ケーブルの選択               / 2000.02.26

MIMESIS SR-Preに付属している電源コードは癖がなく悪くありません。
でも、ショップから借りたLINNの別売品は、余計なメリハリを付けないので更に好ましく、
プリアンプとメインアンプの電源コードは全部LINNに交換しました。
両方ともきっと専業メーカーの汎用タイプで、3極プラグがモールドのシールドなしでした。
ある日、シールドタイプを試してみるのもいいよとのコメントが添えられて、
大差ない外見のちょっと太めでごわごわしたBELDENの電源コードが安田さんから送られてきました。

取り替えると、晴れた日の海辺でところどころ砂がきらきらしているような明るさのある音で、
何となくMARK LEVINSONのNo.26SLを思い出しました。
No.26SLの電源コードも確かこれと同じだったような気がします。

部品を集めて組んだオーデテオシステムに限りませんが、
その中のひとつを取り替えて変わる音の印象は、
沢山の部品の集合で醸成された音に表れる変化の違いを較べる、相対的なものでしかありません。
私はLINNを常用して音作りしていたのでBELDENにきらめきを感じましたが、
仮に普段使いがBELDENだったとしたら、LINNを地味に感じたかもしれないということです。

ともあれ大きな違いは感じられず、SR-Preの置き方に手を加える程度でいつもの音になりました。
その状態で、明るさほど目立たないものの、聴感上のSN比が少し良くなり情報量が増えていました。
音の情報量は製品の完成度に比例していて、製品それぞれに上限があります。
いわば性能を反映しているのですね。
だとすれば、私のシステムでは、BELDENの方が若干優れていると言えそうです。
ただ困ったことに、それがシールドの効果によるものなのか、
ケーブルの素材や構造の違いによるものなのかは判断できません。

電源コードとインターコネクトケーブルには、驚くほど音が変わる製品が販売されています。
アンプと肩を並べる値段が付けられたモデルがあることにも驚かされます。
次々と新しい製品が市場に登場してくるので、独立した分野を形成する勢いを感じます。
ただしアンプやスピーカーがないとケーブル類は機能できないので、主人公ではないでしょう。
足りない表現を補う薄化粧として使うのが本旨であると考えるなら、脇役ですね。
だから、アンプやスピーカーの使いこなしがまだ見通せていない頃から、
個性の強いケーブル類を常用に近い使い方をするのは望ましくないと思います。

私の状況がまさにこれで、
一式揃って間がないGOLDMUNDの扱い方をあれこれ探っている最中でした。
だからシステムの調整で反応を正確に把握することが必要で、
使うケーブルに求める条件は、個性がなくて情報量が豊かというもので、それに近いのがLINNでした。
ただし、LINNのケーブルと言えども完璧に透明ではありません。
たとえば情報量は多いですが満点ではないので、ロスが若干の色づけとして表れることはあるでしょう。
とは言えその色づけは有害な性質のものではなく、余計な主張をしない良質なケーブルです。
今まで使ってきて実質的に基準となっていたLINNをこのタイミングで替えたくないわけです。

というわけで、シールドの効果かどうかも定まらないまま、
シールド付き電源コードの評価は一旦切り上げることにしたのでありました。




前の記事へ  次の記事へ

トップページにもどる