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第11回 株式会社その1

今回は、株式会社のお話を。

株式会社いうんは、前回書いたように、有限責任社員だけからでできてる会社で、今の日本の代表的な会社の形やねんね。普段良く聞く有名な会社いうんは、まず、そのほとんどが、株式会社やね。

で、前にも書いたように、会社の社員(何回も書いてるけど、いわゆる従業員のことやなくて、出資者のことね)であるには、その会社に出資する必要があるんやけど、株式会社の場合は、それを「株式」を購入することによっておこなうねん。で、「株式」の一番の特徴は、法律で色々と規制はされているんやけど、基本的には、それを売り買いすることができるいうのがあんねんね。

なので、株式会社の社員、これを「株主」ていうんやけど、それが普通は二種類にわかれてきて、一つは、その会社の持ち主として、その会社の利益からお金を儲けようていう、昔からある普通の出資者の人たち。で、もう一つが、株式を売買することによって(ようは、安く買った株式を高く売るていうことね)、その差額を儲けようていう人たち。この後の方の株主を、「投機株主」ていうて、一般的に「株をやる」ていうたら、この投機株主になるていう意味なんやね。

この、株式の売買ていうのも、株式会社の有限責任制度いうのが大きくて、最悪でも、買ったお金が0になるだけやから、比較的安心して、やりとりができるわけなんやね。もっとも、あくまでも比較的いうだけで、実際問題は、0になるどころか、株価が少しでも下がったいうだけで、青い顔をして損を減らそうと四苦八苦するんやけどね(^^;;。

で、この株式の売買ていうんは、どこの会社でも気軽にできるていうわけではなくて、一般的には、株式公開企業ていうのに限られるねん。なんでかというと、株式ていうのは、それを多く持てば持つほど、その会社の経営を好きなようにできるようになるから、普通は、経営者、ようはその会社の株式を多く持ってて、社長もやってるような人(オーナー兼社長やね)は、他の人に株式を渡したがらへんねん。

やので、株式の売買を許すような会社ていうんは、そういったオーナーと社長が分かれてて、誰が株主になってもいーんで、株式を市場で売って(正確には、「発行」して)、広く一般の人からお金を集めようとする大きな会社に限られてくるんやね(もっとも、そういった大きな会社でも、オーナー社長いうんは結構いるけど)。それと同時に、多くの人が売買するんやから、できるだけ倒産の危険の少ない会社に限定して、安心して取り引きさせようていうことで、国や業界団体の方からも色々と厳しい基準をもうけて、うちも市場で株式の売買したいんやわ、いう会社も、そう簡単には、させへんようにしてんにゃね。

あ、ちなみに、株式を発行する会社は、その株式を最初に発行するときだけ関係して、後は市場(取引所)で、株主になりたい人同士が売り買いするという仕組みになってるし。そこで、株が上がっただの下がっただのいう話が出てくんにゃわ。

で、話を戻して、ということで、一般の人でもお金さえあれば(笑)、気軽に株式の売買をできる会社ていうんは、東証一部二部とか、店頭登録、最近では、東証マザーズとか、ナスダックジャパン(この辺りは、会社を辞めてからなんであんまり知識がない(^^;;)なんかで、取引、登録されてる企業に限られるんやね。

ちなみに、日本の大企業の格付けていうんは、一般的には、どの市場に上場、登録されてるかていうのがあって、いわゆる東証(東京証券取引所)一部上場企業ていうんは、バリバリの大会社のお墨付きをもらってるていうことになってる。それと、全くの余談やけど、僕は大学生の頃まで、一部上場企業ていうんは、全部やなくて一部しか上場できひん、小さな会社なんやて思ってた(爆)。二部より上の、一部ていう意味なんやね(^^;;。

もっとも、一部上場神話ていうんも最近は、崩れてきて、倒産する会社もバンバン出てきてるし、少なくとも、格付けの意味はなくなってきたのかも。あ、ちなみに大きな会社やったら、必ず株式公開するかていうたら、そんなこともなくて、さっきも書いたように、オーナー兼社長が、自分の家族と会社を運営したいがために、公開しいひん大企業いうんもあるよ。それに、公開企業でも、さっきちらりと書いたように、大株主で社長ていうんもようけいるし、オーナー(こういう場合は、「創業者一族」なんて言われ方をするね)と社長が別でも、オーナー側の影響力が強い場合いうんも多いし。

じゃ、ここで最後にクイズでも。次の大企業の内、株式公開していない会社は、いくつあるでしょう?当たっても、何もあげへんけど(笑)。あ、ちなみに、会社名は通称ね。

1.関西電力 2.サントリー 3.出光興産 4.日本マクドナルド 5.日本生命 6.セガ 7.任天堂 8.ダイエー 以上

2001/06/24

第12回 株式会社その2

では、株式会社のお話の続きを。

株式会社ていうんは、基本的には、前に書いてた出資者、すなわち株主と、経営者、これを取締役(会)ていうんやけど、この二つに分かれて成り立ってんねんね(厳密には監査役ていうのもあるんやけど、細かい話なんで省略するね)。

で、関係者として、従業員、取引先、借入先(銀行なんかの金融機関)、消費者(お客さん)なんかがあると。

従業員あたりは、実質的には、株式会社を構成してる一部みたいな面もあるけど、原則としては、株式会社の「機関」には含まれへんにゃね。

で、株主と取締役の関係なんやけど、これは、株式会社には株主総会ていうのがあって、株主全員が集まって(実際には一部しか集まらへんけど(笑))会議を開くんやけど、そこで会社を経営するのにふさわしい人を取締役として、選んで、その人たちに会社の経営を任せることになってんねん。

普通は、経営者側が、主に従業員の中から取締役にふさわしいて思う人を選んで、株主側にそれでいいかどうかを問うていう形になるね。

で、取締役に選ばれた経営者側は、会社から報酬を貰う代わりに、会社を儲けさせて、それによって株主を儲けさせると。逆に、会社に損ばっかり与えるような経営をしてたら、こんな奴あかんということで、株主から首を切られると。

ま、ホンマはこれが健全な株式会社のあり方なんやけど、実際は、株主側から経営者側の首を切るていう事は、少ないんやね。少なくとも、今までは少なかってん。というのは、経営者側が、借入先の金融機関や、取引先の会社なんかとお互いの株式の持ち合いをやってて、お互いに、株主総会では、経営者側に対して、あんまりきついこといわへんとこうねて、裏取引みたいなことをしてたからなんやね。

株主総会ていうのは、あくまでも持ってる株式の総数で決まるので、会社単位で持ち合ってる方が、当然個人の株主よりも株式の数が多くて、結局は、それらの馴れ合いのもの同士の決定で、決議されてしまうねん。

やから、今までの取締役ていうのは、本来の会社の持ち主である株主ではなくて、経営者のトップ、すなわち社長の顔色ばかりうかがうような雰囲気になってたんやね。まぁ、最近は、不況の影響で、株式を持ち合うことも少なくなってきたのと、外国人の株主が増えてきて、シビアに経営者に要求することが増えてきたんで、これからは、そう安穏とはしてられへんやろうけど。

で、取締役には、二通りあって、1つは、その会社を代表して最終的な決定を下せる(重要な事項については、取締役会の決議がいるけど)代表取締役と、もう一つは、そういった代表権のない、つまり、その人個人では対外的になんの決定権もないただの取締役ていうのがあるねん。

で、もちろん、代表取締役の方が偉くて、これがいわゆる、社長ていう人になるね。なので、対外的に正式な役職名は、「代表取締役社長○○」ていう形で、契約書なんかには記載されんねん。

通常、代表取締役になるのは、社長と会長、後、副社長ぐらいやと思う。専務あたりになると、微妙。大きい会社やったら、専務でも代表取締役になってることが多いかな。ただ、細かい話なんやけど、商法の規定では、表見代表取締役ていうて、役職の付いた取締役(社長、副社長、専務、常務等)は代表取締役てみなされることになってるんで、そういった役職の人は注意が必要。

ついでに、大まかに取締役の序列を書いておくと(正確な序列は会社によると思うけど、一般的に)、社長>会長(ただし、こっちの方が社長より偉いパターンの方が実際は多いかも)>名誉会長・名誉顧問などの名誉取締役(実際の権限は少ないと思うけど)>副社長(ないことも多い)>専務>常務>肩書きなし(通常平取締役ていう)の順。専務と常務の違いがわかりにくいかもしれへんけど、役職としては、専務の方が上やねん(仕事の差は、僕もようわからへん(笑))。

後、日本の取締役の特徴としては、取締役○○部長ていった、従業員兼務取締役が多いね。つまり、従業員でもあり、経営者でもあるていう、本来の意味からは、ようわからん役職(笑)。なので、最近は、従来の取締役扱いなんやけど、取締役にはしない、執行役員制度ていうのをとってる企業も多くなってきてるね。これやと、確かに、経営者であるとともに従業員でもあるというおかしな役職にはならへんし、取締役会も、少ない人数でスピーディーにおこなえるし。

僕がサラリーマンやってた頃は、意味もなく(笑)、流行やからということで執行役員制度に変更しだした会社が多かったけど、今はどうなんかな?

最後に、前回のクイズの答を。えっと、前回から今回の間に、日本マクドナルドが公開したんで(笑)、現時点での公開会社は、関西電力、日本マクドナルド、セガ、任天堂、ダイエーの5社やね。ちなみに、サントリーと出光興産、それと前には書いてへんけど、竹中工務店を足した3社は、非公開の大企業御三家としてその道では(笑)有名。生命保険会社は、基本的には株式会社ではなく相互会社なんで、公開はしてへんねん。なので、日本生命も×。

2001/08/01

第13回 借金

今回からは、借金のお話を。

一般的に、お金を借りるとこていうたら、会社とかは銀行、個人はサラ金ていうことになるね。

ただ、銀行ていうのは、利子も安いかわりに、借りる条件も厳しいんで、会社によってはなかなか借りられへんところも出てくんねん。そこで、そういった会社相手にお金を貸すんが以前ニュースなんかでも話題になった商工ローンていうとこやねん。あの、目玉売れや腎臓売れで警察から取り調べを受けたんが、そこの最大手やった日栄。

本来は、中小企業向けにリーズナブルな利子でお金を貸すんが望まれてたんやけど、実際はサラ金並の高利に、街金(「まちきん」、市街地に店を構えた小さな貸金業者。半分というか、ほとんどというか、そのまま(笑)ヤーサンor元ヤーサンがやってるようなお店)並の取り立てをやってたみたいやねぇ。

一般的にはサラ金地獄みたいなこと言われてるけど、実のところ、借金のトラブルていうんは個人よりも小さな会社の経営者とかに多いんやね。というのは、個人の場合、サラリーマンにしても主婦にしても、借金が返せへんようになったら、基本的には自己破産すればそれでおしまいやから(あくまでも、テレビでCMやってるような大手のサラ金から借りてる場合やけど。先の街金みたいなややこしいところは、精神的に追い込まれるのでそう簡単にはいかへんよ)。

世間体さえ気にせーへんかったら、別に会社をクビになるわけでもなし、主婦の場合やったらなおさら、その後の生活自体は食べていけへんほどひどくはないと。とりあえず、心さえ入れ替えればなんとかなるねんね。

ところが、経営者の場合は、お金が借りられへんかったら、会社は倒産、次の日からすぐに路頭に迷う羽目になると。なので、どんだけ利子が高くても、とにかく必死でお金を貸してくださいと頼み込まなあかへんねんね。次回にでも説明するけど、法律上の利息ていうんは、大体20%ぐらいまでで、それより高い利息ていうんは、あかん(厳密には難しい)にゃけど、高い利息が嫌なら貸しませんて言われたら困るんで、どんだけ高い利子でも借りて必死で支払うわけなんやね。

それで、当然利息が返せるはずもなく、さらによその街金で借りて、どんどん借金が膨らんでいくと。さらに、場合によっては、街金どうしでネットワークをはって、うちでは貸せへんけどあの店で・・・なんて仲間内でたらい回しにしながら、どんどん身ぐるみはがしてむしり取っていくと。最後は、借金すらできひんような状況になって、ポイ。その時点では家族や友人、親戚にもすでに不義理を重ねてるような状態になってることがほとんどやから、ホンマに誰一人頼ることもできずに、自殺せなどうしようもないようになってると。

ま、こんな風になる前に、とりあえず街金に借金せなあかんような状態になった段階で、無理せず会社を潰して、まだ、友人や親戚を頼れる内に最低限の生活資金を借り集めて、ハローワークから再生することを、これから起業家になろうという人にはお勧めします。

2001/08/20

第14回 借金その2

では、借金のお話の続きを。

お金を借りたら、利子を付けてそのお金を返さなあかへんのは、まぁ、世間の常識やね。もちろん友達同士でとかやったら、そんなことはないんやけど(いや、利子を取ってもえーんやけど(笑)、きっと友達はなくすやろなぁ)、銀行でも、サラ金でも、お金を貸すのを商売として貸してるとこ(つまり、金融業者ね)は、その利子で、儲けるわけやから、利子は必要やと。

いってみれば、金融業者ていうのは、お金を貸して、返してもらうまでの時間≠商品として売ってるようなもんなんやね。もちろん、これは悪いことではなく、逆に、借金ていう制度がなかったら、世の中の会社は、まずは自分の財産から商品を作って売って、利益を出して、その利益の一部から事業を少しだけ拡大して・・・ていうのを延々と繰り返して、徐々にしか、大きくしていけへんし、そもそも、最初の資金がなければ、会社が作れへんようになってしまう。

個人かて、家や車なんかの高い買い物でも、まずはそのお金を少しずつ貯めて、まとまったお金を作ってからでないと、買えへんようになってしまうし、そんな大きなお金でなくても、結婚式なんかが重なってしまうと、月々の生活費がピンチになって、少しだけ借りて、余裕のある月に返すなんていう、柔軟な対応もとれへんようになると。これは、結構、不便やね。

やので、少なくとも、金融業者ていうんは、円滑な経済活動のために必要不可欠なものではあるんやね。ただ、そやからていって、貸し手がなんぼでも好きな利率で貸してもいいていうようになると、それはちと、貸し手と借り手の力関係から不公平になってしまうね。まぁ、資本主義の世の中なんやから、なんぼの利子で貸そうが、勝手やていえば、そうなんやけど、あまりに貸し手側の力が強いと、逆に経済全体に悪影響が出ると。

やので、法律でそれなりに厳しい締め付けが金融業者にはされてて、利息に対する規定が、その中核をしめてるんやね。で、その代表的な法律が、「利息制限法」ていう法律なんやわ。

この法律では、借金の額が10万円未満では、年利20%以内、10万円以上100万円未満では、年利18%以内、100万円未満では、年利15%以内、て、決められてるねん。やので、この利率を超す利息は、「利息制限法」の違反になるねん。

ところが、実はややこしい話があって、利息制限法を超えてても、ある用件を満たしてたら(基本的には、借り手が同意してたら)、別にそれを超える利率で取り立てても、構わへんねんね。あくまでも、借り手が同意してる場合やから、借り手側がこれ以上借金できひんでも構わへんて腹をくくったら、裁判所にいって利息制限法を超える利息は無効にしてもらえるんやけど、これから先もお金を貸してもらわな困るていう人は、文句が言えずに支払い続けなあかへんと。

そこで、法律は強行法規(違反したら、刑事上の罰則をもうけてるということね)として、利率が29.2%を超えたら、刑事沙汰にするぞていう脅しをかけてんねんね。これは出資法ていうので定められてて、1年ぐらい前までは約40%に定められてたんやけど、それから一応下げられてん。

なので、合法的な利率ていうんは、貸金業者からすると、出資法の範囲内、人権派弁護士(笑)からすると、利息制限法の範囲内ていうことになってて、その間の利率をグレーゾーンて言ったりもするねんね。

ま、個人的には、納得いくいかへんは別にして、貸す方と借りる方がそれで契約したら、その利率で返していくのがスジやとは思うけどね。無理な利率やったら、その時点でどれだけ困ってようと借りひんと。だって、借りたら今以上に困るんがわかりきってるんやから。そーゆーのを、自己責任ていうんやと思うんやけどね。

何にしても、お金の貸し借りにはお気をつけくださいませませ。

2001/10/14

第15回 手形

今回からは、手形のお話を。

手形ていっても、普通のサラリーマンやOLさんなんかには関係ないお話かもしれへんにゃけど、僕らみたいな自営業には、切っても切れへん存在やねん。それに、会社でも、経理や営業さんなんかには、結構身近な存在やろね。

基本的に、手形ていうのは、お金の代わりになる券のことをいうんやね。こういう手形や、小切手のようなお金の代わりになる券(正確には、お金に換えるよう請求できる権利を持った券やけど)を「有価証券」ていうねんね。

手形と小切手との違いは、大まかには、手形はお金に換える日が相手から制限される(つまり、もらってすぐに換金できない)のに対して、小切手はもらったらすぐにお金に換えられる(銀行の手続きの関係で、数日待たされるけど)ていう違いがあるんやけど、基本的には、その手形なり、小切手なりを振り出した(手形や小切手に金額なんかの必要なことを書いて、支払ったりすることを「振り出す」ていうねん)会社や個人の信用を元に、お金と同じ様な扱いをするという点では、非常に似てるものなんやね。

なので、通常、法律書なんかでも、手形・小切手法ていう感じでまとめられてることが多いね。ちなみに、この手形・小切手法の略称を「テコギ」ていうんやけど、どーも、これを聞いたら「アコギ」て連想されるねんねぇ(笑)。まー、ある意味、あこぎな人たち暗躍することが多いんで、間違いないんやけど( ̄m ̄)。

で、手形ていうんは、今、説明したように振り出した会社の信用を元に流通してるわけなんで、その信用がない会社は、いくら振り出しても相手に受け取ってもらえないていうことになるし、逆に、信用して受け取っても、結局その手形の支払日に支払ってもらえない(これを「不渡り」ていう)なんていうこともあると。

ちなみに、現在普通の会社の手形の支払い方法ていうんは、その会社の取り引きしてる銀行に「当座預金(とうざよきん)」ていうのを開設して、手形の支払期日までにその当座預金に少なくとも手形支払額分のお金を預け入れて、銀行がその当座預金の中から手形を持ってきた人に支払うていうシステムを取ってるんやね(より正確には、それぞれの会社が取り引きしてる銀行同士がやりとりするんやけど、ま、大雑把にはこんな感じやし)。

法律上は、別に銀行なんて使わへんでもえーんやけど、今の日本の(外国でもそやと思うけど)経済形態からは、手形と銀行ていうんは、切っても切れへん関係にあるんやね。

やので、会社としては、銀行が使えなければ事実上手形が使えず一大事。もしも手形が使えへんかったら、現金払いかツケ払いぐらいしかできひんし、正直、そんな危ない会社なんかにツケ払いなんか認められへんから、結局現金払いしか取り引きしてもらえへん。

ところが、そんなに現金があるんなら、元々、銀行にかてお付き合いしてもらえてるはず。現金がないから、銀行にも相手してもらえへんにゃからね。ということで、結局そんな会社の末路は「倒産」しかないわけなんやね。

で、手形ていうんは、実は、2回不渡りを出すと(厳密には、6ヶ月以内に2回)、銀行取引が停止されてしまうねん。銀行取引が停止されてしまうと、今上で書いたようにまず100%倒産の道を歩むことになるんで、新聞なんかでは、2回目の不渡り手形を出した時点で、事実上の倒産≠した、なんて書かれるね。

などという理由で、商売人にとって手形ていうんは非常に重要なもので、不渡りをなんとか出さへんように必死の金策が日々なされているし、それにつけ込む悪い奴らもようけいると。そこから繰り広げられる悲喜劇は、また次回以降に。

2002/02/06

第16回 手形その2

今回からは、実務的な手形用語から、手形というものを見てみることに。

まずは、「手形サイト」。一説には、これは関西の方の方言やていう話も聞いたことがあるんやけど(^^;;、管理人は、大阪の会社に勤めていたんで、東京とかではどんな風に呼んでるのか知らへんので、真偽の方は定かでないねんね。なので、とりあえず、手形用語やということとして使わせてもらいます。

これの意味は、「支払いまでの期日」の意味。前回、ちょろっと簡単に触れたけど、手形ていうんは、振りだした人が、いつに支払うかていう期日を決めるねんね。例えば、手形を振り出した日の1ヶ月後に支払う場合はその日付を、3ヶ月後に支払う場合はその日付を書いて、その日に支払うようにすることができんねん。で、もらった人は、支払日に銀行に手形を持っていって、お金に換えてもらうと(ちなみに、支払日に無事換金できることを、俗に「手形が落ちる」ていうねんね。一般的には、この「落ちる」をよく使うね)。

この期日のことをサイトていって、1ヶ月後なら30日サイト、3ヶ月後なら、90日サイトとかいう風にいうねんね。で、例えば契約書なんかで、支払方法は、毎月末締めの翌月20日に、90日サイトの手形で支払う、なんていう感じで結んでおくと。こんな風に、契約書なんかでも書くぐらい、自然な用語なんやね。

もし、この支払期日を書き込まずに手形を振り出すと一大事。その手形をもらった人は、いつでも、もらった人の好きな日付を書き込んで、銀行に持っていくことができるんやから。つまり、手形やのに小切手のように使えてしまうねんね。

なんでこれが一大事かていうと、通常、会社ていうのは、手形の支払期日に合わせて当座預金にお金を入れておくんで、当座預金の入ってへん日に銀行に支払いを求められてしまうと、当然当座預金から支払えへんので、「不渡り手形」になってしまうと。一度不渡り手形を出すと、信用不安が起こってしまうので、資金繰りがより厳しくなって、通常は2回目の不渡りを出して、前回書いたように倒産、ていう可能性が非常に大きくなってしまうねんね。

なので、万一支払日を書き忘れた手形を振り出してしまったら一大事。通常の取引先やったらまだしも、ややこしい方々の手に渡ると恐ろしい目にあうので、ご用心。

ところが一方、いわゆる街金ていう怖い金貸し屋さんは、これを逆手にとって、お金を貸した担保に、土地とかの不動産の他に、こういった支払日を空白にさせた手形を振り出させることがあるねんね。なんでかていうと、先にも書いたように、この手形を握っておけば、いつでも簡単にその会社を倒産させることができるから。特に、そんなややこしい金貸しにお金を借りるような会社は資金繰りが厳しいんやから、その効果は絶大。倒産するのが一番イヤなんやから、必死になってどんなに法外な金利でも、文句を言わずに返済すると。

まぁ、会社が潰れたら、手形なんて単なる紙切れなんやから、担保としては弱いんやけど、高金利で搾り取るには、かなり有効な方法なんで、お気を付けを。いうても、まぁ、お金がなくて、借りるしかなくて、他に選択肢がなければ、気をつけてもしゃあないんやけどね(笑)。ま、前にも書いてるように、こんなとこから借りたら、確実に借金が増えて、空っぽになるまで搾り取られるだけなんで、その時点で会社を倒産させることをお奨めします。

最後に、面白い手形用語の問題を。

1.台風手形 2.オリンピック手形 3.飛行機手形 ていうのは、それぞれどんな手形でしょうか?

解答は、次回に。では、今回はこんなところで。

2002/03/26

第17回 手形その3

実務的な手形用語の続きとして、今回は、まずは「裏書き」から。

手形ていうんは、もらってから、支払われる日まで保管しておかなければならへんていうことはなくて、実は、お金と同じように流通させることができんねんね。

つまり、50万の手形をもらったときに、自分も誰か他の人に50万の支払いがあるときは、お金の代わりにその手形で支払うこともできるんやね(もちろん、相手が現金でないとあかんていうたらあかんけど)。

で、そんな風に、誰かからもらった手形を他の人に支払いで使うとき、受取人が変わってくるんで、その手形の裏側に誰それに支払えと、自分の住所、名前と支払う相手(被裏書人ていうんやけど)を書かへんとあかんにゃけど(でないと、支払いがスムーズにおこなえへんから)、この、手形の裏側に、現在の手形所有者の住所氏名と、これから渡す人の名前を書くことを、手形の裏に書くことから、「裏書き」ていうねんね。

で、この裏書きの効果ていうんは、振出人から現在の手形の所有者までの流れが分かるていうだけやなくて、最終的に振出人がお金を用意できず手形の決済ができひんかった場合に、普通なら手形の不渡りでそれで終わりてなるところが、手形の最終的な持ち主は、今まで裏書きしてきた人たちに対して、不渡りになったから代わりに支払えて請求できることができるんやね。逆に言えば、裏書きによって、保証人≠ニしての責任も持たなあかんようになるねんね。

* 裏書きは連続してへんと銀行から支払ってもらえへんから(効力は無効にはならへんにゃけど、細かい話はややこしいんで省略)、それはもらうときにちゃんとチェックしとかなあかんしね。裏書きの連続ていうのは、受取人がAのとき、裏書人A、被裏書人B→裏書人B、被裏書人C→裏書人C、被裏書人D→・・・ていう風に、被裏書人と次の裏書人が同じ人になってるていうことね。

なので、振出人の信用があまりない場合には、保証人代わりに、誰か信用できる人の裏書きをさせてから受け取るなんて方法も一般的やし、会社振り出しの手形でも、例えばその会社の社長個人に裏書きさせてから受け取るなんていう方法も、よくおこなわれてたりするね。

というように、基本的に手形ていうのは、裏書きされていればいるほど、安全性は高くなるんやね。もっとも、これは確率論やから(一人より二人、二人より三人に請求できる方が安心だろう≠ニいう考え)、裏書きしている人間全員がお金を持ってへんかったら、意味がないんやけどね(笑)。実際、これを逆用して、裏書きで信用だけをつけさせて、結局騙すなんていうことをするんもいるし。ま、この辺りは、キツネとタヌキの化かし合いやねぇ。

例えば、これは詐欺ではないんやけど、この裏書きを利用した手形に「融通手形」ていうんがあるんやね。

手形ていうんは、本来は、取引関係があって、その取引によって生じた支払いをするために使うモノで、背景にはきちんとした取引≠トいうもんがあるはずなんやけど、融通手形ていうんは、そうやないねん。

例えば、商品を仕入れるためのお金が今、手元にないと。やから、手形で支払いたいんやけど、自分のトコの振り出した手形では信用があんまりないから、仕入先に受け取ってもらえへんかもしれへん。なので、知り合いの会社に、自分の会社を受取人にした手形を振り出してもらって、その手形に自分が裏書きして、商品の仕入先にその手形で支払うと。この場合やと、よその会社が振出人で、裏書きもあるから、仕入先に受け取ってもらいやすくなるねんね。

で、たいていの場合、自分宛に振り出してもらった先の会社も同じ様な悩みを抱えている仲間やから、自分宛に振り出してもらったお礼に、自分も、その会社宛に振りだしてあげると。場合によっては、3社とか4社ぐるみでさらに裏書きしあって、支払ってる場合もあるね。

こんな風に、なんの取引関係もない会社どうしが、手形上の金額だけでやりとりして、裏書きして振り出す手形のことを「融通手形」ていうねんね。元々、まともな形では手形を振り出せへん会社どうしの、形だけの℃闌`やから、当然不渡りの確率も高く、いくら裏書きがしてあっても、どの会社もお金がないんやから、いったん不渡りが起こったら、連鎖倒産で結局どこからもお金がとれへんようになってしまう。

一応、彼らとしては、詐欺のつもりはないんやけど、仕入先とかの取引先にとっては、紛らわしい行為で困りもの。なので、例え裏書きがしてあったり、よその会社が振り出し先であっても、油断せずに、裏書きに出てくる会社についても調査するぐらいの方が自衛上えーやろねぇ。

少なくとも、通常、取引先どうしにならへんような会社の裏書きがしてある場合は(例えば、製造メーカーどうしやとか)、営業さんレベルでチェックしておく方がえーやろね。で、怪しそうやったら、審査部門とかに相談すると。何事も、転ばぬ先の杖が大切やしね。

では、前回のクイズの解答を。

1.台風手形・・・これは、210日サイトの振出手形。台風の危険日を二百十日(にひゃくとおか)ていうことからつけられた名前。7ヶ月やから、かなり長いねぇ。

2.オリンピック手形・・・これは、4年サイト(笑)の手形。まさに、オリンピック。こうなると、長いを通り越してるねぇ。実際にあるのかどうかは不明なんやけど(^^;;、公共工事なんかの大がかりな土木工事なんかにはある・・・らしい。

3.飛行機手形・・・落ちることもある(支払われることもある)。

以上、お後がよろしいようで・・・。

2002/04/29

第18回 手形その4

非常に久しぶりの更新で失礼します(^^;;。

では、今回は手形のお話の最後で、手形割引のお話を。

割引といっても、「手形大売り出し、3割引セール」、てなものが開催されるわけやありません。

前にも書いてるように、手形ていうのは、期日が来るまではお金が入ってきぃひんもんなんやね。やけど、会社によっては、すぐに現金が必要な場合もある。

そんなとき、手元の手形を現金に交換できる制度ていうのが、この「手形割引」ていうもんなんやね。

手形はもらったけど、受け取りは何ヶ月も先。やけど、自分の手形の支払期限が来てたりとかで、どうしても今すぐに現金が欲しい。こんなときに、銀行とかの金融機関に持っていって、その手形の額面金額から一定の利率に応じた利息を割り引かれて(差し引かれて)、現金を受け取ることができんねん。これを、手形割引ていうねんね。

具体的に説明すると、例えば、年利10%での割引の場合、90日サイトで額面100万の手形やったとすると、大雑把な計算で、100万の年利が10万の、その3ヶ月分やから、2万5千円ほどが100万円から引かれた金額(97万5000円ほど)を、現金で受けてることができるんやね。

もちろん、割り引いてもらう際に、手形の裏書きはせーへんとあかんので、その手形が万一不渡りになった場合は、満額を金融機関に支払わなあかんにゃけどね。

まぁ、普通の商売をしていて、相手もまともな会社で、割り引いてもらう金融機関もまともなところなら、相手は現金でなく手形で支払えて喜び、自分も手形を現金にできて喜び、金融機関も利子を稼げて喜ぶと、みんなにとって便利な制度ではあるわけやね。

ところがまぁ、やっぱりまともでないトコからんでくると、色々と大変なわけで、手形の振出人や、受取人があまり信用がないと、銀行なんかの大手金融機関は割り引いてくれへん。だって、不渡りのリスクが高くなるし、裏書きさせても、その裏書人も支払えるかどうかわからへん。そんな相手にまとまった現金を渡すのは怖いわなぁ。

とすると、やっぱりそれ専用の手形割引屋さんや、何でもありの、いわゆる街金屋さんに持って行かな割り引いてもらえへん。当然、そういうトコは銀行よりも金利が高いから、もったいないわね。まぁ、とはいえ、そんなとこでも一服してしまう(ためらうとか、おじけづくとかいう感じの意味。ま、やーさん系の隠語やね。この場合は、ようは、さすがにこれは・・・と割り引いてもらえへんこと)手形があるのも事実なんやけど(笑)。そういう意味では、そんなトコでも割り引いてもらえるだけありがたいのかも。

ホンマ、手形に関しては、普通の借金なんかでの貸し借りの関係と違って、キツネとタヌキの化かし合いのトコがあるから、悪徳°燉Z業者もうかうかしてられへんからなぁ。

とりあえず、手形の世界は、プロとプロがしのぎを削って攻め合ってる場所なんで、迂闊に入り込んだりせーへんようにねぇ。もちろん、会社の経営とかしてたら(個人企業なんかでも)、イヤでも取り扱うものやし、通常はとっても便利なもんなんやけど、色々と魑魅魍魎の輩が徘徊してるのも事実やから、くれぐれも甘くみーひんように。まして、払えるあてのあるのかないのか解らんよーな手形を振り出すなんて場合は、会社を清算するかどーかを両天秤にかけるぐらいの決断がいると考えた方がえーと思うよ。借金がないか、少ない間なら、まだまだ人生やり直せると思うしね。

お金の重い話が続いたから、次回はお金からチト離れたお話でもしますね。

2002/08/03

第19回 セックスと法と裏ビデオテープ

では、今回は、がらっと雰囲気を変えて、性に関する法律を。タイトルは内容にあわせて適当にパクってアレンジしただけなんで、あまり気にしないでください(^^;;

まずは、刑法から。刑法では、性に関する犯罪について、猥褻(わいせつ)関連、強制猥褻(強姦含む)関連、淫行勧誘、重婚の、4つのパターンについて、規定されてるねんね。

堕胎(だたい:わかりやすい言葉でいうと、中絶)も、性関連やけど、ここでは省略。痴漢や売春、淫行については、別の法律で規定されてるんで、刑法には関係ないねんね。

昔の刑法には、姦通(かんつう)ていうて、結婚してる女の人が浮気した場合に適用される刑罰(男の浮気は関係なし)があったんやけど、男女差別やいうことで、戦後廃止されてん。まぁ、道徳的な観点から、男女とも浮気は罰するという形で残せば、男女差別ではなくなるんやけど、基本的には、道徳・倫理を法律で縛るのはいかがなものか?てな考え方もあって、廃止になったね。

外国では、例えば同性愛が犯罪になる国もあるんやけど(イスラム系の国。イランでは、死刑もあるとか)、日本では、全くの自由。逆に、性同一性障害などの理解も広まり、偏見もなくしていこうという動きがでてきてると。

で、元に戻って、刑法での性犯罪。まずは、猥褻関連から。

これは、猥褻なモノを見せたりすることに対する犯罪やね。例えば、女の人の前でコートをびろーんと広げて、ち○ち○を見せるとか、性器がはっきりと見えてる写真や映画(ようは、裏本とか裏ビデオ、ブルーフィルムとかいう奴)なんかを売ったり見せたりする場合ね。

個人的には、まぁ、コートを広げる変態おっさん(おっさんになってるのは、魚の偏見です( ̄m ̄))はともかく、いわゆる裏本とか、裏ビデオなんていうのは、需要と供給のバランスに基づく、市場原理の要求で、別に刑法で縛るようなもんではないと思うんやけどね。

で、次に強制猥褻。これは、先のと同じ猥褻ていう言葉が入ってるけど、意味合いが全然違って、これは絶対に許されへん、許すべきではない犯罪。

ようは、嫌がる相手を脅したり殴ったりして、むりやり猥褻な行為をするとこの犯罪になり、セックス(法律用語では姦淫(かんいん)≠トいう)までしたら、強姦ていうもっと重い罪になる。

これらの犯罪には、被害者の年齢による区別があって、例え暴行や脅迫がなくて、同意があっても、13歳未満(13歳は含まれない)の子供に対して猥褻な行為(性行為)をしたら、この犯罪になるねんね。これは、13歳未満の子供は精神年齢が未熟で、相手の言葉に誤魔化されて好きなようにされてしまう可能性があるから、子供たちをこういった悪い¢蜷lから守るために、規定されたんやね。

ちなみに、強制猥褻は、相手が男であろうが女であろうが、関係なく成立します。男が男に猥褻な行為をしようが、女が男に猥褻な行為をしようが、むりやりやったら、犯罪になります。

これに対して、強姦罪は、被害者が女に限ります。男が男に後ろからやられても、強姦にはならず、強制猥褻だけになります。じゃあ、女が男にむりやりお尻の方だけを犯されたらどうなるんや?てな疑問が浮かぶんやけど(浮かぶのは僕だけか?(−−?))、これについては、不明です。なにせ、刑法に書かれている姦淫ていう言葉の定義がイマイチ不明なんで。ただ、基本的には、刑法の条文は厳格に解釈されるので、アナルセックスはいわゆるセックスではない以上、強制猥褻罪にとどまると思われます。

後、上で、暴行や脅迫て書いてるけど、実はそれ以外でも、寝ている間とか薬を飲まして麻痺させてとか、とにかく相手の自由のない状態で猥褻な行為をしたら、それも同じ罪になるので気を付けましょう(正確には、準強制猥褻や準強姦ていう罪になるんやけど、罰の重さは準≠フないのと同じ)。

最近のニュースなんかでは、響きがきついからか、強制猥褻や強姦と言わずに、暴行≠竍婦女暴行≠ト言われてるんやけど、暴行罪ていうのは別にちゃんとあるんやから、あんまりいい呼称ではないと思うなぁ。逆に、警官がOLに暴行とかいう見出しがあって見たら、ホンマに殴ってただけやったり。

なんにしても、多くの被害者にとっては、一生消えることのないトラウマになったり、自殺までしてしまう人もいるんやから、個人的には、殺人にも匹敵する卑劣で凶悪な犯罪やと思う。正直、去勢(きょせい:性器を切り取ること)なんかの肉体罰を加えてもえーと思う。

淫行勧誘は、ようは、お姉ちゃんをスカウトしてきて、売春させる場合に適用される犯罪。売春防止法ていう法律が別にあるんで、個人的にはあんまり重要な法律ではないと思う。

重婚ていうのは、配偶者(はいぐうしゃ:ようは、結婚してる相手)がいるにもかかわらず、さらに結婚をした場合に適用される刑罰なんやけど、戸籍システムがきっちりしている今の日本では、おそらく実行することができない犯罪やと思う。

イスラムでは一夫多妻制を認めているんで、男性の場合は、合法的に重婚をすることが可能やね。まぁ、日本でも、別に愛人や不倫を罰する法律はないんやから、実質的な重婚状態は可能やけど。

では、今回はこんなところで。

2002/09/25

第20回  中絶

前回、簡単に述べたように、中絶というのは、本来は堕胎(だたい)ていう、刑法上の犯罪なんやね。

基本的に、胎児ていうのは、生まれてくるまではヒト≠ニしては認められてへんにゃけど(まぁ、刑法、民法とでも扱いはちゃうんやけど)、だからといって、親の好きなように、そのイノチ≠奪っていいわけではなくて、仮にもイノチ≠ニ呼ぶべきモノを奪う行為に対しては、刑法上の罰を与える必要がある。そのために、堕胎罪ていう刑罰があるんやね。

ところが、今の日本の実態を見てみると、中絶がほとんど野放しと言っていい状態になっている。これはなんでなんやろう?

それは、実は、刑法以外に、「母体保護法」ていう法律があるからなんやね。この母体保護法には、

「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの≠ノついては、医師によって、人工妊娠中絶をおこなうことができる」

ていう、主旨の条文がある。

身体的理由についてはさておき、次の経済的理由≠理由とすることにより、実質的には、親が望めば自由に胎児を中絶することができるねんね。しかも、男親が不明の場合には本人(=母親)だけの同意でできるので、実際には、母親の意思だけで(男親がわかってようがいまいが、わからないことにしてしまえば)、子供を中絶することが自分の勝手にできるようになってる。

ま、色々と事情はあるんやろうし、実際に命をかけて産むのは母親やから、この法律・制度にもきっと利点や意義があるんやろうけど、僕としては、命≠非常に軽く扱っているようで、なんか不快やなぁ。この辺りは、男(管理人は男)と女の性差による意識の差も大きいかもね。

なんにしても、よほど突発的な理由のない状態で、避妊もせずに妊娠して、中絶するなんていうのは、僕にはとても信じられへん行為やねぇ。

それと、この母体保護法で、中絶できるもう一つの理由に、強姦されて妊娠してしまった場合ていうのがあるねんね。こちらについては、倫理的にも感情的にも納得されやすいし、多くの国でも認められてるけど(イスラムやカトリックの強い国では、基本的に経済的理由なんかの中絶は認められていないはず。昔の知識なんで、正確ではないけど)、確か、アイルランドで、強姦されて妊娠した女の子の中絶が認められなかったことで大きな騒ぎになった記憶があるなぁ。

ちなみに、この母体保護法ていうものができる前には、「優生保護法」ていう法律で、日本では中絶が合法的に#Fめられてた。この法律は、その名のとおり、優生上≠フ見地から、中絶することが認められてたんやね(もっとも、さっき書いてた、経済的な理由による中絶もこの法律のときから認められていたけど)。

で、この優性上ていうのは、どういう意味かていうと、ようは、遺伝的に優秀な種を残し、不良な種は残さないていうこと。ぶっちゃけて言えば、障害者≠ヘ産まれてくるな、ていう主旨の法律。ま、ナチスの思想やね(ユダヤ人と障害者は排除せよ)。

んで、実はこの法律は、つい最近まで使用されてたんやけど(母体保護法に変わったのは、平成8年から)、さすがに国際的に非難を浴びて、改正されたという曰く付きのモノ。

ただまぁ、これはこれで非常に難しい問題で、倫理・道徳的な非難はともかく、実際に障害を持つことが確実にわかっている子供が産まれてくるというコトに対する、親の考え方について、安易に一方的に意見するていうのは、やっぱり、傲慢(ごうまん)なんやろなぁ。まぁ、ただ、少なくとも、国家が法律として規定するていうのは、おかしいことやと思う。

などと、最後は少し語ってみたけど、今回はこんなところで。とりあえず、できて困るなら、避妊は確実に。

2003/01/26