電源に振動対策 / 2018.05.12


GOLDMUND  いくらオーディオを大切にしていても、音楽を聴くときは存在が消えて欲しいもの。 それを適えるため、自分と反りが合いそうな製品を見つけ、現れて欲しい音楽の表情に近づけるための調整を飽くことなく続けています。 拙宅のGOLDMUNDは、今でこそ安心して聴ける音に仕上がっていますが、ちょっと濃すぎる華やかさを抑えて品よく鳴らすまでは一朝一夕でも、聴き手の気持ちを映すようになるには結構な時間がかかりました。

 オーディオの使いこなしの本質は、部屋と機器の配置方法や、小物の扱い方といったノウハウ、もしくは技量でしょう。 つまり経験と学習が欠かせず、それならルールに沿って試行した方が賢いだろうということで、自分なりの決めごとを作りました。
 1つ目は、一度に試すのは一項目にとどめ、良し悪しを見極めるまでは、次のアイデアに着手しない。
 2つ目は、試した事柄には可逆性があり、効果が再現できることを確かめる。
 3つ目は、試す前に結果を予測して、もし結果が予測と違っていたら、その理由を考える。

 更にもうひとつ、ルールと言うより、こだわりと言った方が合っている思いを付け加えていた時期がありました。 機器が使いこなせたと納得するまでは、電源とケーブルに手を出さない、という辛抱だったのですが、何の役に立つのかというと、調整が進化して機器の状態が研ぎ澄まされれば、システムに足りない音に気付きやすいだろうし、それを補うために調達したケーブルの個性も判断しやすく、結果として無駄が減るので見返りは大きいはず、という都合のいい読みに基づいた意気込みでした。
 もちろん、電源の改善に手を付けたら、その瞬間に禁制は破られるので、とっくに消滅しています。

WATTGATE  独りよがりなこだわりではありましたが、機器の調整をしっかり詰めたおかげで、電源タップ、埋込コンセント、分電盤、電源コードの順で手を入れていった何れでも、音の変化を明瞭に聞き分けることができたと思っています。
 ときには、アンプをグレードアップしたみたいに音が変貌して、驚いたこともありました。 例えば、MIMESIS SR-Monoに当てがった電源タップに花崗岩で質量を付加したときは、録音スタジオの床の固さが照明の反射を伴って彷彿したし、MIMESIS 36A+では、最終の詰めで電源タップを金メッキからロジウムメッキに変更したとき、ボーカル物の調整用CDで、自分の部屋に本当に人が居る気配を感じてゾクッとしたのです。

 でも真に価値があったのは、音が良くなった喜びもさることながら、何が理由で音が損なわれるか判ったことです。 音質を阻害する要因はひとつではありませんが、支配的なのは、導電金具の接触状態が微振動で変動する現象だと私は理解しました。 個性の異なるパーツを体系的に集めて、全ての組合せを試聴した評価を整理して浮かび上がった、これは仮説でしたが、その仮説に基づいて、更なる改善を目的に取り替えたパーツで、一度ならず意図した成果を得ているので、十分ではないにしても、因果関係についての検証は済ませたつもりです。

ダミープラグ  傍証となる事例を幾つか挙げておきましょう。
 電源プラグ単体を、空いた差込口に挿して、コンセント金具の鳴きをコントロールする方法を、私はダミープラグと呼んで、以前から音の調整に利用していましたが、このダミープラグを精密に選択すれば、分解能を向上させたり、音に乗る金属材料の固有音を消すことが可能です。 機器につながる電源コードの電源プラグでも同じ制振作用があり、コンセントの刃受けや導電板の振動を止めるほど、音の情報量が増える傾向があります。 コンセントが違えば、適合するダミープラグも別の物に変わるので、相性と言ってもいいでしょう。
 それより軽微ではありますが、接触する金具の表面硬度にも相性があって、硬さが同程度なら情報量が多くなります。 多層メッキなら最外層の硬度が関係し、真鍮や銅に較べて金や銀は柔らかく、ニッケルとロジウムは硬いというくらいの分類で比較すれば十分役に立ちます。
 電源用ケーブルで興味深いのは、電気的な伝送特性よりも、質量や硬さといった機械的要素が、実は音質を左右しているのではないかと感じたことで、更に言えば、両端に付けるプラグの振動の抑え具合が影響して、ケーブルの個性は変化します。
安全ブレーカー  分電盤は、オーディオルームから離れているからスピーカーの音響振動を受けないのに、板金の筐体を制振しても、安全ブレーカーにカーボンプレートを敷いても、顕著に音質が向上しました。 おそらく、メインブレーカーなら変流器とトリップコイルが、安全ブレーカーならバイメタルと遮断機構が構造的に鳴きやすく、電磁誘導で起きる振動の影響を受けているのだろうと推測しています。
 と、言う具合に、どれもこれも振動と絡んでいたのですね。




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