大東京三十五區

31.「三越と三井銀行」
  日本橋駿河町の三越は、日本のデパート王で、資本金三千萬圓。右手の白煉瓦の建物がそれです。左手の石造建築は、二千萬圓の巨費を投じて竣工した三井銀行です。手前の左の方に見えるのが日本銀行の一部、手前の右の方の建物は横浜正金銀行支店です。電柱と電線のない近代都市の一片鱗が、ここに窺われます。



32.「東京劇場」
  俗に東劇と申します。京橋区萬年橋の築地寄りに新築された近代的な大劇場であります。この附近に歌舞伎座と新橋演舞場があって、鼎立の形をなしています。歌舞伎座のように格式張らぬところに、一般民衆の親しみを持たれています。松竹合名社の直営劇場の一つです。



33.「歌舞伎座」
  東京劇場の屋上から見た歌舞伎座です。京橋木挽町にありますので、劇通の間では単に『木挽町』の名で呼ばれています。團菊在世当時から梨園の王座を占めた由緒ある大劇場で、明治二十二年に設立されたものですが、現在の建物は、大震災後、大正十四年に竣工しました。松竹合名社の経営です。



34.「銀座大通り」
  銀座四丁目角の三越屋上から新橋方面を望んだ、銀座大通りの一部です。東京一の繁華を以て鳴るところで、夜になれば、謂ゆる「銀ブラ」の紳士淑女達が、食後の散歩に殺到してきます。日本の尖端的な風俗の発祥地です。最近、この大通りに、街路樹として柳が植えられました。謂ゆる「銀座の柳」の情緒が、街頭に漂っています。



35.「銀座尾張町」
  銀座通りといふのは、北は京橋の袂から、南は新橋附近までの総称で、その中心をなすのが、銀座四丁目、即ち尾張町の交差点であります。右手の白い建物は、新装成った服部時計店で、左手に見えるのが、東京朝日新聞社です。



36.「丸ビル」
  東京駅前の正面に聳えている丸の内ビルディングは、東洋一の厖大な建物で、一階二階を商店にあて、三階以上八階までは全部貸事務所で、事務所の総数は三百六十一、ここに通勤する者凡そ四千五百人と○せられています。この附近に海上ビル、郵船ビル、その他の大ビルディングが櫛比していて、謂ゆる丸の内ビジネスセンターを形成しています。





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