Cambridge Audio CXCを改造 / 2018.12.07


MIMESIS 36A+  CDトランスポートのMIMESIS 36A+を修理に出すと、部屋から音楽が消えて居心地が悪くなりました。 元箱に梱包して宅配便の営業所に預けてしばらくは、不具合が直って返ってくるのを想像して気持ちが明るいのに、4週間ほど経つと、故障が深刻で時間がかかっているのだろうかと不安が膨らみ心が曇るのです。
 そんなとき、バックアップ機があれば少しは気持ちが紛れそうです。 しかし、世俗色が強かったり栄養価の高い傾向の音が私は苦手だし、内面的な品の良さを感じさせて、適度に彩り豊かな音であって欲しいなどとこだわるものだから、専門店で試聴しても、自宅で使いこなしてみたいと直感する機械に久しく出会っていません。
 ところが、CDドライブメカのCDM9 PROは生産が終了した希少品だし、既に一度再生修理してもらっているので、無理な使い方は避けたいところ。 CDドライブメカが消耗部品であることを考えると、MIMESIS 36A+の延命を目的に、普段BGM的に音楽を鳴らすのに使うセカンド機を持つというアイデアは悪くないかもしれません。

 セカンド機として割り切るなら最上級の音である必要はないし、気持ちよく聴くことができればいいわけで、手頃なメーカー品を自分で改造するのが早道かもしれないと、荒っぽい方法を思いつきました。
 音質的な見劣りは、私が好む音色に整えるのに併せて目立たないよう繕えば、さほど気にならなくなるでしょう。 メーカーが開発の最終段階で音に自社のカラーをまとわせるのも、ユーザーが装置の使い方を工夫するのも、頭の中で鳴っている理想の音との距離を詰めるアプローチに違いはなく、改造だって同じ要領でこなせるはず。
 廉価な機種は、なまじ凝った筐体構造を与えられていないので、音を改変できる自由度が大きいし、良質な部品さえ載せていれば工夫次第で音質の向上だって期待できます。 高額機にどこまで近づけるか、軽い気持ちで腕試しを楽しむことにしました。

Cambridge Audio CXC - Inside view  素材の条件にぴったり合ったのが、Cambridge AudioのCXCというCDトランスポート。 CD再生に特化したドライブメカを自社製のサーボ基板と組み合わせ、同軸と光のSPDIF出力端子を備えたシンプルな製品です。
 MIMESIS 10C+につないで鳴らすと、ちゃんと英国っぽい音色がしたので、真面目な物作りを感じて好印象でした。
 筐体の鳴きを調整することで、面白いほど音色を変えることができます。 でも、鉄板が薄いので処置と音の変化の関係が変則的で、横長の樹脂成形した脚が底板の制振に貢献しているくらいだから、剛性不足は明白。 そのせいか、CXCの音は地味でもっさりしているし、ボーカルは大口、音楽は散漫に鳴って歌心など伝わってきません。

CXC Servo board - Improvement  修理から返ってきたMIMESIS 36A+の音を聴いて安心してから、リリーフの役目を終えたCXCの改造に着手しました。
 2週間掛けて、音質を損なっている箇所をひとつずつ、改修が過剰にならないように気をつけて補強していくと、徐々に楽器の分離が向上して低域が締まり、もわんとボケていた音像が明確に現れるようになりました。 ボーカルの表情はサーボ基板の固定強化で、質感は水晶振動子の近くに基板サポートを追加することで改善しています。
 音色だけならMIMESIS 36A+とほとんど同じにチューニングできたし、定位の確かさも迫るレベル。 初めて掛けるCDをリスニングポジション以外でラフに聴いたら、どちらで鳴らしているのか自分でも間違いそうです。 残念ながら、鳴った途端に部屋の空気が変わるようなクォリティーの凄味はないし、ボーカルに人肌の温もりを感じることもありませんが、BGMとしては上出来でしょう。

Cambridge Audio CXC - Improvement  筐体構造に手を入れただけで目論見を上回る成果が得られたので、予定していたCDドライブメカのリジッド化や電子部品の取り替えは見合わせました。 改造を再開するとしたら、この次MIMESIS 36A+を修理に出すなどして、CXCの音に食い足りなさを覚えたときでしょうか。
 言うまでもありませんが、そんな機会が訪れることを私は望んではいません。




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