った業者や、飲酒や喫煙をしているのを知っていながら止めさせなかった親なんかを罰するためにあるていうことなんやね。

最近は、この法律の適用が厳しくなってきてて、未成年者にタバコやお酒を売ったコンビニの店員や、酒を出したファミレス、外で吸うよりはいいと、わざわざタバコを買い与えた親が摘発されたなんていうニュースがちらほらとあるんやけど、法律の主旨からいうと、それは厳しいわけではなく、当然のことなんやね。

大人はよくて未成年が悪いというのはおかしい、19歳と20歳で一体どれだけ違うんだ、大人には害はないのか、なんていう反論も良くあるんやけど、日本の法律ていうのは、ようは未成年者を頭(精神)が未熟なモノ≠ニ見ていて、一人前な思考能力を持った人間として扱っていないねんね。なので、未成年者の保護≠フために、この法律はあるねん。

まぁ、酒の場合は、健康にいいていう説もあるんやけど、それでも度を超して飲み過ぎたりしたら死ぬこともあるし(急性アルコール中毒)、肝臓を痛める恐れもある。酔っぱらって、自制できずにもめ事を起こすこともある。タバコの場合は、明らかに体に悪いし、ガンや、呼吸器系の病気の最大の要因になる。特に若年からの喫煙は害が大きいていうデータもある。なので、そういった害のあるモノから、未成年者を守らなあかんていうわけやね。

じゃあ、なんで、大人はいいんや、大人は害から守る必要がないんかていうことなんやけど、それの答えは、必要ない≠ェ正解やねん。

昔、コントレオナルドていうお笑いのコンビがいたんやけど、そのネタで、こういうのがあってん(うろ覚えやけど)。

教師 「あなたの息子さんは、タバコを吸っていたので停学になりました」

生徒の親 「タバコぐらい、いーじゃないですか。先生だって、高校生の頃、吸っていたでしょ」

教師 「とんでもない、私はちゃんと、二十歳になってから吸いはじめましたよっ!!」

生徒の親 「二十歳にもなって、タバコ吸い始めるなんて、あなた馬鹿ですか。大人だったら、あんな体に悪いもの吸わないだろうってことで、未成年だけ禁止にしてるんですよっ!!」

実は、このコントが、この法律の趣旨を的確に表してるねん。大人である以上は、自分の体にいいか悪いかわかるべき≠竄オ、その結果の責任もとるべき≠トいうんが、法律の考え方やねん。で、未成年は、たとえ体に悪いと判断でき、別に体が悪くなっても構わへんて考えたとしても、実際に体を悪くしたときに、その責任を取らせることができひんから、強制的に禁止するていうわけやねんね。

いくら未成年者が、自分の体が悪くなってもいい、ガンになってもいいからタバコを吸いたいんや、ていっても、その考えは認められへんねんね。体に悪い以上、大人は未成年者を守らなあかんねん。

管理人は、酒好きなので、お酒には甘いけど、タバコは嫌いなんで、タバコには厳しい解説でやす( ̄m ̄)。

2003/06/15