MIMESIS SR-Preと安田さん       / 1999.12.05


MIMESIS SR-Preのボリュームを交換してもらったら、濃い音になってしまいました。
リンダ・ロンシュタットのスタンダード3部作では都会的なセンスが薄まり、
ジュリー・ロンドンはなんとなく暑苦しく、ドリス・デイは俗っぽくきこえます。
あわてて安田オーディオラボに電話しました。

受話器の向こう側で短い沈黙のあと、
SR-Preの信号回路を接地している抵抗値を大きくしてみてはどうか、と短いアドバイス。
自宅にあった金属皮膜抵抗で試すと、確かに音の表情が変わりました。
大雑把に言うと、品位と熱量のバランスがトレードオフで変化するのです。
抵抗値を大きくすると、品性が向上するとともに色彩感が落ちます。
納得できる音が得られる抵抗値は、もとの2倍でした。
安田さんに報告して、送ってもらったオーディオ用の抵抗器に取り替えて一件落着となりました。

余談ですが、正規輸入品であれば、パワーアンプのMIMESIS SR-Monoにも同様の接地が施されています。
日本の配電システムの関係で、使い方に注意しないとGOLDMUNDは発振しやすいので、
日本仕様には、予防策として信号回路を接地する抵抗器が追加されているのですね。
ところが、これには軽微なデメリットもあって、
厳密にいうと、システムを構成する機器同士の信号電位が揃わなくなります。
当然、音には微妙に影響します。
屋内の接地工事が、日本で一般的な系統接地ではなく機能接地であれば、
GOLDMUND本国の配電システムと近似形になるので、理屈の上では接地用の抵抗がなくても良いはずで、
取り除けばオリジナルの状態に戻すことになって、GOLDMUND本来の音が聴けるのではないか、
と、実はこれも安田さんのアイデアでした。
だから、 私のSR-Monoには、正規輸入品に追加されている接地用の抵抗器がないのですね。

濃くなった音をもとに戻す問題が電話だけで解決したのは、
安田さんに拙宅の音を聴いてもらったことがあった、そのおかげでした。
過去に、MARK LEVINSONのNo.26SLとNo.23.5LのシステムにMIMESIS 10C+をつないだとき、
2週間ほどで10C+が故障してしまいました。
このとき、ショップが出張修理の応援を要請してくれたのが安田さんで、
レコードでDIVAの音を聴いてもらっていたのですね。
私のオーディオルームが機能接地なのを安田さんが知っていたのも、この機会があったからでした。
ちなみに10C+が故障したのは、MARK LEVINSONのデュアルモノーラル構成が原因でした。
No.26SLを単体で調べると、左右チャネルに僅かな電位のずれが存在していて、
この関係で10C+の高周波発振が誘発され、熱暴走でモジュールが壊れたのだろうと教えてもらいました。
GOLDMUNDが使い難いというのは本当だったようです。

この事件には続きがあって、
MARK LEVINSONとGOLDMUNDのどちらを残すのか、私は選択を迫られました。
10C+を修理してもらっても、No.26SLにつないだら再び壊れてしまうでしょう。
だから、どちらかを入れ替える必要があったのです。
異なるメーカー同士の接続リスクから解放されるには、GOLDMUNDを諦めるべきでしたが、
端正な10C+の世界観は捨てがたい。
どちらも音の性格を考えて揃えた機器でしたから、代わりが幾つもあるわけがありません。
ショップから貸出機を借りて何度も自宅での試聴を繰り返すのに結構な時間を費やして、
結局、GOLDMUNDのSRシリーズに入れ替えることになるのでありました。

そんな災難の締めくくりが、SR-Preの接地抵抗の変更だったのですね。




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