ヨーロッパの気候              / 1999.12.03


北欧で仕事をしていたとき、
早朝のジョギングで朝靄の森に入ると、ハーブの爽やかな香りが爽やかでした。
夏の夕刻に石畳の歩道を散策していると、まだ明るいのに空気がひんやりしてきて、
空気の澄明度が音を立てて増していくような気がしました。
そんな日常を過ごしていると、五感が研ぎ澄まされる感覚を覚えるのでした。
そうした気候の土地に暮らしながら開発されたオーディオ機器なら、
表現のきめ細かさに清涼感が伴うのも当然だろうな、と納得していました。
それに較べると高温多湿の日本はいかにも不利な環境で、
自宅に置いてきた機器のことが気になるのでした。

私が使うGOLDMUNDのMIMESIS SR-PreやMIMESIS 10C+に電源スイッチはありません。
取扱説明書には、常時通電しておけと書いてあります。
以前使っていたAGI #511とMark Levinson No.26SLにも電源スイッチはなかったし、
通電しておいた方が回路の動作が安定して良いのも知っています。
でも今年の夏は、平日の日中には電源プラグを抜いて、ささやかな対策を試みてみました。
昼間は居室が38℃を越えるので、何かしら手を打ってみたかったのです。
ところがプリアンプは冷えると音が悪くなるので、帰宅しても聴く気が起きず、
実は失ったものの方が大きかったのですね。

電解コンデンサは熱に弱く、暑いほど静電容量が速く目減りしていきます。
一般的に、製品は目標寿命まで性能が維持できるよう、余裕を持たせて設計しますが、
静電容量が減って音質に良いはずはありません。
少なくとも、GOLDMUNDが室温38℃を想定しているとは考えにくい。
そこで、日本の夏がどれくらい不利になるものか、いい加減な計算で目安を求めてみました。
製品寿命を静電容量の20%低下時点とする考え方で設計されていた場合、ほぼ7年。
一方、私が夏の平日に電源プラグを抜くことにしたら、寿命を1年延ばすことができます。
日本と北欧との気温差による寿命の違いも、ほぼ同じくらいでした。
努力してかせげる違いが1年で、通電後に音が回復するのを待つ苛々も考え合わせると微妙です。
通電しっぱなしで使い、定期的にオーバーホールする方が幸せでいられそうです。

不安な夏は終わり、秋も駆け足で過ぎて冬はもうすぐ。
電源プラグは挿したままで音は絶好調です。




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