大東京三十五區

49.「上野駅」
  新築された上野駅構内の一部であります。東京駅が、西日本のお客様を迎える玄関だとすれば、ここは東日本のお客様を迎える玄関であります。東北本線、常磐線、信越線、上越線などの起点に当たり、乗降客の輻輳することは、東京駅に劣らぬほどであります。明るい、近代的な構成美を持つ、モダンな建築様式で異彩を放っています。



50.「新宿駅」
  新宿駅は、震災後の新宿界隈の発展に応じて、つい二三年前に新築されたものですが、今日では既に狭隘を感じるようになり、大新宿駅改築のことが、計画されているそうであります。現在では新宿駅が一日に呑吐する乗降客の数は、東京駅よりも上野駅よりも大阪駅よりも断然多く、日本一の数字を示しています。



51.「地下鉄ビル」
  浅草吾妻橋畔にあります。日本最初の地下鉄道の起点に当たるところです。現在の線路はまだ一局部だけにしか過ぎませんが、数年後に、予定線の工事を終わった場合には、大東京の交通潮流に一大変化を招来するものと期待されています。



52.「馬場先門附近」
  宮城を巡る外濠の一部であります。三百年の石垣の古雅な感じと、馬場先門一帯の近代的な建築美とが、清らかなお濠の水を距てて相対しているのも、ちょっと面白い対照であります。中央の百貨店は美松百貨店で、その右手は日比谷公園につづいています。



53.「芝浦の岸壁」
  大東京港の計画は、大正十二年の大震災以来、急速に進められました。完備した東京港の必要が、大震災の苦い経験によって痛感されたためであります。現在の芝浦岸壁は、将来の東京港の中心をなすもので、計画通りに工事が進行すれば、昭和十六年には大東京港の完成を見るわけです。写真右手の島は、品川のお台場の一つであります。



54.「浅草仲見世」
  浅草観音の仁王門前から雷門址に至る約七十間の参詣道は、幅が約五間の敷石道で、その南側の店舗が謂ゆる仲見世であります。絵草紙、人形、紅梅焼、雷おこし、玩具その他、すべてお土産物を売る店ばかりであります。一軒の店の大きさは四畳半くらいで、その譲渡権は一萬圓の高値を呼んでいるほどの繁栄ぶりであります。





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