A LIFE OF SURPRISES
パディ・マクアルーンのガイドツアー

mylife



Swoon

(Kitchenware, 1984)
デビューアルバム


レコーディングするチャンスが一度きりしかないなら、変わったことばっかりやってやろうって考えてた。演奏もそんなに上手じゃないし、歌もひどいものだし、曲の構造もお粗末だけど、コード感はファンタスティックだよ。”I Never Play Basketball Now”はあまりいいタイトルではないけど、15歳の時、バスケットボールのルールがちんぷんかんぷんだった思い出を曲にしてみた。フェンシング・フォイルズ(Fencing Foils)やコーチング・カップルズ(Courting Couples)がどんなものかわからないよ。語感がいいというわけでもないし、”Don’t Sing”でやったグレアム・グリーンの小説『権力と栄光』の隠喩でもない。思いついた言葉をつないで一緒くたにして歌ってみたんだ。

Steve McQueen

(Kitchenware/Columbia, 1985)
古典的名作


ヒットを飛ばしている人間を非常に意識していた。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドやスクリッティ・ポリッティのようにヒット曲を出したかったし、牛乳配達夫が口笛を吹いて口ずさんでくれるような曲があればいいなって思ってた。このレコードにおける言葉の美点とギャグは気に入っている。“When Love Breaks Down”みたいにうまくいってない曲も何曲かあるけどね。あの曲を聴くといつもテンポが速いように感じるんだけど、歌詞の「absence makes the heart lose weight(会わずにいると愛情もなくなっていく)」って部分も神経質で気取った表現だし、考えすぎたんだな。僕の歌詞の中には普通の話し言葉がたくさんあるけど、一言か二言だけ意味深な言葉が入ってる。“Desire As”の「There are six things on my mind/You’re no longer one of them(考えてることが6つあるけど君はもうそこには入ってない)」みたいにね。これは絶望的な状況で書いた歌詞で、冷淡だけど、そういうことを言う人間に対する強い反発の気持ちを込めてる。“Moving River”の歌詞の中の「the schedule getting you down(スケジュールがきついのかい?)」って部分を、まるで今の僕の状況のことじゃないかって周りから言われるけど、この曲の歌詞の続きを言わせてもらってもいいかな?「You surely are a truly gifted kid. But(お前は確かに素晴らしい才能の持ち主だ。でも…)」<パディはここで突然おどけたカラスのような声になって>「you’re only as good as the last good thing you did (お前は最近ちっともその才能を発揮してない)」まさしくこの歌詞の中のボブだよね。ボブにまつわる曲も何曲か作ってあるんだ。

Andromeda Heights

(Kitchenware/Columbia, 1997)
星からの幻想的視点


凝りに凝ったモーリス・ラベルのレコードというビジョンを持っていた。ロックが持っている刺激とはかけ離れたものを作ろうとしていたんだ。The Whoのようなロック特有の刺激はこのレコードにはないし、そういう風に作ったつもりだけど、ロックミュージックに思われることもある。誰かが僕に『アンドロメダ・ハイツ』にはあまり皮肉っぽいところがないって言ってたけど、いわゆる現実世界ってものをあまり反映させないようにして、理想的で全体的にロマンテックな作品に仕上げた。自分は何者であるかとか、自分の意見なんかはこのレコードには入れてない。僕もみんなと同じようにとても意固地な人間だけど、自分のことよりも、音楽をより立派に、より人のためになるものにしたいって思いがあるんだ。歪んだ考え方だよね。でも良い歪み方であることを願うよ。夜に空を見上げると何が見える?たくさんの星。でも本当に見えるのは真っ暗闇だよね。作曲するときは一切を遮断するようにしてる。その方が対象となるものがよりはっきりと見えてくるからね。(黒の好きな)ルー・リードになるのもいいけど、みんなが彼と同じ世界観に染まる必要はないし、僕だって別の世界観で生きてるんだから。

I Trawl Megahertz

(EMI-Liberty, 2003)
聴覚のための映画


モーリス・ラベル以外で、影響を受けてるとすればギャビン・ブレイヤーズの『Jesus’ Blood Never failed Me Yet』で、重たい物語を理解してもらうために、ありのままの声を何度も繰り返しループした作品なんだ。ずっと聴いているのが辛いレコードだけど、映画で言えば『2001年宇宙の旅』、『バリー・リンドン』やテレンス・デイビィス監督作品みたいに、のめり込んで夢中になってしまう。『I Trawl Megahertz』はロックミュージックと言うより音のついたラジオドラマのような感じで作った。ガーディアン紙でレビューされなかったのが残念だったよ。あの新聞は胡散臭いものだったら何でも取り上げてくれるんだけどね。アルバムリリースの後、難聴が一番ひどかった時期に、同じ町に住んでるまったく知らない男が家にやって来て「なんだこのレコードは?まさに俺の頭の中みたいじゃないか!」って言われた。あの時はこの作品がソロアルバムで良かったって思ったよ。

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