オーディオと言葉
/ 2000.01.10
日本人に英語が苦手な人が多いのは何故でしょうか。
大脳生理学で面白い研究があります。
アメリカ留学の経験があって英語に堪能な人は、日本語を聞くときと英語を聞くとき、
脳皮質の活性化する場所が違っていたそうです。
英語のヒアリングが苦手な人は、日本語で反応する部位が活性化するだけで、
いわば脳が日本語を待ち構えているので、英語を言語として受けとめられないというのです。
後天的な才能が、脳の特定の部位の発達と関係しているというのが興味深いですね。
仮に音楽でも同じようなことが起きるとしたら、
良質な音楽に囲まれた環境で生活していると、音楽的な感受性が育つかもしれません。
この日本でなら、まず頼るべきはオーディオでしょうか。
私の周囲で、自宅のステレオ装置を素晴らしい音で鳴らしている人には、
ショップで展示機の音を聴くと、すぐに感想を言葉にできる人が多いように思います。
山本さんは音を抽象的な造形でとらえて色や触感で表現するのが得意だし、
木戸さんは情景や物語の場面に喩えて、気分や雰囲気で説明しようとする、と、人それぞれ。
語り口は違っていても、その人の音の趣味や思考方法が表れています。
もし相手に意図が伝わっていないと感じたら、
別の形容をしたり、手っ取り早く他の製品との比較で説明しようとしたり、
納得が得られるまで続くこともあります。
こうした言葉による表現は、オーディオにおけるこだわりを写しているというより、
音の抽象的な刺激を、別の具体的な感覚に置き換える能力を持っていると見るべきで、
おそらく後天的に獲得した才能なのだろうと思うのですね。
オーディオの調整では、沢山のパラメータの相関を読み解かなければなりません。
相関を考えながらより好ましい音が出る状態を見つけるのが、使いこなしです。
言語的に識別できるパラメータには限界があるので、
私の場合は、音から受ける感情や心理的距離で判断しています。
強いて言うなら、主要なパラメータはいつでも言葉にできるけれど、
そのほかはイメージに置き換えて把握したり記憶しているように思います。
山本さんと木戸さんも、このあたりは似たようなものではないでしょうか。
常日頃、そんなことに熱中している人達が集まるのだから、
ショップでの座談が盛り上がるのは当然かもしれません。
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