大東京三十五區

19.「日比谷公園」
  明治三十六年、当時練兵場であったものを陸軍省から譲り受け、石黒忠悳氏を委員長とし、本多静六氏その他の設計によって、はじめて公園らしい公園の造られたのが、この日比谷公園であります。現在の東京市では、近代的な施設を持つ公園としては、ここが第一に数えられています。向こうに見える建物は東京市政会館と公会堂であります。



20.「清澄庭園」
  深川区にあります。岩崎家より寄贈された一萬五千坪ほどの名園で、大震災に焼き尽くされた老樹銘木は再び見ることはできませぬが、巧妙を極めた地割と名石の配置はそのままに、明治時代を代表する最も豪奢な大庭園の面影を偲ぶに余りあります。



21.「浅草伝法院の庭」
  浅草の伝法院は金龍山浅草寺の総本坊で、天台宗に属しています。ここの庭園は小堀遠州の設計したもので、妙を極めた林泉の布置は、造園術の模範とさえ称えられています。雑踏と喧噪の浅草に、垣一重の中にこの閑寂境を創り出した名人の神技は、賛嘆に値します。時間を限って一般に公開されています。



22.「上野動物園」
  藤堂高虎の邸跡で、明治十五年に農商務省博物局の附属動物園として設けられ、後に宮内省の所轄となり、更に大正十三年、皇太子殿下御成婚記念として東京市に下賜せられました。敷地約二萬坪、ここに飼育される世界の珍獣奇鳥は、五百種に及びます。



23.「東京市役所」
  世界屈指の大都会として誇る東京市の、総元締としては些か貧弱な建物ですが、明治二十年代の西洋館が、モダン東京の中心ともいうべき丸の内に、古色蒼然として聳え立っているのは、ちょっと微苦笑ものです。而も東京府庁との寄合世帯なのです。いづれ大東京都の実現と共に、新庁舎が堂々と生まれ変わる予定だそうであります。



24.「警視庁」
  櫻田門内から観た警視庁の正面です。最初の設計では屋上の塔をもっと高い圓屋根(ドーム)にする予定だったそうですが、櫻田門外の風光を害するものだとて、市民の猛烈な反対があったため、御覧の通り途中から切ってしまいました。帝都警備の重大責任を有する庁舎として、実に絶好の地位を占めております。





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