ジュリー・ロンドンとボリューム      / 1999.12.31

ジュリー・ロンドンの声は大人っぽくて洒脱で都会的。
優しく歌っても、沈んだ気持ちを歌っても、情感の深さにジンとします。

ステレオからそんな魅力が消えたのは、師走が近付く頃。
誤魔化しながら使ってきたプリアンプのガリオームが一気に悪化しました。
ツマミを回したときにジャリジャリと雑音が出るだけだったのですが、
声が無表情になって気持ちが伝わってこなくなったのです。
実はMIMESIS 2Aに採用されたボリュームと同じ部品で、
音が良いからいうことで、SR-Preのボリュームをこれに取り替えてもらっていたのですが、
耐久性に問題があったわけです。

そのままでは聴く気になれないし、安田さんからは代替品を見つけたと連絡をもらっていたので、
SR-Preを安田オーディオラボに送りました。
代替品のボリュームは22段階のステップ式で、連続可変ではありません。
迷う余地はなかったのですが、以前AGIのModel 511で、
左右偏差が大きいA&Bのボリュームを、RFエンタープライズでステップ式に替えてもらったら、
音と信頼性は申し分ないものの、精密な音量調整ができなくなって困ったことがありました。
同じ不便に悩まないかと心配が募ります。
とはいえ、ジュリー・ロンドンに口先で歌われても困ります。
100点満点でなくても、0点より遥かにましと割り切るしかありません。
深夜でも気兼ねせずに鳴らせるよう、減衰量の18dB積み増しも依頼しました。
結果は良好で、小音量でも音色の彩度が落ちず音はきめ細かで、
ジュリー・ロンドンの歌も表情豊かです。

安田さんはときどき依頼主の好みを推察して、修理以外にも手を入れてくれます。
このときは、DIVA用に合うよう既に下げてあったカットオフ周波数をもう少し下げたと聞きました。
楽器のサイズ感が感じ取りやすくなったのは、そのせいかもしれません。

修理のタイミングを利用して、私も小改造を依頼していました。
SR-Preのプリント基板はほぼ正方形の1枚物で、固定は四隅だけです。
これでは基板が振動しやすく、電子部品が振動すると音質が損なわれます。
叩けば判るのですが、基板中央に固定点を追加すれば望ましい効果が期待できたのですね。
変更が3つ重なったので効果の切り分けは難しいところですが、
音のクォリティーは確実に向上していました。

私は基本的にメーカー製品を改造するのは好きではありません。
向こう見ずな改造は、音の変化を楽しめても有害だと考えるからです。
でも、音を確認しながら意図した音に仕上げてくれる、
しかもGOLDMUNDの主宰と親交があって同社の製品に詳しい安田さんに依頼するのであれば、
メーカーによる高度なカスタマイズとかわるところがないのではないか。
音を聴いてそう思うのですね。




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