MIMESIS 36A+とデジタルケーブル / 2018.03.04


MIMESIS 36A+  CDを聴いていて突然音飛びした翌日から、1日に1回とはいえ同じ症状が続くと、いつまた起きるかと身構えてしまい、音楽に集中できなくなりました。 安田さんにCDトランスポートのMIMESIS 36A+を調べてもらうと、光学ユニットCDM9 PROの軸受が焼き付いており、支持部品の固定強化がその原因とのこと。 MIMESIS 36がMIMESIS 36A+になった頃にGOLDMUNDがCDM9 PROに施した小改造が、長期的には裏目に出たようです。
 修理から戻ってきたMIMESIS 36A+はスピンドルモーターを指で回すと明らかに軽く、TOC読み取り時間は2/3ほどに短くなっていました。

修理で外した部品  折角の機会なので、キャパシタ交換のメンテナンスと、提案してもらったピックアップ信号のカップリング定数を変更する改造もお願いしました。 事前に説明を受けていた通り音の性格は変わらず、低域の分解能が改善して空間のリアリティーが向上していました。 音楽的には、ひとつひとつの音に表情が感じられ、心に染みる浸透力が増しており、MIMESIS 36A+が新製品に生まれ変わったようで、故障したのが幸運に思えたほど。
 低域の改善で最も印象的だったのは、チェンバロの佇まいが彷彿することだと安田さんに伝えたら、自作のデジタルケーブルが合うかもしれないので試してみないか、ということになりました。 このケーブルは癖がなくて分解能が高く、安田オーディオラボでは修理の確認に使っているそうで、私のMIMESIS 36A+の修理でも使用していたと聞いたら、興味が湧かない方がおかしいでしょう。

XLOとYALのデジタルケーブル  また、D/AコンバーターMIMESIS 10C+の同軸入力回路にはパルストランスがあって、そのため電気的にはフローティングになるので、拙宅の場合は変則的だけれど、シールドの接地は送り出し側のMIMESIS 36A+でとった方が効果が確実で音が良いと教えてもらいました。 届いたデジタルケーブルYAL SPDIF Ver.2はそのように製作されていて、聴き較べると説明の通り。 それまで使ってきたXLO Signature type 4.1と比較すると、全帯域で情報量が充実しており、MIMESIS 36A+の改造による向上を越えているかもしれません。
 驚いたのは、表情を欠いた雑な音と諦めていた、ヘレン・レディーやミレイユ・マチューの編集物CDまでが生き返ったことでした。 今まで聞こえなかった音が引き出されて、十全でないにしても、声に潤いが加わり歌が生き生きしたのですね。 出所が怪しいマスターテープで製作された古いアーティストのCDの多くは、テープの保管が悪いためか音質が芳しくありません。 それが事実としても、CDを鳴らし切れていなかったという一面もまた事実で、機器の性能次第では音質を救済できる余地があることになり、これは楽しみなことです。
 考えてみると、XLOのデジタルケーブルはノーチラス山本さんが高く評価したから私にも打診があったものだし、今回は安田さんが私の嗜好を推測して紹介して下さったもので、何のことはない自分で探す苦労を私はしていません。 アクセサリー市場でもケーブルは特に製品数が多いので泥沼度が高く、満足できるモデルが見つからないので距離を置くことにした私には、どちらのアドバイスも大変有り難いものでした。

 ちなみに、私は仕事が忙しかった頃に、レコードとプレーヤーを処分して、オーディオはCDだけに絞りました。 趣味とは言えオーディオは所詮音楽を聴く道具だし、2系統の道具を維持するのに割く時間が足りない上に、新譜がCDでしか入手できなくなり始めていたので、思い切ったわけです。 その後、愛聴盤はCDで揃え直すつもりでしたが、売れ筋ではなくなった楽曲のCD再発は遅々として進まなかったので、後悔しなかったと言えば嘘になります。 でも、過去を懐かしむような聴き方をあまり私はしないので、レコードを捨てた痛手は小さく、ときどき残念に思うくらいでした。
 必然的にMIMESIS 36A+が音楽を聴く生命線となり、修理に出すと辛い日々を過ごさなければならないことを、しかし予想することはできなかったのですね。




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