CDラックの意外な功績 / 2018.11.04


CD Rack  壁一面にCDラックを作ってから数年が経っても、その前に立つとウキウキします。
 私は白っぽい内装が好きで、レコードを全部処分してからも北欧製の白いレコードラックを使っていたのですが、開口部と奥行きがCDには大きすぎて、CDを2段2列に並べるとうしろに隠れたアルバムを探すのに苦労しました。 レコードラック4本が満杯になって、机や床に平積みの山が増殖し始めると、出し入れがもっと鬱陶しくなります。 おまけに、積み上げたCDケースがでたらめな音の反射を生んで空間再現を損ない、言行不一致もいいところ。
 そんな問題を一挙に解決するとともに、アルバムが一望できて手早く取り出せる快適さは狙い通りでした。 予想外だったのは、どれを聴こうかと迷うプロセスも楽しくなったことで、この小さな喜びは擦り切れることなく今も続いています。

Phil Collins  音楽のカテゴリーとアーティストごとにアルバムを整頓すると、欠落しているアルバムが把握しやすいので、行き当たりばったりのCDの買い方に幾分合理性が備わったかもしれません。
 長い間品切れしているので、再発売の定期的な確認が疎かになっていたフィル・コリンズのソロアルバムは、歯抜け状態なのを目にして、どうせまた空振りだろうと思いながら調べると、2016年版リマスターがまさに出たところで、8枚全てをニック・デイヴィスによる出色のデジタル・リマスタリングで聴くことができて大喜びしたのですが、これなどCDラックに助けられた好例でしょう。

Real Group  リアル・グループでも救われています。 私は、最近のアルバムに新味が乏しくつまらなくなった印象を抱いていたのですが、年代順に整列したのがきっかけで、その理由が判明しました。
 彼らは、結成してからの35年間で20枚余のオリジナルアルバムを出してきましたが、国内盤の供給が始まったのはおそらく初来日した2005年から。 国内盤の販売者は、スウェーデンのジャズを中心に取り扱うレコードレーベルSpice of Lifeで、リアル・グループを推す私としては歓迎すべき展開でした。
 ところが、その頃から日本では新譜の輸入盤を見掛けなくなります。 拙宅でも、2007年のJulen Er Her(国内盤タイトルはReal Christmas)以降は国内盤が並んでおり、今更気が付くなんて間が抜けていますが、ちょっと不自然な偏り方でした。 背景事情は詮索しても仕方がないので置いておくとして、音楽が面白くなくなったこととの符合を直感したので、欧州盤を取り寄せて聴き較べたら、案の定、中身がドイツプレスのThe World For Christmasを除けば、国内盤は例外なくフォーカスが甘くて音そのものに魅力がないし、音楽も心に届きません。

Real Group - Håll Musiken Igång!  2008年にソプラノのマルガリータ・ヤルケウスが降板し、2011年にはバリトンのペーター・カールソンが続き、メンバーの個性が競演する華やかなスタイルからグループによる和声の造形へと楽曲の趣が徐々に変化していく時期が、たまたま国内盤の登場と重なっていたので、メンバーチェンジがつまらなくなった原因だと私は誤解していたのですね。 それにしても、2013年リリースのLIVE IN JAPANさえ、欧州盤の方が音がいいのは寂しい話しです。
 リアル・グループへの失望が解消し、国内盤がリリースされていないHåll Musiken Igång!も手に入れて、個人的にはハッピーエンドの追求譚でしたが、国内盤しか聴いたことのない人たちを想うと心が曇るのでした。




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